表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/64

54食目 異世界一マズい毒草キャンディ



「ヘンリエールさん、これどうぞ~」



「ありがとうございます……これなんですか?」



「海外出張のお土産です~」



 こんにちは、ヘンリエールです。

わたしが働いている商業ギルド『カゼマチ食品』のイザヨイ支部から獣人族の国『サファリット』支部へ出張に行っていたギルド職員さんが帰ってきて、お土産を貰っちゃいました。



 〝ハイエナ製菓/キャリオンキャンディ〟



「なんですか? これ」



 パッケージに傷んだような色の肉片のイラストが描かれている。

え、これキャンディって書いてあるけど……



「これ、世界で一番不味いって言われてるキャンディらしいです~」



「なんでそんなの買ってきたんですか」



「面白そうだったので~」



 まあお土産ならそうよね。別に自分が食べる訳じゃないものね。



「おお、アタシこれ知ってるぞ。なんでも、腐った肉みたいな味がするらしいじゃないか」



「えっ!? く、腐ったお肉味のキャンディなんですか……?」



 裏面の原材料を確認してみると、肉を使っている感じはなさそうだ。

あくまでそういうフレーバーということだろうか。



「……ん? この主原料のダーティラフレシアって聞いたことあるわね」



「ダーティラフレシアならタプナードにも生えてただろ。ほら、あの紫色のでっかい花だよ」



「ん~……? あっあの沼地とかに咲いてる臭いやつ!」



 ダーティラフレシア、別名『大腐乱花』。

花が咲くと沼の周囲に腐った肉のようなにおいが漂う毒草だ。

そういえばわたしやパーシアス先輩の故郷であるエルフ族の国『タプナード』にも自生してたな。

実際の毒成分は根っこにあるらしく、花の匂いは無関係らしいが、まさかその成分を使ったお菓子があるなんて……



「ヘンリー、食べてみなよ」



「パーシー先輩が食べるならわたしも食べます」



「アタシはまあ、あとで頂くよ」



「じゃあわたしもそうします」



「先輩の言うことが聞けないのかい」



「はいパワハラ! それはパワハラです~!」



 わたしはとにかく駄々をこねた。

こんなもの、絶対不味いに決まってるんだから絶対食べたくないわ。



「それでは公平にじゃんけんで決めましょう~」



「「…………」」



 自分はお土産配るだけだから随分気楽なものね。



「まあ、それなら受けて立とうじゃないか」



「わたしは受けませんが」



「ヘンリー、人様の善意を無下にしちゃいけないよ」



「そうですよ~。もしかしたらすっごい美味しくて、ウチの商品の原材料にも使えるかもしれないじゃないですか~」



「使える訳ないじゃないですか……」



 うう、断れない雰囲気……まあいいわ、勝率は五分五分、ここで勝てば地獄に落ちるのはパーシアス先輩だもの。



「それじゃあ、いきますよ~。最初はグー、ジャンケン」



「「ポンッ!」」



 ―― ――



「う、うう……」



「さあヘンリー、グイッといっちゃいな」



「お酒じゃないんですから……」



「ドキドキ、ワクワク~」



「ふう……それじゃあいきますよ。森羅万象の恵みに感謝を……あむ」



 …………。



「…………」



「ヘンリー?」



「ヘンリエールさん?」





 …………。





 ……………………。





「ウ〝オ〝エ〝ェ〝ッ〝ッ〝!!」





 【ハイエナ製菓/キャリオンキャンディ】



 ・お店:知らん。



 ・値段:知らん。



 ・料理:これは食い物じゃない。ただの腐った肉。はやく販売停止しろ。



 ヘンリエール的総合評価:-444点。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