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3 海竜王リヴァイアサン

 ミレーと別れた後、自分はリヴァイアサン目指して歩く。


 ミレーにもらった水が無ければ割りと厳しかったが憑りつかれたように足が動いて自分をリヴァイアサンのもとに連れていく。


 ぼんやりした頭で理解したのはどうやらリヴァイアサンの骨の周りには5つの楕円形の島があり、それぞれが浅瀬で繋がっているようで歩いて移動ができそうであった。


 林の中には食べることができそうな果物や野草が多く、リヴァイアサンの魔力の影響か危険な小動物や虫は居ないようだった。


「やっと着いた」


 と言っても島の端から端まで移動しただけでここからは道のように伸びるリヴァイアサンの骨の上を登っていく必要がありそうだ。


 この骨もどうやらそれぞれの島に繋がっているようで、骨の下は浅瀬になっていて色とりどりの物で輝いているがどうやら全部リヴァイアサンの骨以外の何かのようだ。


 ほとんどが鱗のようで太陽の光を浴びてキラキラと輝いていてそれが白い骨にも当たってきらきらと輝いている。


 これが骨が光って見えた原因かなと思いつつてくてくと骨の上を進んでいく。


 着くまでは迷路のようになっていたらどうしようと思ったがリヴァイアサンは蛇に似た体だったようで手足と尻尾が各島にかけられており、自分が目指すのは心臓部分のようで一本道であった。


 落ちないようにしようと思いつつも足が動くので骨の上をどんどん進んでいく。


「なんとなくこの島にきてから元気な気がする」


 何が影響しているのか分からないが家にずっと居たころよりも体調がいい。


 なんだか気分が良くなり、わくわくした気持ちで骨の上を歩いていくととうとう目指していた場所に到着した。




 そこはまるで城でいう王の間のようなところであった。


 外敵から守られるように厳重な骨で周囲を覆われながらも神秘的な光がリヴァイアサンの魔石から放たれ周囲を照らしている。


 深い海のような色の魔石は覗き込んでも奥が見えないような不思議な魔石だ。


「綺麗だな」


 魔石の前に来て思わず呟いたらそれに答えるようにして魔石が光ったような気がした。


 いや、実際に光っている?


 というか光が増している!


「え?ええ?」


 びっくりしている自分ではあるがまるでどうしていいか分からない。


 おろおろと立ったまま慌てていると次第に光はリヴァイアサンの魔石のような深い海のような色を持ち空中に浮かび合った。


 ぽかんとした顔でそれを見上げているとじぶんのぼんやりとした頭に声が響く。


『我が名は海竜王リヴァイアサン。よくぞ我の元に来た大陸の子よ』


 どうやら魔石には海竜王リヴァイアサンの意志が未だに残っていたようだ。


 というかそうじゃなければ未だに生き物に水の加護を与える存在の説明が付かないのか。


 どこか女性的な、母親のようなリヴァイアサンの声を聴きながら自分は少し納得した。


『我は唯一にして完成された個、それゆえに伴侶を持てず生涯一人あった。我が力を受け継ぐ子はおらず、また能有るもの我に付かづくこと叶わず、この力を継承することも出来ずにいた』


 どこか悲し気なその声に思わず自分は頷く。


 するとリヴァイアサンは少し嬉しそうな声で話を続けた。


『しかし、その悠久の時も破られた。水の加護を有し、水の精霊に愛されながらも力を奪われし者よ。その空虚で大いなる器に我が力を授けよう』


「ええっと……頂きます」


 ちっぽけで無力で頭も上手く回らないような自分には恐れ多いような気もしたが断るのも悪い気がしたので素直に受け入れた。


『そなたに海竜王リヴァイアサンの力と海の祝福を与える』


 海竜王リヴァイアサンから分離していた深い海のような光が自分の中へと入っていく。


 眠っていた心臓が動くような、今まで活動をしていなかった臓器が動き出すような感覚と共に全身が熱くなる。


 リヴァイアサンの魔力を感じると共に今まで僅かにも感じなかった自分の魔力を感じ、力が全身を巡っていく。


 全能感に包まれながらも自分は……俺は過去の記憶を思い出していた。




 暗い部屋に鎖で繋がれた俺は魔力を封じられていた。


 そんな状態の俺を無機質で冷たい目で、俺を見ている男はどこか俺に似ていて、にたりと笑ったその顔はこの世のどんな物より醜悪で、男の伸ばした手から心臓を握られるような感覚があると共に俺は絶望する。


「うあああああああああああああああああ!!!!」


 目から涙が溢れる。


 自分の中の大切な物が無くなる感覚が逆流する。


 封じ込めていた記憶が逆流し、反して力が自分の中に戻っていく。


 無残に千切られた大切な何かとの糸がリヴァイアサンに繋がるのを感じると俺は意識を手放した。

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