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怪談百物語  作者: 安城朱理
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第三十一夜 川の物の怪

 E市の山にあるキャンプ場にはすぐそばに川が流れている。そこは深度が膝下ほどの浅い川であり、流れも緩やかであるため川に入って遊ぶこともできた。

 大学生のSさんは夏季休暇中に友人たちとバーベキューをしに、このキャンプ場を訪れた。

 ひとしきり料理を堪能した後に、Sさんたちは水着に着替えて川へ繰り出した。空は快晴、燦然と降り注ぐ日光が木々の隙間をすり抜けている。水辺の涼感もあってかなり過ごしやすかった。川の水温もひんやりとして気持ちがいい。中には頭から被って泳ぐ者もいたくらいだ。

 ふと、何かがSさんの足首を掴んだ。引っ張られるような力が加わって川の中で動けなくなった。助けを呼ぶ間もなく、Sさんは水の中に引きずり込まれた。ひと一人分の水柱が上がる。

 川に呑み込まれると、Sさんはすぐにその引力から解放された。急いで浮上して呼吸する。幸い、流された位置からはそれほど離れていなかった。

 友人たちはSさんを見て笑っている。どうやら自分から勢いよく川に飛び込んだと思われているのだ。しかし、Sさんは気が気ではない。必死で川を横切ってテントに飛び込んだ。

「どうしたのよ」

 心配になって駆け付けた友人がSさんを抱える。それは異常なまでに震えていた。

「い、いますぐみんなを……川から出して。あの川には何かがいる……!」

「え?」

「見たの。足を引っ張られて川に引きずり込まれたとき、水中に赤黒い身体をした何かが……私の足に……」

Sさんはそれからどうやって山を下りてきたのか記憶がない。気づいた時には自宅のベッドに横たわっていた。

 友人の話によれば、あれからすぐに全員を川から出してほかに誰かが引きずり込まれることはなかった。Sさんの体調が悪くなったのを見て、早めにキャンプ場をあとにして解散となったという。


 あの日Sさんが見たものがなんであったのかはいまだに解明されていない。しかし、二か月経った今でも、Sさんの足首には赤黒い痣が消えずに残っているという。


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