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怪談百物語  作者: 安城朱理
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第二十一夜 安全確認

 第二書庫で赤い顔を見てからというものの、Kさんはそれから何度も不思議な体験をした。

 ようやく骨折が治り、職場復帰した日のこと。そのころにはBさんはその会社からは離れてしまっていて、二度と会うことはなかった。しかし、彼の霊感というものが引き継がれてしまったようで、Kさんにも突然この世ならざる存在を認めることが増えてしまった。


 その日、Kさんは新商品の開発テスト品の検査をするために、社屋の業務用冷凍庫にサンプルを取りに行くことになった。冷凍庫は八平米ほどの広さで、サンプルを安置するための棚がところ狭しと敷き詰められていた。建設当初よりもはるかに生産量も増えたため、ひとがひとり通れるくらいのスペースを残してとにかく収納量を増やしたのである。温度はマイナス二十四度。羽織物を着ていかないと凍えてしまうような冷たさだ。

 Kさんが南京錠を開けて扉を開いた時も流れ出る冷気は凄まじかった。耐冷コートを着ていても長くはいられない。Kさんは急いでリストと照らし合わせながら必要なサンプルのピッキングを終えると、冷凍庫の扉を閉めて鍵を掛けようとした。

「ああ。その前に安全確認をしなきゃな」

 この工場では昔に一度、冷凍庫に閉じ込められて凍傷を負ってしまった社員がいた。冷凍庫には設備上、内側から鍵を壊して脱出する機能が備わっていたのだが、運悪くその装置は壊れていて上手く使えなかったらしい。そのため、冷凍庫を出る際には必ず外側からノックし、誰も中にいないことを確認してから鍵を閉める決まりになっていた。

「といっても、ここにいるのは俺しかいないが」

 わかりきっていても念のためにやらなければならないのが安全確認である。Kさんは規則通りに冷凍庫の扉を閉じて外側からノックした。そして南京錠を閉めようとした途端、

 ドンドンドン!!!

 扉の向こうから激しく拳を打ち付けるような音がした。

「まさか、誰かいたのか!?」

 Kさんは慌てて冷凍庫の扉を開けたが、室内はしんとしてひとの気配などは全くしなかった。念のため棚の陰になっている部分もくまなく確認してみたが、やはり誰かが閉じ込められていたなんてことはなかったという。


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