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怪談百物語  作者: 安城朱理
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第二十六夜 無限下降

 私とWさんが都市伝説の検証に行ったマンションは、実は怪奇現象が多数目撃されているスポットであるらしい。

 こんな話もある。


 配達員のIさんはこのマンションの四階に荷物を運んでいた。

 昼下がりのこと、七階で配達を終えてエレベーターで階下に降りようとしたときである。開いた扉の向こうには、長い髪で顔全体が覆われている女がひとり立っていた。ブラウンのカーディガンとチェックのロングスカートを穿いて、手に持つものはなく、直立不動でやや俯いていた。ああ、気味が悪い。Iさんは心の内でそう思いながらも、エレベーターに乗り込み、一階のボタンを押した。

 エレベーターは降下していく。

 背後では女の気配がする。無言のまま異様で重苦しい空気が室内に充満していた。居心地が悪い。Iさんはずっと背中を見つめられているような感覚がして落ち着かなかった。

 エレベーターは降下していく。

 はやく着いてくれ! そう願いながら階数の表示パネルを見上げると、四階を指していた。

四階!? そんなはずはない。もう三十秒は経っているがその間ずっとエレベーターは下降を続けているのだ。もう一階に到着していてもおかしくない。故障か……?

そこでIさんはあることに気付いた。ここに到着した時、この女が降りる階のボタンは押されていなかった。

ゾッとするような悪寒を覚えてIさんがおそるおそる後ろを振り返ると、女はゆっくりと頭を持ち上げていく。長い髪の真ん中から青白い鼻が分けて現れ、徐々に全体の輪郭がはっきりとしていく。

エレベーターは下降をやめない。どんどん下に降りていく。

「うわああああああ!」

 Iさんが絶叫した時、

ポーン。

突然エレベーターの扉が開いた。Iさんは逃げるように一階のロビーを抜けて外に出た。


「その女の顔は見たんですか?」

 取材中、私が訊くとIさんは眉をひそめてこう言った。

「ええ、でもすみません。それだけはもう思い出したくありませんので……」

Iさんはそれを機に配達員の仕事を辞めてしまったという。


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