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怪談百物語  作者: 安城朱理
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第九十八夜 線香の匂い

 Oさんが夜中、仕事を終えて車を走らせていた時のこと。

 ふとバックミラーに強い閃光がちらついた。どうやら後続の車がハイビームを焚いて走ってきているようだ。その閃光が激しく上下に揺れて、赤いボディの車が猛スピードで迫って来ているのが見えた。

 このままだと追突される!

 そう思って、慌てて歩道に車体を滑り込ませると、赤い車はブレーキを踏むことなくギュンという音をうならせながら通り過ぎて行った。

 九死に一生を得たOさんはまだ踊る鼓動をなんとか抑えながら、再び道を走り出した。

 しばらくすると、またバックミラーに強い閃光。ああ、よく見るとあの赤い車だ。さっき勢いよく追い抜いていったあの暴走車がまた後ろから迫って来ている。

 ダメだ、ぶつかる!

 そう覚悟してぐっと力をこめる……すると、赤い車はいつの間にかOさんの車を追い越していた。車線を越えて追い越したのか? そんなことを考えていると、前方の赤い車はハザードランプをつけて右に寄せた。

 面倒なやつに絡まれたかもしれない、と不安になりながらもOさんもそれに従って、赤い車の後ろに停車した。

 しかし、赤い車からは誰も降りてこない。Oさんも怖くてなかなか降りることができない。

 夜中のせいか、他に走っている車はない。静かな空間の中で明かりのともった車が二台、何の進展もなく停車しているだけだった。

 どうしていいものか考えあぐねていると、目の間がふっと暗くなった。というより、赤い車のテールランプが消えたのだ。それも車体ごと。Oさんの車が照らすライトの先にはもはや何もなかった。

 Oさんは恐る恐る車を降りて確認してみたが、赤い車はもうどこにも見当たらなかった。

 しかし、その車が止まっていた場所からは強烈な線香の匂いが漂っていた。


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