第一話 ~天才誕生~
とある酒場。
酒を飲んで酔っ払っている冒険者は言った。
「この世界では、魔法が全て。剣や槍なんてのは魔法の才能がない奴が身を守るためにあるんだ。」と。
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ここはとある田舎の村
そこに仲睦まじい若い夫婦が住んでいた。
夫の名はエウルド 妻の名はローズ
エウルドは村の安全を守る警備団の一員として働いている。
ローズは身篭っていた。
二人にとっては、初めての子である。
出産したのは村では珍しい嵐の日であった。
その子の名はガウルと名付けられた。
ガウルは不思議な子だった。 赤子だと言うのに、泣かないのだ。
その事に不安を感じたエウルドは、
「一度司祭に診てもらった方がいいんじゃないか?」
といい、まだ赤子であるガウルを村の司祭の所に連れていき、診てもらったのだ。
この国では、教会から派遣された司祭が診断や治療をしてくれる。
一抹の不安を抱えて診せに言ったのだが、
司祭の口からは、「特に問題はないですよ。」
と、言われ、
エウルドとローズは安心して生まれてきてくれた我が子を育てようと育児に励んだ。
その後、特に問題もなくガウルは成長していった。
強いて言えば、子供にしてはしっかりし過ぎていることくらいだ。
初めて異変が起きたのはガウルが6歳になってからのことだった。
「お父さん、僕に剣術を教えてください!」
と、突然エウルドに言ったのだ。
エウルドは村の守備団に所属しているだけあって、村ではかなりの実力者である。
ローズにも、「あなたが鍛錬しているのを見てやってみたくなったんでしょう。教えてあげたら?」
と言われたので、その次の日から剣を教える事になった。
エウルド自身も、息子に何か教えてやりたいと
常々考えていたので、張り切っていた。10年後には、共に村を守れたらな…なんて考えながら。
朝の木刀を使った素振りから、エウルドの休日には、一緒に模擬戦なども行った。
だが、半年後異変が起きた。
いつものようにエウルドが、「ガウ、素振りするぞー!」
と、言うとガウルは 「お父さん、今日は本気で打ち合ってくれませんか?」と言うのだ。
これにはエウルドも、(少し甘やかしすぎた、ちょっとばかしお灸を据えてやるか。) と考えて、
「よし、やってみるか!」
そう言うと、エウルドはガウルに木刀を渡して庭に出た。
そして二人が見合って構えた瞬間、
エウルドの視界からガウルが消えた。
そう、文字通り消えたのだ。
そして、エウルドは膝をついた。
エウルドが構えた瞬間、ガウルが6歳とは思えないスピードでエウルドの腹に木刀を打ち込んだのだ。
膝をつき、襲ってくる痛みの中、
エウルドは気づいた。
ガウルは天才なのだ、と…