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怪談百物語  作者: 安城朱理
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第九十九夜 終告写真 その一

 これは私(安城)がいままでの取材資料を整理していた時のこと。

 当時書いていたコラムに使う写真を探していると、現像された写真束の中から一枚だけ不可解な写真が出てきた。

 それはこういうものである。

 まず日付は一九八二年十月十三日とある。しかし、この写真束は少なくとも私が『フォボフィリア』で活動し始めてからのもの。つまり、この一枚だけ異様に古いのである。

 そして写っているのはとある居酒屋の座席であろうか。フラッシュが焚かれており、店の内装は薄暗くてはっきりしないが、中央にジョッキや料理の盛りつけられた皿がところ狭しと並んでいる机があり、その右奥に一人の男性が楽しそうに笑みを見せながら写っている。彼は少なくとも私には全く面識のないひとだった。

 この写真が不可解に感じた部分は、その男性と合わない食器の数である。ジョッキの数を見ても、そこには彼のほかに十人ほどいてもおかしくない。それになぜだか彼しか写っていないのにその彼が写真の中心にいないのである。


 私はこの写真の事情を知っている人がいないか編集部で訊いてみると、編集長からこんな話が出た。

「ここに写っているのは僕の前の編集長だったひとだよ。いやー随分若いときの写真だな」

 どうやらここに写っているのは『フォボフィリア』の前編集長だったYさんだという。しかし、退職されたのは二十四年前ということもあり、編集部のほとんどが初見だった。

「でも、こんな昔の写真がよく残ってたね。今になって出てくるものじゃないだろうに」

「そうなんですよ。それにその一枚だけが二〇〇〇年代以前のものなんです。取材相手から預かったものじゃなければ、どうしてその写真が……」

 誰もその写真を動かした者はいないようだった。

「ちょっとYさんに連絡を取ってみようか」

 ということで、編集長に電話をしてもらうことになった。


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