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怪談百物語  作者: 安城朱理
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第三十五夜 お弁当

 都内でOLをしているMさんは毎日昼食用にお弁当を自作して持ってくる。昨夜の残り物や適当に拵えたおかずを詰め込んで社員食堂で食べるのだ。

 昼休みのチャイムが鳴る。オフィスにいる大半の社員は各々食事に出掛ける。Mさんはバッグからお弁当箱を取り出そうとしたが、いくら探しても出てこない。家に忘れてきたのかもしれない。せっかく作ったのに……としょんぼりしながら近くのコンビニに買い物に出かけた。

 おにぎりを二つだけ買って食堂に向かい、空いている席に腰掛けると、ひとりの男性の背中が目に入った。スーツを着ているが、頭を見れば金髪である。

 うちの会社にこんなファンキーなひとがいるのかしら? Mさんは不思議に思いながらその背中をじっと見ていると、彼は見覚えのある弁当箱を懐から取り出してがつがつと食べだした。ピンク色のケースに白いフタ、私がいつも使っている弁当箱と一緒のタイプだ。

「え……?」

 Mさんは思わず立ち上がり、その男の顔が見える位置に回り込んだ。

 その顔はまさに狐そのものだった。狐が弁当箱の中身を犬食いしているのだ。

「きゃあああ!」

 Mさんの金切り声が食堂に響く。その瞬間、狐の男はびっくりしたような顔でMさんを見るや否や、出口に向かって勢いよく走りだしていった。ぎこちない二足歩行のまま、ガラス戸の向こうに消えていった。

「どうかしました?」

 食堂にいる全員がMさんをきょとんとした顔で見ている。

「さ、さっき走っていったひと見ました? 狐ですよ!」

 しかし、そこにいる全員は何を言っているのかさっぱりと言ったような顔で首をかしげている。

「え、ここにいましたよね?」

 狐の隣に座っていた男性に声をかけてみるが、彼も首をかしげてこう言った。

「いや、ずっと空席でしたよ」


 狐に化かされた! と不思議な体験をしたMさんだったが、その日の退勤時にバッグをもう一度見てみると、ちゃんと忘れていたと思っていた弁当箱が入っていた。しかし、中身は何者かに食い散らかされた跡が残っていたという。


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