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ヤオヨロズシリーズ

ヤオヨロズの軌跡~八百万の守護者編~

作者: ハテナ・ディン

「国王様、国王様~!」


静かな朝、鳥達がさえずる城の中で人の声が響く。その声の主は誰かを探しているようだった。


「国王様~!」

「また国王様を探してるんですか?毎日飽きないですね~」


その声の主に頭にバンダナを巻いた優しそうな顔の男が話しかける。・・・いや呆れているといった方が正しいか。声の主は泣きそうな顔でその男を見た。


「だっていつも王はどこかに行くんですよ~!?本当にあの人は一国の王である自覚があるのですか!!出掛ける時は私に一声かけるようにいつも言っているのに・・・」

「それが国王様なんですからいい加減諦めましょうよ。建国当初からいるジョンさんなら分かるでしょう?あまり悩みすぎると剥げますよ?」

「タコさんも一緒に探してくださいよ!最近はスター連合の動きも怪しくて何が起こるかわからないんですから!!」

「誰がタコですか!自分はオクト・クラークだといつも言ってるでしょう!」

「変わりありませんよ。それより国王様~」


ジョンと呼ばれた男が落胆した声で叫ぶとタコと呼ばれた男はハァッ~とため息を吐いた。この人の心配症にも困ったものだ。それより国王様はどこにいるのか?まぁ多分あそこでしょうが・・・

タコは今いない国王様の姿を思い浮かべ、おもわず笑顔になった・・・・


                              ★


ここは城の最上階の外、城の外の全ての景色が見えるその場所で一人の女性がその景色を眺めていた。ジッと動かず外を見る女性のその紅い瞳には一体何が映っているのか・・・?


「センカ~!」


その声に反応して紅き瞳の女性が振り向いた。女性の名前はセンカ・ゴールド、このヤオヨロズ国の国王である。


「シルバ、そんなに大きな声で呼ばないでくださいよ。恥ずかしいじゃないですか。」

「そりゃあセンカの恥ずかしがる姿を見るのが私の楽しみですから。」


シルバと呼ばれたセンカと瓜二つの女性がそう言って輝くような笑顔を見せる。反対にそれを聞いたセンカの方は肩を落とし、疲れた顔をしていた。


「私の影武者なのに口調が全然違うって結構な問題があると思いますが・・・」

「いざとなれば口調も変えますよ。それよりジョンさんが探していましたよ?」

「後で戻るから大丈夫ですよ。それに今日は急ぎの職務もありませんから…」


それに戻るとジョンがうるさいし・・・という事は言わなかった。全く昔は結末を見るだけだと言っていたのに今では私の監視みたいなものまでしているなんて…。人とは変わるものですね。


「まぁ確かにそうですね。ならゆっく「国王様、一大事です。スター連合がわが国に宣戦布告をしてきましたぁ!?」・・・やはりゆっくりは出来ないみたいですね。」

「・・・戻りましょうか。」


センカはため息を吐きたい気持ちを抑えて城の中へと戻っていった。これが戦いの始まりとも知らずに・・・・

センカが城の会議室に入るとヤオヨロズを代表する民がすでに集まっていた。その会議は重苦しい雰囲気に包まれている。そして一番に口を開いたのは緑の服を着た年老いたおじいさんだった。


「ではセンカ様も来た事ですし、緊急会議を始めます。先ほどスター連合がわが国に対し、宣戦布告をしてきました。理由はわが国が侵略行為を行おうとしていたからということですが・・・」

「言いがかりですね。恐らく最近わが国が急激に力を付けてきたので脅威に感じたのでしょう。でしょう?スネーク。」


蒼い髪の男性がおじいさんの言葉を引き継ぐ。それに合わせてスネークと呼ばれたおじいさんは頷く。そして次に発言したのは赤いローブを纏った少女だった。


「とりあえず過ぎた事を言ってもしかたないですし…今はスター連合の攻撃をどうするかを考えましょう。そしてライスさん、男らしいですわ!」

「確かにそうだな。ちなみにカナリア、私は女だ。」


先ほど発言した男性…失礼、女性はライスといい、赤いローブの少女はカナリアというらしい。しかしこんな年若い少女でも会議に参加しているという事は余程優秀なのだろう。ここでヤオヨロズ国の人材の質の良さが伺える。


