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第三十六夜 黒電話
Nさんが友人のアパートに遊びに行った時の話である。
深夜までふたりで酒を飲み、その流れで一泊して眠っていた時のこと。Nさんはふと目が覚めた。部屋のどこかで黒電話がリーンと、大音量で鳴り響いていたのである。友人の携帯のアラームが鳴っているのだろうか? そう思い、ベッドに寝ていた友人を蹴飛ばした。
「おい、アラームうるさいぞ」
すると、友人もその音には気付いていたようで、苛立った声で返した。
「は? お前の携帯だろ? 早く止めろよ」
黒電話の鳴る音は鳴りやまない。お互いに携帯を確認したが、そもそもアラームは作動していないのである。
ふたりは不思議に思って音の鳴る方向を調べてみると、どうやら床の方から聞こえてくるようだった。
「下の階の奴が大音量で流してんのか? 迷惑な奴だな」
Nさんが文句を言いだすと、友人は何も言わず立ちすくんだまま動かない。
「どうした?」
Nさんの問いかけに、友人は震える声でこう答えた。
「寝ぼけてんのか? 俺の部屋、一階だぞ?」
その瞬間、黒電話の音はピタッと鳴りやんだという。




