表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

01 どうしてこうなったんだろう

#騎士団長ヒーロー企画 参加作品

6/22 〜 6/29 短期集中連載(全12話)の予定です

「グレモンド・ジンジャーを、ローズマリー侯爵騎士団の団長に任命する」


 ローズマリー侯爵がそう宣言すると、早朝から領城前庭に集まっていた民衆は大歓声を上げ、ニッコニコの顔で俺に拍手を送ってくれた。うーん。正直に言ってしまっていいかな。


――めちゃくちゃ荷が重い!


 侯爵は正気なのかな。いや、あのね。俺はまだ十八歳なんだよ。帝都第一学園を卒業したばかりのヒヨッ子ちゃんなわけ。

 しかもローズマリー侯爵家は、オドレム帝国北部の盟主となる大貴族なんだ。その騎士団って言えば、侯爵領の運営を支えるとても重要な役割を担っていることになる。少なくとも、腕っぷしだけの若者に務まる仕事じゃないと思うんだよね。


 冷静に、ちょっと考えてみてほしいんだ。

 ローズマリー侯爵騎士団はいくつもの部隊に分かれている。代表的なもので言えば、領城警備や要人警護を担う近衛騎士隊。武官騎士で構成される花形の第一騎士隊。裏方業務を行う文官騎士たちの第二騎士隊。それと、錬金薬や魔装具などの研究開発を行う第三騎士隊。他にも参謀本部、資材管理部、工兵隊などは独立した部隊となっていて、あと下部組織には領兵や事務職員なんかの民間人も大勢いるわけだけど。


――その全てを、十八歳の俺が取りまとめるの?


「貴殿は帝都第一学園の騎士科をその圧倒的な成績をもって首席で卒業し、また悪辣な企みから命をかけて我が娘アマンダを守り抜いてくれた。その能力や忠誠心は、もはや疑いようがない」


 いやいや、騎士団長に大事なものって、もっと他にあるでしょ。人脈とか経験とか知識とか実績とか人望とかさぁ。要は花形の第一騎士隊長なんかが、年を重ねて一線を退いた後とかに就任するもんだよ。この騎士団長って役職は。


 まー、うん。侯爵側の事情は分かるよ。前騎士団長が更迭された経緯は俺もよく知っている。だから、後任には忠誠心の高い駒を置きたかったんでしょ。

 俺はアマンダの幼馴染だし、次期侯爵のサージェスとも友達だし、裏切る可能性は全くないって自分でも思ってるけれども。


 だからって、なにも十八歳のピヨピヨを引っ張ってこなくてもいいと思うんだよ、俺は。


「ローズマリー侯爵領を窮地から救った功績をもって、貴殿にはローズマリー侯爵家より名誉騎士勲章とロマの名を授けよう。これからはグレモンド・ロマ・ジンジャーを名乗るがよい」

「はっ。ありがたく」

「そしてお主には、我が娘アマンダを妻として与えよう。公私ともども、ローズマリー侯爵家の発展のため励んでくれるよう期待しておる」


 侯爵の言葉に、民衆が大きく盛り上がる。

 うん、みんな好きだよね。貴族の結婚話とかさ。


 侯爵の後ろにいるアマンダは、どこぞの貴族令嬢のようにお淑やかな仮面を何重にも被り、ニコニコと静かに微笑んでいる。

 いや、君が貴族令嬢であること自体は間違いないんだけどね。どちらかというと、ニコニコよりニヤニヤしてる方が似合うと思うんだよ。いっつもなんか企んでるじゃんか。


「それではこれより、騎士団長グレモンド・ロマ・ジンジャーの断髪式を執り行う」


 順番! おかしいんだよ、順番が。


 あのね、断髪式は騎士見習いが正式に騎士に格上げされる時にやるイベントなんだよ。

 ほら、見習いは基本的に髪は短髪にするんだけど、左のもみあげだけは細い三つ編みにして伸ばす決まりになっていてね。で、正式な騎士に昇格する時に、それをスパッと切り落とすわけ。


 それが俺の場合は、学園の騎士科を卒業して、なぜかすぐに騎士団長になって、その後に断髪式をやるという。うん、順番がめちゃくちゃだ。


「断髪を行うのは我が息子サージェスだ。皆も知っての通り、次期侯爵サージェスと騎士団長グレモンドは非常に親密な間柄であり――」


 なんで次期侯爵が直々に出てくんの?

 サージェスお前、忙しいとか言ってなかった?


 そんなこんなで。

 俺はこの日、騎士団長になり、見習い騎士を卒業し、名誉騎士勲章とミドルネームを与えられた上で、結婚式が行われ、アマンダにファーストキスをめちゃくちゃ貪られ、みんなから生暖かい視線を向けられつつ、無事に妻帯者となったわけである。


 どうしてこうなったんだろう。

 俺は少し呆然としながら、ここに至るまでの十八年を順に思い返していた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