「もちろん迎撃するべきです。黙ってやられるなんて性に合いませんから。」

「当たり前ですね。初めての防衛戦…頑張りましょう!」

「まぁ妥当な所です。コウキさんとコンさんも張り切ってますね~」


コウキとコンと呼ばれた二人がシルバに言われて照れる。会議も防衛戦で異議なしのようですし・・・


「決まりですね。我がヤオヨロズ国は明日、要塞にてスター連合を迎撃します。激戦が予想されますが皆さん準備をお願いします。」

「「「「了解!!」」」」


会議が終わってから皆が部屋を出た後、センカは一人部屋に残った。


「ふぅ・・・」

「何暗くなってるの~!」


静かに息を吐く。そこでシルバが部屋に入ってきた。全くノックくらいしてほしいです。そんなセンカの気持ちを知ってか知らずかシルバは連続で言葉を吐き出す。


「そんな元気無いなんてセンカらしくないよ。」


そんなの分かっている。シルバと私は昔からの親友だ。私が国を建てたと聞いた時もすぐに掛けつけて助けてくれた。でも今回は・・・


「勝てるかな・・・?」

「何?不安なの?」


私は国王だ。国王はどんな時でも弱さを見せてはいけない。そう思っていたのに・・・


「うん・・・」


弱さが出てしまう。これが自分の悪い癖だ。落ち込むセンカにシルバは優しい声で話しかける。


「センカは何でも背負いすぎだよ。もう少し国の皆を頼ってもいいんだよ?皆好きでこの国にいるんだから・・・」

「好きで・・・?」

「そう、ジョンさんもライスさんもコウキさんも…そして私も。みんな好きだからこの国にいるんだよ。」


シルバの言葉に心の底から勇気が出る。やはりシルバはすごいな…絶対私を助けてくれる。


「よし、明日は絶対勝ちますよ!!」

「当たり前でしょ!じゃあ私は寝るからね。」

「シルバ…ありがとう。」

「どういたしまして。」


部屋のドアがぱたりと閉まる。センカもベッドに入り、明日の戦争の行く末を考えながら眠りについた。そして運命の時間がやってくる・・・・


                             ★


正午・・・・時刻にすると午後3時くらいだろうか。城への道を守っているヤオヨロズ要塞で国を代表する屈強な兵士達が横一列に並んで集まっていた。その先頭にはセンカが雄々しく立っている。全員の視線の先には赤一色で染まったスター連合の大軍がいた。


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


どちらの陣営も声を出さない重い雰囲気の中、先に動いたのはスター連合の方だった。


「全軍弓矢を構え!・・・・撃てーーーー!!!!」


スター連合の陣営から小さな粒みたいなものがいくつも撃ち上げられる。そしてその粒はドンドン大きくなったかと思うと次の瞬間には矢の雨となってヤオヨロズ要塞に降り注いだ。


「アグッ!?」

「グアァッ!?」


要塞にいる何人かの兵が矢に射抜かれて血を流すが幸いほとんどが盾を掲げて防いでいたので被害は最小で済んだようだ。だが本番はこれから。


「攻撃開始!要塞を落とせーーー!!!」

「「「ウオオォォォォッッ!!!!」」」


赤の一団が一気に要塞へと迫ってくる。ここで兵士達の先頭に立っていたセンカが初めて声を上げた。その言葉に皆が聞き入る。


「ヤオヨロズの勇敢な戦士達に…私達はこれまで数々の試練や苦難を乗り越えてここまできました。ですが今!ヤオヨロズ国は危険に晒されています。国を、民を…そして私達の自由を守る為に!今こそ力を発揮する時です。ヤオヨロズの未来の為に!」

「「「「ワアアアァァアア!!!!!」」」」


センカの演説に兵士達から歓声が沸き起こる。それを見届けたセンカは自分の腰にある村正をスター連合軍に向ける。


「ヤオヨロズの戦士達よ。いざ、出陣です!!」


ギイィィイイイッッ!!


「一番乗り~!!」

「ギャアァア!?」


要塞の城門が開けられ、そこからヤオヨロズの兵士達が何人も出て行く。戦いはその火蓋を切って落とされた。まず最初にスター連合軍とぶち当たったのはコウキ率いる部隊だった。コウキは自慢の大剣を振り回して敵を両断する。

それから右翼のジョン、左翼のライスが同じようにスター連合の軍団とぶつかる。最初の一撃はどうやらヤオヨロズ側が成功したようだった。


「ハアァッ!」

「ゴフッ!?」

「セイッ!」

「ガハッ!?」


ライスは長剣から繰り出される素早い剣筋で敵を切り裂き、ジョンはその細い体からは想像も出来ないような凄まじい気合と共に拳で相手を叩き伏せる。戦況はヤオヨロズの有利に今の所は働いていた。しかしその戦況は要塞内にいる兵士の言葉で一気に変わる事となる。


