バッドエンドは回避できたみたいです?
その夜。
ベットへ横になった私は、今日の出来事を思い返していた。
おばあさんのお見舞いに行けなかった上、お見舞いのお菓子もどこかに置いてきてしまったなんて・・・とお母さんにはすごく怒られたけど、ハチにびっくりしちゃったの、と言って許してもらった。
だって、オオカミさんに遭遇した挙句お菓子をあげてしまったなんて言ったら外出できなくなっちゃう。
そういえば、あかずきんってオオカミに食べられた後に救出されるんだよね?
たしか通りがかりの狩人が異変に気づいて、オオカミのおなかを裂いて救出してもらうんだったっけ?
それってリアルに考えると怖すぎるし、あの口で人間を丸のみにできるとは思えないから、お腹から出てこれたとしても、もはや肉塊になっているのでは???
万が一、おばあさんと私が助かったとしても、おなかを裂かれたオオカミさんは死んじゃうんだよね。
オオカミさん・・・ハルが死んでしまうのはいやだなぁ。
お母さんには明日またおばあさんのお見舞いに行くように言われてしまったし、この後どうしたらいいのかな。
今日ハルの行動を見ていると、私を食べようとしているようには思えなかったし、きっと打開策は見つかるはず・・・。
思いを巡らせながら、とめどなく襲ってくる眠気には抗えず、私は夢の中に落ちていった。
♦
翌朝。
考えはまとまらないものの、何でもいいから対策を!と思った私は、とりあえず早朝からしこたま料理を作って重箱に詰め込んでいった。
お母さんがびっくりしていたけど、おばあさんに昨日行けなかったお詫びもかねてたくさん差し入れしたいと言ったら、しぶしぶ了承してくれた。
「いってきまーす!」
今日は荷物が大量なのでリュックを背負っていくことにした。
赤いずきんにリュックを背負うってビジュアル的にどうなの!?とは思ったものの、背に腹は代えられないよね。
けれども。
町を出て森に入る頃には、荷物が重すぎて予想以上に疲れてしまっていた。
「ふえぇぇぇ・・・もう歩けないよぉ。」
とりあえず荷物をおろして、その辺にあった木の切り株に腰を掛けて弱音を吐いていると、ガサっという音とともに何かが動く気配がした。
「だ、だれ!?」
びくびくしながら音のした方を見ると、奥の茂みから出てきたのはハルだった。
「おはよう、ダリア。そんなところに座りこんでどうしたの?」
優しそうな目元で語り掛けてくる彼の手元には昨日渡したかご。
そしてかごの中にはたくさんの花が。
「え・・・それ。」
私の視線に気づいたハルは、ちょっと照れ臭そうにしながら私にかごを差し出してきた。
「昨日のお菓子のお礼に・・・。ダリアが来たら渡そうと思ってたんだ。」
「あ、ありがとう・・・。」
差し出されたかごを受け取って、昨日摘んでいた花と同じだと気づく。
「もしかして、昨日のお花畑で摘んできてくれたの?」
「あ、うん。ダリアが好きな花なのかなと思って・・・。」
「すごくうれしい・・・。あ、そうだ。」
リュックから重箱を取り出して、ハルに渡す。
「これね、ハルに食べてもらいたくて作ってきたの。」
「え、ダリアが作ってくれたの?」
ハルは嬉しそうに重箱の蓋を開けると、おかずを一口ぱくっと食べた。
「めっちゃうまい!ダリアはお料理上手なんだね。」
そんな反応に気をよくした私は、つい不用意な一言を発してしまった。
「えーと、上手かはわかんないけど、気に入ってくれたのならいつでもハルのためにお料理作るよ!」
「え・・・ダリア、それって。俺のお嫁さんになってくれるってこと?・・・夢みたいだ。絶対、幸せにする!」
そういってハルはぎゅっと私を抱きしめ、おでこにキスした。
あれ?
あれれ???
そういう解釈されちゃうの?
私としては、いつでもご飯作ってあげるからおばあさんと私のことは食べないでね、という予防線を張ったつもりだったんだけど。
「え、えっと。あのね。ハル・・・。」
「ん?なぁに、ダリア?あ、おうちにご挨拶にもいかないとね。あー、でもうちの親にも早く紹介したいなぁ。」
「あの、私・・・これからおばあさんのおうちに行くから・・・。」
ノリノリのハルにどう答えるべきかわからなくて、とりあえずその場しのぎにそんなことを言うと・・・。
「じゃあ、荷物持ってやるよ!まずはおばあさんにご挨拶しに行こう。」
えーと、これはもう逃げられないパターンですかね?
でも、とりあえずはおばあさんと私が食べられちゃうバッドエンドは回避できたのかな?と思い、重い荷物を担ぎ上げてご機嫌のハルと一緒におばあさんの家に向かうことにした。
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