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12 のんびりした時間を

 アマンダの策略により、全ては丸く収まった。

 皇家は第二王子ベルゼリオの皇位継承権を取り上げた上で、フォティニア伯爵家に厳重注意をして、ローズマリー侯爵家はお咎め無しという判断になった。もちろん、俺や他のみんなの反逆もなかったことになったわけだ。

 一方、ローズマリー侯爵騎士団の騎士団長がフォティニア伯爵に指示され起こしたクーデターは、サージェスが活躍して無事に鎮圧したらしい。裏切っていた騎士団長は空席となり、今はまだ人選が進んでいないのだとか。


 一連の事件を通して、俺とアマンダの関係は公になってしまった。まぁバレてしまったものは仕方ないので、俺は残り僅かとなった学園生活をアマンダと共に楽しむことにしたわけだ。


 学園の食堂。

 隣同士に座った俺たちは、一緒に食事をとる。


「……で。アマンダはなんでまだ鼻触ってんの?」

「あ……なんかもう癖になっちゃってて。というか、グレモンドも胸のあたりをポンポンしてるけど」

「あ。ホントだ」


 そんな感じで、周囲のみんなに妙に生暖かい視線を向けられつつ、俺はアマンダとのんびりした時間を過ごしたわけである。


 意外だったのは、ベルゼリオとジュリアが学園卒業後にそのまま入籍したことだった。なんだか皇帝陛下も色々と思うところがあったようで、孤島の領地にある小さな村落を二人に与えたのだという。

 これからは開拓なんかをしつつ、島でのんびりと暮らすらしい。二人ともなんだか穏やかな顔をしていたと、風の噂で聞いた。


  ◆   ◆   ◆


 で、卒業してローズマリー侯爵領に戻ったら、俺はなぜか騎士団長に抜擢されてしまったってわけ。


 急遽行われた騎士団長任命式、勲章授与式、断髪式、結婚式なんかの諸々を終えると、俺はさっそく侯爵やサージェスに呼び出されて今後の諸々を相談することになった。

 基本的な組織運営はこれまで通りに各部隊長にお願いするだけなんだけど、そこに追加して、学園でアマンダの配下になった者たちをどうするか考える必要があったのだ。各方面で才能のある者が大挙して忠誠を誓ってきたので、適切な部署に割り振ったり、新しい部署を作ったりと初日から大忙しになってしまった。


 仕事を終えてから、閉店ギリギリの花屋に寄って、アマンダに贈る花束を購入したわけなんだけど。店員のおばちゃんが、それはもう大興奮でね。


「あら、グレモンド様じゃない! やだー! え、アマンダ様に贈る花束ですか、任せてください! 気合い入れて素敵な花を見繕いますからね。これは大変だぁ……で、なんの花を中心にします? 色は? 花言葉はどんなものをお探しで?」


 そうして、おばちゃん力作の花束を抱えて帰宅する。

 領都にある貴族街の一画。俺とアマンダの新居となる屋敷は、一応それなりの広さがあった。曲がりなりにも騎士団長が住むとなれば、あまり小さな家に住んで、他領に隙を与えるわけにはいかないからね。


「おかえり、グレモンド。え……花束?」

「うん。これまでは、君に婚約者がいる状況で花を贈るわけにはいかなかったけど。今日からは夫婦になったわけで。俺は言葉足らずな時も多いから……気持ちを伝えるなら、こういう方がいいと思って」


 結婚して、これからは昔と同じような生活を――なんて俺は想像していたんだけど、どうやら想定が甘かったらしい。

 昼間に民衆の前であまりにも激しすぎるファーストキスを敢行した主犯は、実はそれでもめちゃくちゃ我慢していたらしく、その後の新婚初夜は三日三晩続くことになった。初夜ってなんだっけ。


「ところで、アマンダ。君と結婚できたのは願ってもないことだし、それを許してくれた侯爵には本当に感謝してるけど……なんで騎士団長なの?」


 色々と大変なことになっているベッドの中。俺がそんな風に問いかけると、アマンダは小さく笑う。


「だって……侯爵令嬢を嫁に出すんなら、それなりの格ってものが必要になるんだもの。幸いにしてグレモンドには人気も実績もあったから」


 うーん。まぁ、侯爵家の窮地を救ったと言われれば、それはそうなんだけどさぁ。

 結局のところ、俺はただアマンダに幸せになってもらいたかったってだけだからね。騎士団長の器かと言われると、ちょっと首を傾げざるを得ないわけで。


「実績はともかく、俺に人気なんてあるの?」

「あら。グレモンドはローズマリー侯爵領においてすごく人気があるのよ。ほら、貴方と私のラブラブな半生が演劇になるくらいには――」

「待って。え。俺それ全く知らないんだけど。演劇なんてやってんの。え。アマンダ、なんで視線を逸らしてんの。どういうこと」


 そんなわけで、なんだかんだと色々ありながら。


 俺はローズマリー侯爵騎士団の団長という立場になり、よく悪巧みをする可愛い妻と楽しく暮らしながら、妙に生暖かい視線を向けてくる人々に囲まれて、忙しい毎日を送ることになったのだった。


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