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怪談百物語  作者: 安城朱理
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第七十五夜 肝試し

 Dさんは大学のサークルの友人ふたりと肝試しをすることになった。

 深夜二時を回ったころ、E市にある心霊スポットに車で向かう。そこは山林の中にある小さな休憩所であり、自販機や公衆トイレが建てられているが、長らく管理されていないようで入り口には立ち入り禁止のロープが張られていた。噂によると、ここで女の声が聞こえて来たり、いるはずもないのに小さな子供が駆け回っているのが目撃されたらしい。本当かどうかはわからないが、そういう気味の悪い噂は後を絶たない場所として有名だ。

 無人の休憩所を照らす唯一の街灯が静かに佇立している。三人はその下にある電話ボックスがあるのを見つけた。

「よし、じゃああの電話ボックスに一人ずつ行って、時報を聞いてこよう。あとの二人は車の中で待機な」

 肝試しなんてちょっとした遊び心だった。Dさんは最後に行くことになったので、休憩所の入り口に停めた車から友人の帰りを待つ。しかし、誰も本当に幽霊なんて出るとは思っていない。夜道を怖がっている友人の姿を、遠くから携帯で撮影しながら笑っていた。

「あの公衆電話壊れてるよ。どの番号押しても繋がらないし」

 最初に出発し、帰ってきた友人がそう報告した。

「まあこれだけ寂れていればな。で、怖かった? チビった?」

「んなわけーねーだろ」

「どうする? もう帰るか?」

「はあ? それじゃあ、俺だけ怖い思いしたのがバカみたいじゃん。お前らもやれ」

 最初に検証しに行った友人がブーイングする。それならばと肝試しを続行することにして、二人目からは電話ボックスに行ったら、手持ちの携帯電話から時報に掛けてみることになった。

「じゃあ、行ってくる」

 もうひとりの友人が車を降りて電話ボックスにまっすぐ向かっていく。Dさんがその様子を撮影していると、ふっと外を歩く友人の姿が消えた。まるで闇に吸い込まれるかのように一瞬だった。

 ぎょっとして窓から電話ボックスを見ると、そこには何事もなく歩いている友人の姿があった。

 しかし、もう一度携帯のカメラを通してみてみるとやはり友人の姿はどこにも映っていないのである。

「何かの冗談だろ?」

 車内では友人の姿だけが映らないカメラでパニック状態だった。そのどうにも説明ができない現象に、なにか良からぬことが起きそうな気がしてならない。

 危険を感じたDさんは車の窓を下げて、電話ボックスに入って電話を掛けている友人に向かって叫んだ。

「おい! いったん戻ってこい!」

 しかし、その声が届いていないのか、友人は電話ボックスから出ようとする気配がない。よく見ると、なにやら笑いながら電話しているのである。

「おい! なにやってんだよ! こっち来いって!」

 クラクションをガンガンに鳴らしても、友人は気づきもせずに何者かと話し続けている。

 Dさんたちはたまらず車から飛び出して救出することにした。

「おい! 大丈夫か?」

 電話ボックスのドアを勢いよく開ける。友人は驚いたような顔をした。

「大丈夫って何がだよ。電話してんだから邪魔すんなよ」

「はあ? 誰に?」

「誰って……え、誰に?」

 調べてみると、今この瞬間、友人が掛けていた電話には通話履歴はなかった。

 Dさんたちは恐怖に駆られて一目散に車に乗り込み、ぶるぶる震えながら山を下りた。


 後日、大学のサークルでその肝試しの話をしたところ大いに盛り上がった。それで後輩が興味を持ったのか、数日後にDさんと同じように数人でその山林の中にある休憩所に肝試しに行ったというが、唯一ある街灯の下には電話ボックスなど何もなかったという。


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