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怪談百物語  作者: 安城朱理
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第五十九夜 九尾の娘

 これは私(安城)がいつも出入りしている出版社で、事務をしているNさんという女の子の話である。

 彼女はその日、月末で溜まっている仕事を片付けるのに手を焼き、会社を出るときにはすでに夜が深かった。ぎりぎりのところで終電に乗り込み、家の最寄り駅までたどり着くと、そこからマンションまで数百メートル歩くことになる。閑静な住宅街で夜も更けていることもあり、彼女の歩く靴音だけが聞こえるくらい辺りはしんとしている。

 道中には小さな稲荷神社があり、五平米ほどしかない敷地にこじんまりしたお社が建っている。普段はほとんど見向きもしないが、今日はなんだかいつもと雰囲気が違う。ほんのりとお社が白く光っているのである。通りには街灯はいくつか並んでいるが、その明かりとはまた異なる。その白い光は確実に内部から放たれているのである。

 不思議に思ったNさんはその稲荷神社に入って確認しようとすると、ぱっと光は消えてしまった。原因を知りたくて辺りをくまなく調べてみても光源となるような装置はどこにも見当たらない。とすると……。彼女はなんだか怖くなって引き返そうとすると、入り口にある小型の朱い鳥居のもとに、小学生くらいの少女が立っているのを見つけた。Nさんはあまりの唐突さに小さく悲鳴を上げる。心臓がはち切れそうなほど脈動している。

 少女は綺麗に整ったおかっぱ頭に、赤いリボン、服装は白い小袖に赤い袴――まるで巫女のような恰好をしている。丸い瞳はじっとこちらを捉え、なんだか警戒しているようである。

「ねえ」少女は語りかける。「そこ通してくれる?」

 Nさんは無言で頷く。そっと足を鳥居の方へ動かし、少女とすれ違うように通りに出た。

「ありがとう。置いてかれちゃったみたい」

 少女はお社の小さな扉を開けると、強い光を放ちながらその中へ吸い込まれていった。Nさんがその光の中でかすかに見たものは、少女のお尻の部分から生える九本もの尻尾だった。

 それ以降、Nさんはその神社の前を通るたびに注意深く観察しているらしいが、再び少女に出会うことはなかったという。


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