転生しちゃったみたいです
久しぶりに投稿してみました!
あかずきんのお話をモチーフにした新連載です♪
楽しんで頂けたら幸いです。
「なぁ、そこの花畑でおばあさんに花を摘んでいってやったらどうだ?」
そういわれて何の疑いも持たずに私は花畑へ向かった。
そして、花を摘もうとしたそのとき・・・
ぶーーーん、チクッ!
「い、痛い!」
花の蜜を吸っていたハチに刺されてしまった。
そして、痛みの衝撃とともに、前世の記憶が戻ったのだった。
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前世の私は、日本という国で働く20代半ばの女性だった。
毎日終電まで働き、休日は一人でゆっくりと過ごすことが多かった。
駅でたまたま目に留まった絵本の原画展のポスターが気になって、久しぶりに休日出かけようとして、そして・・・。
「・・・交通事故、だったのかな。」
おぼろげな記憶からけたたましいクラクションの音と衝撃に続く痛みを思い出し、自分の身体をぎゅっと抱きしめる。
「原画展、行きたかったな。」
優しいタッチで描かれたあかずきんちゃんの絵が気になって、見に行こうと思ったんだっけ。
と思いながら自分の服に目を落とすと、ベルベット素材の鮮やかな赤い生地が目に入った。
あれ?私が着ているのって赤いフード付きマントだよね?
ん?
私は誰に言われて花を摘もうとしてたんだっけ?
んん?
そうだ、オオカミさんからおばあさんに花を摘んでいったら?て言われたんだ・・・。
赤いフード付きマントにオオカミ、おばあさんに花を摘むって・・・
もしかしてあかずきんに転生しちゃった?!
やばい。
もしそうであれば、あのオオカミさんにおばあさんと私は食べられてしまう。
たしか、あかずきんが花を摘んでいる間にオオカミさんがおばあさんを食べて、おばあさんに成り代わるんだったよね!?
これは、何とかして阻止しないと・・・。
焦った私が周りを見回すと、オオカミさんの後ろ姿がかろうじて見えた。
「オオカミさん、待ってーーーーー!」
まずはおばあさんが食べられるのを阻止しなくてはと声の限り叫ぶと、オオカミさんが振り返った!
どうやら気づいてくれたようで、すぐに戻ってきてくれた。
「どうした、あかずきん?」
オオカミさんからの問いかけに、やっぱり私はあかずきんなんだと確信する。
「あ、あのね・・・ハチに刺されちゃったの。」
「あ!ほんとだ。鼻の頭が腫れてるじゃないか。早く応急処置をしないと!」
次の瞬間、オオカミさんは私の頬を両手で優しく包み込んで顔を近づけてきた。
(え、なに?もう食べられちゃう・・・とか!?ぎゃー!)
パニックになってもがく私に、オオカミさんが力を強めて顔を固定し、押し倒してきた。
「あ、あかずきん、ちょっとおとなしくして!」
そして口を開けて・・・
鼻に吸い付いてきたのだった。
(えええー!?)
そして吸い付いては唾を吐く動作を数回繰り返すと、オオカミさんは私を解放してくれた。
「なんとか毒は吸い出したけど、家でちゃんと診てもらうんだよ。」
あれ?
なんかこのオオカミさん、いい奴なんじゃない?
びっくりしていると、オオカミさんはさらに言葉を続けた。
「ハチのせいでかわいい顔が台無しだ・・・今日はもう帰った方がいいよ?」
え?
私のこと食べようと狙っているんじゃなかったの?
腹ペコなんでしょ?
訳が分からなくなってオオカミさんをじっと見つめた。
オオカミさんは銀髪で澄み渡るようなブルーの瞳がとってもきれい。
そうか、物語の中でオオカミさんはリアルな狼だったけど、私が転生したこの世界では獣人なんだな。
オオカミさんの瞳をじっと見つめて思いを巡らせていると、オオカミさんは照れたように目をそらした。
それで私もじっと見つめてしまったことに今更ながら恥ずかしくなってしまい、取り繕うように口を開いた。
「あの・・・ありがとう。
これ、おばあさんに持って行こうと思っていたお菓子なんだけど、オオカミさんにあげる。
・・・そういえば、オオカミさんってなんてお名前なの?」
「俺の名前は・・・ハルっていうんだ。お菓子、もらっていいのか?」
「うん。助けてくれたお礼。私はダリアっていうの。ハル、ありがとう。」
「ダリア・・・なんか、悪いな。こちらこそありがとう。」
ハルはすごくうれしそうに笑った。
その笑顔がまぶしくて、また会いたいと思ってしまった。
ちょ、ちょろいな私。
「あ、かごはまた取りに来るから。じゃあね!」
このまま甘い雰囲気に呑まれちゃいけないと思った私は、すくっと立ち上がって走りだした。
ハルが送ると言ってついて来ようとしたけれど、本当に大丈夫だからとお断りして、家に戻ったのだった。
読んで頂きありがとうございました。
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