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怪談百物語  作者: 安城朱理
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第六十五夜 封じられた部屋

 Mさんが小学生の時の話である。

 当時同級生で仲が良かったKくんという男の子がいて、二人はいつも一緒に遊んでいた。

 ある日、MさんはKくんの家に初めて遊びに行くことになった。Kくんの家は先祖代々受け継がれているような大きな古いお屋敷で、庭にはコイが泳いでいる池があるほど立派だった。しかし、それを聞いてMさんがいつも遊びに行きたいと言っても「おばあちゃんがダメって言うから」と断られてしまっていた。

「でも、今日はみんな出掛けてるから、内緒だよ」

 Kくんはそう言って、Mさんを家に招いてくれたという。

 家の中は聞いていた通り、かなり広かった。全体的に和式で、綺麗に敷かれた畳の部屋がいくつも連なっている。まるで旅館の宴会場のようにたくさんの人が集まれるような部屋もあった。それでいて無駄なものは置かれておらず、生活感を感じさせないほどピシっとしている。本当に住んでいるのかと疑ってしまうほどだった。

 Kくんの後ろについてひとつひとつ屋敷の中を案内される。その中でMさんはひとつだけ、襖の取っ手に白いお札が貼ってある奇妙な部屋を見つけた。Kくんに訊ねると

「そこはおばあちゃんに絶対に開けるなって言われてるんだ。この部屋の近くで遊んでいるだけですごい顔して怒られるから、こっちにはあんまり来ないようにしてる。ねえ、あっちでかくれんぼして遊ぼう。庭も使っていいことにしよう。それなら簡単には見つからないと思う」

 そうして、MさんとKくんはかくれんぼをすることになった。

 じゃんけんの結果、Kくんが鬼になった。Mさんは広い敷地内を歩き回りながら、いろいろな戸を開けてみたが、なかなかちょうどいい隠れ場所は見つからない。

 すると、Mさんはさきほどのお札の貼ってある部屋の前にいた。

 ほんの少しの、子供の出来心だった。中にはいったい何が隠されているのだろう。いけないとわかっていても好奇心が疼いて止められなかった。

閉じられた襖をそっと開けてみる。その拍子にお札が外れてはらりと床に落ちる。徐々に差し込む光が室内を照らしていく。

 その部屋はただの六畳ほどの空き部屋だった。内観はほかの部屋とたいして違いもない。茶箪笥と小さな机が置いてあるだけで、これと言って秘密にするほどの何かがあるわけでもなかった。

「なんだ、何もないじゃん」

 Mさんはとりあえず襖を閉めて元合ったようにお札を貼り付けようとしたが、床に落ちたはずのお札が見当たらない。風も吹いていないし、そんなに遠くに行くはずもないのに、どんなに探しても見つからないのだ。これでは襖を開けたことがバレてしまう。なんだか急に怖くなったMさんは庭園の真ん中で数を数えているKくんに「お腹痛くなったから帰るね」と嘘をついて、いそいそと帰宅した。

 今日の夜にはKくんのおばあちゃんにあの襖を開けたことがバレてしまうだろう。自分のせいできっと叱られてしまう。悪いことをしたな、明日学校であったら謝ろう。そんなことを考えながら、翌日Mさんが学校に到着すると、いつも先に来ているKくんの姿がなかった。休みなのかなと思っていると、ホームルームで先生は悲しそうな顔でこう言った。

「みなさんに残念なお知らせがあります。クラスメイトのKくんが家庭の事情で転校することになりました。突然のことで先生もびっくりしています。みんなもKくんとお別れできなくて寂しいと思うけど、新しい場所で頑張るKくんを応援してあげようね」

 あまりに突然だった。昨日、そんな素振りは少しも見せていなかったのに……Mさんは担任にKくんの行方を訊ねたが、曖昧にはぐらかして答えてはくれなかった。

 その日の放課後、MさんはKくんの家を訪ねてみると、そこは昨日と変わらない大きなお屋敷。門は閉じられていて中を覗くことはできなかった。しかし、昨日まで玄関に掛けられていた大きな表札は取り外されていた。


 結局、Kくんがどこに行ったのかはわからずじまいで、そのままMさんは学校を卒業した。

「あの時、僕があの部屋を開けてしまったことが、Kくんに何かよからぬことをもたらしてしまったんじゃないかって思うんです。真相はわかりませんが、いまでも後悔してます」

 Mさんは時折Kくんが住んでいたお屋敷の前を通ることがあるが、誰かが住んでいる形跡はいまもないという。


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