「別働隊だ!後ろの門からくるぞ!?」

「何ですって!?」


センカの近くで戦況を見守っていたシルバが後ろに目を凝らす。するとなるほど、後ろに赤い軍団が所狭しと見えた。これはマズイ・・・


「センカ、私は残っている軍の一部を率いて対応するからセンカは私の事は気にせず冷静に味方に指示を送ってね。」

「シルバ…分かった。でも死んだらダメですよ。」

「誰に向かって言ってるのよ。じゃあ言ってくるわ!キャッド、私と一緒に応戦するわよ。」

「分かりました。」


シルバはキャッドと呼ばれた男と共に要塞を出て行く。それからしばらくすると裏門からヤオヨロズの一団と見られる軍隊が出て行った。


「…信じてますからね。」

「センカ様、スター連合の一部が門に到達したようです。」

「すぐにその兵を攻撃しなさい。スター連合の無作法者達にわが国の要塞の敷居を一歩も踏ませてはなりません。」


伝令兵がセンカに状況を報告するとセンカは素早く指示を出す。戦いに赴いた友の帰りを待ちながら・・・・


「これは手ごわそうですね・・・」


別働隊のスター連合の兵は正面の兵士と違ってかなり練度が高そうだった。言うなればそう、目が違う。


「シルバさん、ここは僕に任せて先に行ってリーダー格を倒してください。」

「キャッド…分かりました。任せたわよ。」


そう言ってシルバはその兵士達の上をジャンプで飛び越えて先へと向かった。シルバを追いかけようとしたスター連合の兵士の前にキャッドが立つ。そのオレンジ色の長い髪が風に乗って揺れた。


「ここは通しません。ヤオヨロズ国無限の軌道部隊隊長、キャッド・ラゴン。参ります。」


キャッドはそう告げると敵兵の中に飛び込んでいった。そして要塞の門の近くでもまた、戦いが起ころうとしていた・・・・


「負傷者は要塞の中に運びなさい!早く!!」

「う・・うぅ…すみませんカナリア隊長・・・」

「助け合うのは当たり前です。さっ、行きますよ。」


カナリアが負傷者を運ぼうとするが周りをスター連合の兵士に囲まれる。


「何だ?ヤオヨロズ国はこんなガキも戦争に出さないといけないくらい人がいないのか?」

「悪いなお嬢ちゃん。怨むならお前を戦争に出した国王を怨みな。」


兵士が剣を振りかざす。カナリアは両手で負傷者を持っているので手が間に合わない。られる!?そう思って反射的にカナリアは目を閉じた。しかしここで思わぬ助っ人が現れる事になる。


「グアァッ!?」


突如、敵兵士の体が倒れた。カナリアが目を開けると忍びの格好、黒いサングラスにコートを着た二人の青年が槍と剣を持って立っていた。忍びの格好した青年が持っている槍の先が血にまみれているところをどうやら助けてくれたのはこの青年達らしい。そしてカナリアには二人が誰なのかも分かっていた。


「間に合いましたね。早く負傷者を門の中に。」

「ありがとう。お給料弾むからね。」


その言葉を聞いた二人は嬉しそうに微笑む。そしてスター連合の敵兵達に向かい合う。


「無限の軌道部隊副隊長、ハテナ・ディン。」

「同じく無限の軌道部隊隊員、ペケサ・バツ。」

「「ここは通しません(よ)(ぜ)!!」」


その頃、正面の軍勢は優勢から一気に劣勢へと陥っていた。どうやら敵の別働隊が要塞を攻撃したという話が味方に伝わったらしい。


「くそっ…うざってぇ!!」

「数が多すぎですね。」


コウとコウキの二人が敵のあまりの多さに思わず悪態をつく。このままではいずれ全滅する。何か状況を変えるきっかけは無いものか?


「エンペラーマインド!!」


近くの敵が一斉に吹き飛ぶ。その後には村正を持ったセンカがいた。突然の国王の登場にさすがのコウキとコウも固まってしまった。近くにいたジョンなんかは顎が外れそうなくらい大きく口を開けている。


「こ、国王様!?どうしてこんな所に・・・ここは危険です。要塞の中にお戻りください!!」

「皆が戦っているのに私だけノンビリとはいかないですよ。ほら、敵はまだまだいますよ。」


センカはそう言うとまた近くの敵に最上級魔法であるエンペラーマインドをぶつける。実は自軍が劣勢になっているのを見てガマンできず、シルバの言葉を忘れて前線へと出てきてしまったのだ。全く信じられない国王である。だがこれを見たヤオヨロズの兵士達が大いに勇気付けられたのは間違いないだろう。


