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怪談百物語  作者: 安城朱理
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第九十一夜 麦わら帽子

 Mさんの家の前にはカーブミラーが一本立てられている。ちょうど家の塀が大人の背丈ほどあり、見通しが悪くなっていることから駐車スペースから見えるようになっている。近所には小学校があり、通学する児童たちの姿もあるため、Mさんも毎日の通勤に使用していた。

 ある日、Mさんが仕事に行こうと車に乗り込みエンジンをかけると、ふっとそのカーブミラーにひとつの麦わら帽子が掛けられていることに気付いた。明らかに子供用の小さなサイズ。伸び切った白いゴムが薄汚れた帽子をゆらゆらと揺らめかしている。

 確実に昨日の朝の時点ではなかったものだ。さしずめ誰かがここの辺りに落とし、それを見た誰かが親切心で近くのこのカーブミラーに掛けていったのだろう。

 その麦わら帽子はしばらく持ち主が取りに戻ってこないまま、そこに掛けられたままだった。

 一週間経った時のこと。Mさんが朝、車に乗り込むと、昨日まであったあの小さな麦わら帽子がなくなっていたことに気付いた。ようやく持ち主が取りに来たのか、あるいはどこかに飛んで行ってしまったのか。どちらにせよ家の前にずっと掛けられてあるよりかは幾分心象が良い。Mさんはいつものようにカーブミラーに、車や歩行者が映っていないことを確認してからゆっくりと車を発進させた。

 その時。

 Mさんは塀から小さな女の子がすっと現れるのを見た。

急ブレーキの反動を受けて身体が大きく弾む。

 しまった! と思って急いで車から降りて様子を見てみたが、女の子の姿はどこにもなかった。確かに見たはずだ。髪を二つに縛って白いワンピースをきた小学生くらいの女の子を。しかし、辺りを見回しても誰もいなかった。

 Mさんは不思議に思いながら再び車に乗り込んだ。そしてゾッとした。

家の前のカーブミラーには、白い伸び切ったゴムに繋がれた小さな麦わら帽子が揺れていたのである。


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