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怪談百物語  作者: 安城朱理
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第七十七夜 愛犬

 Cさんは溺愛していたトイプードルの『ショコラ』を、病気で亡くしたことに心を痛めていた。毎日毎日一緒に過ごしていたため、そのロスはすさまじく、火葬を済ませてから数日は魂が抜けてしまったかのようにぼんやりとしていた。

 ある日、Cさんが自宅でシャワーを浴びているとリビングの方から犬の鳴き声がする。ショコラの声だ! Cさんは思わず裸のまま浴室を飛び出したが、そこにショコラがいるわけもなく、鳴き声も聞こえなかった。

 あまりのペットロスで幻を見てしまっているのだ。いつかは乗り越えないといけないが、それがいつになるのかはわからない。Cさんは愛犬のショコラとの思い出を回想しながら、冷えた体をもう一度温めようと浴室に戻ると、今度は犬がトタトタと歩く音が聞こえる。鳴き声もさっきよりもずっと強く鳴いている。まるで自分の存在をアピールするように。

 しかし、何度確認したところでその姿を確認することはできない。近づこうとすればするほど、その距離は遠くなっていく。

 ショコラはまだここにいるんだ。きっと自分が死んだことを信じられていないみたい。しかし、それはCさん自身がショコラの死を認めていない部分に原因があるような気がしてならない。成仏させてあげられずに引き留めてしまっているのは、私かもしれない。

 身近な死を乗り越えるのは容易なことではない。しかし、この目でその最期を見届けたことは間違いない。あのやせ細って動かなくなった身体を抱いた時の硬さ、冷たさ。それは今も感触として鮮明に残っている。

「ショコラは死んだの……」

 Cさんがそうつぶやくと、ショコラの鳴き声はぴたりと止んだ。

 それからCさんの心はすっと軽くなり、愛犬の死を乗り越えることができた。


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