「全員センカ様に傷一つ付けさせるな!国王に続けえぇーー!!!」

「オオオォォォオオ!!!!」


そしてこれを皮切りにヤオヨロズ国の反撃が始まった・・・・


その頃、周りの兵士をキャッドに任せ、敵のリーダーを倒しにきたシルバだったがいかんせん敵兵の数が多すぎて中々見つからない。グズグズしていると被害はもっと増えるというのに・・・

だがここでシルバは兵士の中で一際威圧感を放っているヤツを見つけた。間違いない…あの人がリーダーだ。すぐさまシルバはそこへ飛ぶ。


「失礼します。アナタはこの軍の隊長様ですか?」

「いかにも、オレはフーズ・レガート。この軍団を率いている。」

「ぜひお手合わせを。」

「よかろう。だが後悔するなよ?」


シルバとフーズ、二人がお互いの武器を構える。攻撃を最初に仕掛けたのはシルバだった。シルバが愛剣である大剣ラグナロクを地面に突き刺すと地面が割れ、フーズを飲み込もうと襲い掛かる。しかしフーズはそれをジャンプで避けるとそのままジルバに向かって槍を振り下ろした。


「このグングニルの贄となれい!!」

「甘いです。」


シルバは紙一重でそれを受け流すとフーズにエンペラーマインドを放った。不意を突かれたフーズは近距離で・・・それもまともにそれを受ける。吹き飛んだフーズは少し体が焦げているが平然と立ち上がった。


「エンペラーマインドをあの距離で食らったのに・・・化け物ですね。」

「貴様も人の事は言えぬぞ。それに貴様…まさかあの滅亡した国の王女ではないのか?」


グッと怒りを堪えるシルバ、ここで怒ったら敵の思う壺…堪えろ。


「まぁ国王も国王なら国民も国民か。どちらもクズだから・・・なっ!?」

「取り消せ。」


シルバの声が途端に低くなる。それはいつもの明るい声からは考えられない声だった。もしここにシルバを知るものがいれば皆一斉に誰?と口を揃えて言う事だろう。


「今の言葉を…取り消しなさい!!」


殺気が膨らむ。それはスター連合の中でも歴戦の猛者であるフーズでさえも恐れる殺気だった。コイツは危険だ。今の内に始末しなければ・・・


「う、ウオオォォオオ!?」


恐怖に負けそうになりながらも頭からそれを振り払い、雄たけびを上げてフーズはシルバに向かって常人ではありえないスピードで突っ込んだ。シルバは前から鋭い槍が迫ってくるのも気にせず静かに目を閉じる。


「秘剣・・・・・」

「シネエェエエ!!!」


大剣を横に構える。そしてフーズが剣を振るった瞬間に・・・


「銀風!!」

「ガッ!?」


一気に薙いだ。フーズの体が大剣に吹き飛ばされてそのまま地面にぶつかる。そこでもう勝負は決まった。


「み、見事・・・。」


その言葉を最後にフーズの意識が刈り取られる。シルバはそれを見下ろすと呟いた。


「誰であれ、センカをバカにする人は許しません。」

「敵が撤退していくぞ!?」

「ヨッシャー!!」


歓声に前を見るとスター連合の軍勢が我先へと逃げ出していく。要塞の向こう側から歓声が上がっているところを見るとどうやら正面の方も勝ったらしい。シルバはもう一度フーズを見ると要塞へと歩いていく。そして戦いは終わりを迎えたのだった・・・・・


                            ★


「シルバー!?」

「キャッ!ちょっとセンカ、いきなり抱きつかないでよ。」

「心配したんですよ!どこも怪我をしていませんか!?」


要塞に帰ると待っていたのはセンカの抱擁だった。正直ひさしぶりに体を本気で動かしたのでかなりキツイし痛い。だがなにより、シルバはセンカが迎えてくれた事が嬉しかった。


「センカ様、そんな抱きつく姿も可愛らしいです。」

「ライスさん…顔が危ないですよ。」


センカとシルバのじゃれる姿を見て顔を赤くさせたライスにハテナが咎める。二人の体は切り傷だらけであったがとりあえず大きな怪我はしてないようだ。そしてセンカの傍にヤオヨロズ諜報部隊の隊長であるタコ…いやオクトが近づく。


