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天才たちとお嬢様  作者: 釧路太郎
危険な兄と妹編

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戦いの後

 二人の間に割って入ったのは昌晃君と愛華さんなのだが、いきなり飛び込んできた愛華さんを見て藤次郎さんは固まっていて、昌晃君を見た美桜ちゃんは魔剣亞燕から手を離してそのまま昌晃君に抱き着いていた。

「これから何が起こるんですかね?」

「さあ、私にもわからないです。ただ、あの二人が割って入ったことで藤次郎さんと美桜さんの意識がそれたのは間違いないですね。美桜さんはもう魔剣亞燕を手に持ってないですからね」

「藤次郎さんは妖刀卑怨を持ったままのようですが、近付いてくる愛華さんを見て少し後ずさりしてますね」

 美桜ちゃんとは対照的に藤次郎さんは愛華さんから距離をとろうと後ずさりしているのだが、狭い教室の中でそんなに逃げるスペースも無いので簡単に壁際まで追い詰められてしまっていた。

「その刀はもういらないですよね。鞘にしまって渡してもらってもいいですか?」

「それは出来ないです。そんなことしたら美桜を助けることが出来ないので」

「美桜ちゃんなら大丈夫ですよ。昌晃が魔剣亞燕を回収しましたから。あなたももう妖刀卑怨を持っている理由は無いじゃないですか。だから、それを私に渡してくださいね」

「愛華さんの頼みでもそれは聞けないです。俺が渡した瞬間にあいつが美桜に魔剣亞燕を渡すかもしれないじゃないですか。それだけはさけなくちゃいけないんですよ」

 意地でも妖刀卑怨を手渡そうとしない藤次郎さんではあったが、少しずつかかっている愛華さんのプレッシャーで挙動がおかしくなっていた。刀を握っている手が震えることなんて今まで一度も見たことが無かったのだが、今は刀身が何本もあるのではないかと思えるくらいに揺れて見えているのだ。

「やっぱり無理です。美桜はもう魔剣亞燕に完全に取り込まれてしまってるんです。でなきゃ、あいつに抱き着いたりしないですもん。いや、アレは抱き着いているんじゃなくて俺があいつを殺すのを待っているって事じゃないか。そうだ、そうに違いない。俺は美桜を守るためにあの男を殺さないといけないんだ。愛華さん、そこをどいてください。美桜のためにもあなたのためにも俺はあの男を殺さないといけないんです。それだけが今俺の出来ることなんです」

 覚悟を決めたのか藤次郎さんの手の震えはピタリと止まっていた。愛華さんの横を通り過ぎた藤次郎さんはそのまま美桜ちゃんと昌晃君のすぐそばまで移動して、そのまま両手でしっかりと握った妖刀卑怨を上段に構えて一気に振り下ろしたのだ。

 それを感じ取った美桜ちゃんは昌晃君を突き飛ばしつつ紙一重のタイミングでかわしたのだが、藤次郎さんは昌晃君を助けた事に納得がいっていないようだった。

「なんでそいつを助けるような真似をするんだ。お兄ちゃんはお前のためを思ってそいつを殺そうとしているんだぞ」

「だから、昌晃さんを殺すなって言ってるだろバカ兄貴。昌晃さんを殺そうって言うんだったら私も本気で兄貴に抵抗しなくちゃいけないな。そんな刀に魂奪われちゃって情けない男だ」

「刀に魂を奪われたのはお前だろ。俺はいたってまともで正気だし、なんでそんな奴を助けようとするんだよ」

「なんでって、私は昌晃さんの事が好きだからだよ。バカ兄貴だって愛華さんの事が好きなんだろ。私はそれを応援してやるからバカ兄貴も私を応援しろよ。友達いないんだから昌晃さんに友達になってもらえるようにも努力しろよ」

「そんな事言うなよ。俺だって友達の一人や二人くらいはいるさ。お前に恋愛はまだ早いから高校生になるまで我慢しとけって」

「そんなの我慢出来るわけないだろ。好きになったのはどうしようもない事なんだよ。どうしても昌晃さんを殺すって言うんだったら先に私を殺せよ。その後で昌晃さんを殺せばいいだろ。さあ、やれよ」

「美桜を殺したら何の意味もないだろ。俺はお前に幸せになって欲しいんだよ。不幸になってほしくないんだ。だから、幸せのためにもその男から離れた方がいい」

「そんなことは無い。私は昌晃さんと一緒にいられれば幸せなんだ。だから、邪魔しないでよ」

 昌晃君と愛華さんも気まずいとは思うのだが、ただ見守っている俺達も少し気まずい思いをしていた。

 美桜ちゃんの持っていた魔剣亞燕は無事に回収することが出来たのでもう問題は無いはずなのだが、それとは関係なしに藤次郎さんと美桜ちゃんが揉めだしてしまったのだ。お互いの思いを確認し合ったのだが、藤次郎さんはどうしても美桜ちゃんの恋心を認めるわけないは行かないようであった。

 美桜ちゃんはそんな藤次郎さんに認めてもらう必要はないと言い切ってしまい、お互いに説得することは不可能になっていたのであった。頑固な二人がお互いの主張を一切曲げようとしないので場の収拾は難しそうなのだが、愛華さんと昌晃君は何とか二人をなだめようと努力はしているのであった。


「このままの状態が続くことは良くないと思うのですが、将浩さんはどうしたらこの状況を打破できると思いますか?」

「そうですね。美桜ちゃんサイドは武器もない状態でどうすれば藤次郎さんとやりあえるのかと考えるんですけど、普通に無理ですよね。完全に素人が相手だったら素手でもいけそうな予感はあるのですが、幼少期から剣の道に勤しんでいる藤次郎さん相手には何人いても十分ということは無いだろう。そう思いますね」

「やっぱりそうですよね。私もそう思ってたんです。それで、ジェニファーにも二人の間に立ってもらおうかなって思ってるんですよ。ジェニファーは二対一の状況でも問題無く立ち回れると思いますので」

「でも、それはもリスクはあると思うんですよね。藤次郎さんの剣の実力が日本屈指の実力があるとして、そこに割り込んでジェニファーさんは大丈夫なんでしょうか?」

「それは問題無いですよ。ジェニファーは世界最高ですからね。後ろにも目があると思わせるようなディフェンス能力ですよ。あれくらいだったら簡単に避けられますよね?」

「どうでしょうね。もしかしたらという事があるかもしれませんが、今のままであれば問題無いです」

「では、そろそろこの状況も落ち着かせないといけませんので、頼みますよ」

 綾乃はちょっとコンビニまでおつかいに行ってくれというような感じでジェニファーさんを戦いのど真ん中へと送り込んでいたのだ。二人はまた邪魔者が入ったという感じでジェニファーさんの事を見ていたのだが、ゆっくりと藤次郎さんに近付いたジェニファーさんはゆっくりと右手を差し出すと、そこへ妖刀卑怨を渡してきたのであった。

「あとは好きにしていいですよ。ただ、武器を使うのは良くないと思うのでお願いしますよ」

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