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30食目 マンドラゴラの浅漬けはうるさいのか?



「漬物屋さん、漬物屋さん……」



 こんにちは、ヘンリエールです。

今日はとあるお店を探しに獣人街までやってきました。



 この前、妖狐族のイズミさんと行ったお寿司屋さんで『ガリ』という生姜の酢漬けを食べたらとても美味しくて、獣人街にある漬物屋さんから卸していると教えてもらったので、買いに来ちゃいました。



「あった! ここだ」



 〝漬物屋・ねこじゃらし〟



「し、渋かわいい……」



 墨で書いたような趣のある店看板に、肉球マークの墨の跡が付いている。

ここは猫又族の店主さんが営業する漬物の専門店らしい。



「なんか、少し見覚えあるような……あ、佃煮のお店だ」



 この獣人街には『ねこのて』という店名の佃煮専門店もあって、前にそこでイナゴの佃煮を……



「いけないいけない、封印した記憶がよみがえりそうだったわ」



 とにかく、お店に入ってみよう。



「すいませーん……」



「いらっしゃいませ~!」



「あらいらっしゃい、ゆっくり見ていってねえ」



 お店の中には三角巾を付けた若い猫叉族の女の子と、お年を召した猫叉族の女性が何か太い木の根のようなものを洗っていた。



「ア〝ア〝……ア〝アアア……」



「……そ、それって」



「あっ今ちょうど『マンドラゴラのぬか漬け』を仕込んでるんです~!」



「ちょっとうるさくしてて、ごめんなさいねえ」



「い、いえ……」



 マンドラゴラ。

植物系の魔物の一種で、基本的に自分から動いたりはしないので危険は少ないのだけれど、引っこ抜こうとすると大音量かつとても嫌な声で鳴く。

しかもその音を聴いた肉食系の魔物が、人がいることを察知して集まってきてしまうので採取するのは結構命がけだ。



「根っこが食べられるとは聞いたことがあるけど、漬物にするんですね」



「時間をかけてアクを抜いて味を染み込ませるんです~! 静かで美味しいですよ!」



「静かで美味しい……?」



 あまり食べ物の表現で静かとか使わない気がするけど……うるさくて不味いとかあるのかしら。



「ごめんなさいねえお嬢さん。マンドラゴラのぬか漬けは売り切れちゃって、今仕込んでるのが出来上がらないと無いのよねえ」



「い、いえ、わたしはガリを買いに来ただけで……」



「あ! ちょっとうるさいけど浅漬けなら売ってますよ! 試食します~?」



「えっ浅漬け? いやわたしは」



 女の子が厳重な蓋がしてある謎の壺を開けて、中からスライスされたたくあんのようなものを取り出す。



「ア、アア……」



「こちらマンドラゴラの浅漬けです! 食べてから30分くらいはお腹から声がしますよ!」



「ごはんに合うから、よかったら食べてみてねえ」



「ええ……」



 半月の形に切られたマンドラゴラの浅漬けから唸り声のようなものが聞こえる。



「わ、わたし、マンドラゴラはよくある乾燥させたお茶のやつも飲んだことなくて……」



「それじゃあ初マンドラゴラですね! はいあ~ん!」



「えっいやだから食べたくなムグッ!?」



 …………。



「あ、これ結構おいし」



「ア、アア……」



「イヤアアアアアアア!?」



 それからしばらく、わたしのお腹からはマンドラゴラの苦しそうな呻き声が聞こえた。



 ―― ――



「それじゃあ生姜の甘酢漬けが1袋で、500エルですね~」



「はい」



「ア、アア……」



「ちょうどお預かりしま~す。あ、マンドラゴラの浅漬けはいりませんか~? 今ならハーフサイズが1500エルのところ、割引して1200エルにしちゃいますよ!」



「結構です」



「アア……」





 …………。





 ……………………。





 うるさいし気色悪いわ。





 【漬物屋・ねこじゃらし/マンドラゴラの浅漬け】



 ・お店:昔ながらって感じ。試食できて良い。



 ・値段:ちょっと高い。



 ・料理:ガリ美味い。マンドラゴラは意外と美味いけどうるさい。



 ヘンリエール的総合評価:61点。



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