第25話 いただきます
グゥ〜
浦島さんのお腹が鳴った。
「僕お腹すいちゃった」
そういえばいつからご飯を食べていないんだろうか。
「そうですね。どうしましょうか。」
「僕ずっと竜宮暮らしだったからご飯作れないんだよなぁ」
俺は立ち上がって冷蔵庫を探す。
冷蔵庫を開けると肉やら調味料やらが並んでいた。
冷蔵庫の隣には米びつもある。
俺はエプロンを着けた。
「オオカミくんもしかして作れるのか?」
「作れるっていうほどじゃありませんが。
父と母が亡くなってからはしばらく自炊してましたし。」
さて、何を作ろうか。
俺はひき肉を見つけた。
後ろめたさを感じながらも浦島さんのため、と言い聞かせてひき肉をボウルに入れる。
そして別のボウルに豆腐を入れた。
玉ねぎをみじん切りにし、フライパンに入れる。
炒め終わった玉ねぎを半分に分け、2つのボウルに入れた。
うん、これでいい。
これなら俺も浦島さんも満足してくれるはず。
それから俺はご飯を炊いて冷蔵庫にあった野菜たちを適当に炒めた。
ハンバーグとソイミートバーグができた。
「浦島さん、できましたよー!」
「いただきます!」
浦島さんがお箸を掴んだ。
俺も浦島さんの言葉に倣って言う。
「いただきます。」
俺はソイミートバーグを食べ始めた。
「そのハンバーグ僕のと違くないか?もしかして高級肉?」
「まあそんなところです。」
「君だけずるいぞ!僕も!」
正面に座っている浦島さんがお箸を伸ばし俺のお皿から一口ソイミートバーグをとった。
「…いや、僕の食べたことあるのと違うぞ?僕の食べてみてよ!」
そう言って浦島さんはお皿を差し出してきた。
「あっ、俺…」
「苦手なのか?」
沈黙が俺たちの間を流れる。
意を決して俺は口を開いた。
「あの、俺…動物を殺して食べることの罪深さを思い出してしまって。
かぐや姫も殺生なんてして欲しくないと思ってる。」
浦島さんの手が止まった。
こんなことまだ言うんじゃなかった。
浦島さんがそっとお箸を置いた。
「日本ではさ、ご飯を食べる前に いただきます と言って手を合わせてから食べるんだ。
それはもちろん作ってくれた人への感謝。
そして命をいただいた動物たちに対して、だ。
感謝の気持ちを忘れずに残さず最後まで食べる。
これが僕たちができる感謝の形だと僕は思うんだ。
君もさっき確かに感謝を表現してた。
そして感謝を忘れることなくいただけば、何も悪いことはないんじゃないか?」
「でも動物以外にも食べるものはあります。大豆や小麦、それにお米だって…」
「それもみんな生き物には違いない。
生きてるものをいただかないと僕らは生きていけないんだ。
そりゃ自力で生きていければそれに越したことはないと思うけど。
一見自己完結しているように見える植物でさえ、土や水に恵んでもらってる。
そうだろう?」
浦島さんの真っ直ぐな目に、俺は少し驚いてしまった。
妙に説得力があった。
感謝…。
俺は手を合わせた。
「いただきます」
まだ持ち慣れないお箸を恐る恐る持ち、浦島さんのハンバーグを少し切らせてもらった。
お肉だ。いいのだろうか本当に。
そんなことを考えながらもハンバーグを口に運ぶ。
浦島さんがじっとこちらを見ている。
「美味しい。」
「だろ!もっと、食べよう!」
気付くとお箸が止まらなくなっていた。
結局浦島さんのハンバーグを半分ももらってしまった。
誰かと食べるご飯ってこんなに美味しかったんだ。
久しぶりの感覚。
「ごちそうさまでした。」
浦島さんが言う。
俺も続く。
「ごちそうさまでした!」




