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39食目 ハーピィのプリンはママの味



「ヘンリおねーちゃん、だっこしてー」



「ヘンリおねーちゃん、ゲームしよー」



「わ、わ、わ……!」



「こらアトリ、イスカ。ヘンリエールさん困ってるでしょ」



「だ、大丈夫よ。ちょっとこう、やっぱヒバリちゃんの妹なんだなーって思っただけで」



 こんにちは、ヘンリエールです。

実は今、ハーピィ族のヒバリちゃんのお家に来ています。



 ついさっき街で買い物中のヒバリちゃんに偶然会って、一緒にいた双子の妹ちゃんに懐かれたわたしはそのままヒバリちゃんのお家にお邪魔することに。

ヒバリちゃんが手作りのお菓子を作ってくれるということで、その間妹ちゃん達といっしょに遊んでいます。



「実は最近、ヘンリエールさんのギルドの商品買ってるんですよ」



「エルフードを? それはまた、お買い上げありがとうございますって感じだけど」



 わたしが働いている商業ギルド『カゼマチ食品』の主力製品であるエルフード。

野菜や果物、木の実、穀物なんかを混ぜて焼き上げた菜食向きの携帯食料です。



「エルフードを食べ始めてから、お客さまに『タマゴ、美味しくなったね』って言われるんです……」



「そ、そう。それはよかったわ」



 ヒバリちゃんは『エッグランド・はぴはぴ☆ハーピィ』という、ハーピィ族の産みたてタマゴが食べられるちょっと大人なお店で働いている。

親はいないらしく、双子の妹ちゃん達と3人で暮らす彼女は、立派な一家の大黒柱なのだ。



「というわけで、今日は美味しくなったワタシのタマゴをヘンリエールさんに食べてもらいますね……」



「そう、美味しくなったタマゴを……へっ?」



「アトリ、イスカ。おねーちゃん達ちょっとおトイレに行ってくるね」



「どうしてふたりでいくのー?」



「つれしょんってやつー?」



「そんな感じよ」



「あっいやちょっと待っ心の準備が」



 ……。



 …………。



「ふう。ヘンリエールさん、ご協力ありがとうございます……ね」



「い、いえ。もう3回目だもの、慣れたものよ」



 ヒバリちゃんからちょっとしたサービス(?)を受けたりもしつつ、妹ちゃんたちと遊んで料理が出来るのをしばらく待つ。



「はーい、出来ましたよー」



「「わーい」」



 ヒバリちゃんが持ってきたのは、金属のカップに入ったクリーム色のお菓子。

表面が少し焦げて、キャラメルのような良い香りが漂ってくる。



「これってもしかして、焼きプリン?」



「そうです。ヒバリの産みたてタマゴ焼きプリン、どうぞ召し上がってください……」



「は、はい」



 これは……お店のお客さんだったら喉から手が出るほど食べたいんじゃないだろうか。



「そ、それじゃあいただくわね。森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……はむ」



 …………。



「ヘンリおねーちゃんどうー?」



「ヒバリおねーちゃんのプリン、おいしー?」



「うん……とっても美味しいわ」



 なんだろう、とっても風味が良くて舌触りも滑らかだ。

濃厚なのに卵特有のミルク臭さみたいなものも感じなくて、焦がしたキャラメルが良いアクセントで……



「うふふ、喜んでもらえてよかったです……ヘンリエールさんの中に、焼けただれたワタシの卵液が……」



「やめなさいその言い方」



 ―― ――



「ヒバリちゃん、今日はその、ごちそうさま」



「いえいえ、こちらこそ妹たちの相手をしてくれてありがとうございました」



「ヘンリおねーちゃん、またねー」



「イスカたちがタマゴ産んだら、おねーちゃんに食べさせてあげる」



「ふふ、楽しみにしてるわね」





 …………。





 ……………………。





 いや『楽しみにしてるわね』じゃねえんだわ。変態かわたしは。





 【ヒバリちゃんの産みたてタマゴで作った焼きプリン】



 ・お店:双子の妹ちゃん達が可愛かった。



 ・値段:タダ。お店だったら5000エルは取られてる。



 ・料理:濃厚なタマゴと焦がしキャラメルが良い感じで甘くて美味しい。



 ヘンリエール的総合評価:88点。


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