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怪談百物語  作者: 安城朱理
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第六十九夜 タイムカプセル

 とある小学校では卒業生が思い出の品を持ち寄り、タイムカプセルとして成人式の同窓会まで学校に保管するイベントがある。そのタイムカプセルは一斗缶を利用して、全員分の思い出を詰め込んだ後は、厳重に封緘しておくことになっている。封はあとから操作できないように解除したら一見してわかるようになっているため、それを大人になった彼ら自身の手で解くことが準備されていた。

 Hさんのクラスもかつてタイムカプセルをつくった。しかし、長らく話題に上がることもなかったし、気にも留めていなかったため何を入れたのかなんて全く覚えていなかった。

 そして迎えた晴れ晴れしい成人式。式典の後はホテルに移動して同窓会が行われることになっていた。懐かしい旧友との再会に、話題は尽きない。Hさんもかつての友人と話に花を咲かせていた。

「そういえば、タイムカプセルのこと覚えてる?」

 友人の一人が話し出す。

「あー、そんなのあったなあ。全然覚えてない」

「開封式やるんだろ? さっき一斗缶運んでるの見たから」

 同窓会はしばらくして当時の先生らの挨拶が始まり、そしてタイムカプセルの開封式に移行した。確かに見覚えのある一斗缶が壇上に上がった時の歓声は賑やかなものだった。

 当時の学級委員が代表して封を解く。蓋を取り外すと懐かしい品物が所狭しと詰め込まれていた。

「ねえ、これ懐かしい!」

「俺こんなのいれてたっけ」

 名札のついた品物をそれぞれが受け取っていく。当時流行っていたキャラクターのプリントされたシールや、折り目のついたトレーディングカードなど、時代を思わせる品々が出てくる。一緒に入れた手紙を読んで笑うものもいれば涙ぐんでいるひともいる。それは確かに過去の自分が持っていた思い出なのである。

「Hは何入れたの?」

 全く覚えていなかったHさんのもとには、ラベルの貼っていないカセットテープがひとつ。しかし、いざ目の前にしてみても見覚えがない。

「カセット? こんな時代に?」

 当時であってもカセットテープを使う世代ではなかったが、実家には確か古いカセットデッキがあったはずだ。過去の自分はきっと何かを録音して、未来の自分に宛てたメッセージを聞かせたかったのだろう。その場で再生することができなかったため、Hさんはそれを持ち帰ることにした。

 実家の押し入れからカセットデッキを掘り起こし、再生してみる。テープが回りだすと、しばらくずっとノイズのざらついた音が続く。壊れてるんじゃないか? そう思って停止ボタンを押そうとした瞬間、ノイズの中に埋もれていた声がかすかに聞こえた。

 しかし、それは想像していた少年の声ではなく、聴き覚えのない女の声だった。

「死んで」

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