「国王様、お喜びしている所すみませんが・・・スター連合の全軍が領内から撤退したのが確認されました。」

「本当ですか?それはつまり・・・」

「はい。我々の勝利です!」

「「「「「ワアアアァアァアア!!!!!!」」」」」


要塞内の皆が一斉に喜びの声を出す。それもそうだろう。スター連合は数ある国の中でも屈指の強国として位置づけられている。その国の軍隊を撃退したということは即ち、ヤオヨロズが強国と同等の力があるという事のなによりの証拠だった。


「皆さん!!」


センカの声が要塞内に響く。その声と共に歓声は止み、その場にいる全員がセンカを見た。


「私たちは今まで小国として他の国からは見られていました。ですが!」


そこでセンカは言葉を止める。そして大きく息を吸い込み、そしてゆっくりと吐いた。まるで緊張をほぐすかのように・・・


「今日、私たちはヤオヨロズの実力を、この国でも強国に勝てる事を証明したのです!胸を張って城に帰りましょう!!」

「「「「オォオオオオオッッッ!!!!!」」」」



そしてその夜、ヤオヨロズ国では盛大な祝勝会が行われた。あちこちでお祭り騒ぎが起き、思い思いの言葉を吐いている。(内容は主に今日の戦争の事だったが・・・

その中で一際盛り上がっていたのはジョンがいるテーブルだった。


「ゴクゴクゴクッ……プハァッ!もう一杯!!」

「すげぇ!?もうビール20杯はいってるぞ!」

「ウグウグウグッ・・・も、もう無理・・・・」

「グカーッ!!」

「キョウさんとキシ隊長がダウンだ!さすがヤオヨロズ壱の酒豪!!」


どうやら飲み比べをしていたらしい。キョウと呼ばれた頭にカチューシャを付けた可愛らしい顔の青年と傍らに鋭い鎌を置いている長い黒髪のキシと呼ばれた男がテーブルに頭から突っ伏していた。カチューシャを付けた青年はすでに夢の中へと入ってしまっている。


「私に飲み比べで勝とうなんて10年…いや100年早いですよ。もっと酒を持ってきなさい!!」

「「「ジョンさぁあん!アンタが一番だぜーーー!!!」」」

「全くジョンさんったら酒が入ると変わるんだから…それで、センカは何でそんなにテンション低いのよ。勝ったんだからもっと明るくならなきゃ!」


シルバの視線の先にはテーブルに一人で座りながら酒を飲むセンカがいた。戦争に勝ったというのにその表情はどことなく暗い。センカが生み出すその暗い雰囲気に耐え切れずシルバは声を大きくした。


「国王のアナタがそんなに暗くてどうするの!暗くなるワケがあるなら話しなさい!!」

「・・・私が国王で本当にいいのでしょうか?」

「はっ?」


シルバがセンカに問いただすとセンカは小さな声でそう言った。その言葉に思わずシルバは呆けてしまう。


「結果的に戦いは勝ちましたが…被害は決して少なくなかったです。誰も悲しまない自由な国を作るのが私の夢でしたのに私はそれを叶える事はできませんでした・・・」


そう言ってセンカは目の端から雫を零す。センカのその様子を見てシルバははぁっ…とため息をついた。本当にしょうがない子ね、そう言わんばかりに。


「センカ、聞きなさい。夢なんてそう簡単に叶うものじゃないの。叶える事が出来なかったのなら次は叶えなさい。それに…昨日も言ったけどここにいる皆はあなたがいる国だから今日までついてきたの。だから・・・」


自分で道を潰すような事は言っちゃあダメ。


シルバはセンカの頭に手を置く。そのままセンカの頭を撫で始めた。それは周りから見ればまるで子供を慰める母親、そういう表現が適切かもしれない。


「シルバ…そうですよね…次頑張ればいいんですよね!!」

「その意気よ。とりあえず私が言いたい事はそれだけ。さ、宴会を楽しみましょう?」

「はい!あの…シルバ?」

「何?」


ありがとうです・・・・


こうしてヤオヨロズ国の初めての戦争は大勝利でその幕を閉じた。以後、この戦争の結果は他の国々に知られ、屈指の結束と防衛力を持つ国として…そしてその国民達を、八百万の守護神{ヤオヨロズガーディアンズ}としてその名が広まる事となる。ちなみにこの後、調子に乗って酒を飲みまくったセンカとシルバは翌朝二日酔いに悩まされる事となったとか。


「頭痛いです・・・・」

「頭痛~い!?」


                             完


さてさてこれでヤオヨロズ小説第二弾、戦争編が終わりました。

登場人物はたくさんでてきましたがあまり活躍できなかったのはたんにオレの文章能力不足です・・・


次は第三弾の外伝ですね^^よろしければこちらもどうぞ~

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