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異世界を8本足で駆け抜ける  作者: わーぐなー
2/2

馬が走った

完結!!!

 俺の魂獣、黒火のスレイプニールが産まれて町はちょっとした騒ぎになった

 同時期に同じ町から竜種と幻獣種が産まれるなんて事はめったにない事だからだ

 だがそれも2週間程度経つと段々と収まってきた

 やっとこれで農作業に集中できると思っていた矢先、空からまた騒ぎの種が舞い降りてきた


「この町に竜種と幻獣種が産まれたと聞いて様子を見に来た、誰かその者たちを呼んでくれないだろうか!!」


 町の上空から大きな声が聞こえる

 ちょうど農作業がひと段落したのでイバール達三馬鹿と学院での事を話そうと町まで来ていたから声が聞こえたのだ

 町の中を穏やかに流れる川の川っぺりに腰かけ、ザッコンが持ってきてくれた干し肉を食べながらあーだこーだと喋っていた

 イバール達は俺の元に幻獣種が来た事を喜んでくれたようだ

 イバールなんかは俺がこの町で1番の魂獣の所有者だと思ってたのに!と悪態をついてきたがその後これで一緒に学院に行けるんだな、と笑っていた

 ザッコンとミーソカスもクラスは違うが同じ学院に行けるからと休みの日に色々出かけようと提案してくれた


「あはは、これじゃあイバール達三馬鹿じゃなくて俺も含めて四馬鹿だな」


「何言ってんだ今更、お前以外でそう呼ぶ奴は大体四馬鹿って言ってるよ、うちのお父様だってな」


「ん?なんだ、そうだったのか?それは知らなかったな、あはははは」


 そんな事で笑い合ってる最中に声が大きな声が聞こえてきたのでなんだなんだと俺達四馬鹿は川っぺりから声がする方へと視線を向けた


「あー・・・あれはスフィンクスかな」


「ばっか、ランスロット、お前あの魂獣しらねぇのかよ」


「え?いや、だからスフィンクスだろ」


「そうだけどよ、あれはこの国の司法を任されているサイイバン家の1番の実力者イギアリ・サイイバン様の魂獣、金岩のスフィンクスって言うんだよ!」


「金岩・・・あー、そういえばあのスフィンクスピッカピカに光ってるもんな、太陽の光が当たってるから光ってるんだと思ったけどそれだけじゃあなかったのか」


「イバール様、今の言い方からするとイバール様とランスロットを探しに来たみたいですけど早く行った方がいいんじゃないんですか?」


「あ、ああ、そうだな、早く行こう、向こうは大貴族様だ、何を言われるかわかったもんじゃねぇ」


「大貴族様ねぇ・・・イバール、失礼な物言いはしちゃあだめだぞ?」


「ばっか!俺はこれでも商売で貴族と会ってきてるんだからなんとかなんだよ、それよりお前だよ、お前!敬語ってしってっか!?無礼を働くと何されるかわかんねぇんだぞ?」


「あー、まあ、そりゃそうか、普通はそうだな、うん、まあ、大丈夫、なんとでもなるよ」


「ランスロットよぉ、お前は変に大人びてるから大丈夫だと思うけど、本当に頼むぜ?」


「ああ、わかってるよ、ほら、イバールさっさと行くぞ」


「あ、おい、まてよ!」


 話し合いをしている時に金岩のスフィンクスは街の中央部分へと降りていったので俺達四馬鹿はそこへ向かって走って行った


「あ、サイイバン様、この2人です、この2人が竜種と幻獣種の所有者です」


 町の人が俺達を見つけるとすぐにサイイバン様に紹介してくれた

 それを聞くと金岩のスフィンクスから一人の人間が降り立った

 一人の人間と言ったのは顔を布で完全に隠してるから性別がわからなかったからだ

 なんか中国とかアラブの王様がやってそうな頭の上の方から布を1枚垂らして顔を隠すあれだ、風が吹かない室内なら隠せるのはわかるとしてなんで外なのにあの布が揺れないのかはわからないがお陰で性別がわからない

 さっきの声からすると男のようだが確信は得られなかった


「お前達が竜種と幻獣種の所有者か、ふむ・・・なるほど」


「はい、私が竜種ワイバーンの所有者、イバールで」


「私が幻獣種、スレイプニールの所有者、ランスロットです」


 失礼がないようにきちんとお辞儀しながら自己紹介をした


「そうか、どうやら偽りではないらしいな、竜種と幻獣種が同時期に産まれただけでも珍しいのにその幻獣種が産まれたばかりなのに色と属性がついていると中枢の方に知らせがきたので偽りではないかと私が来たのだ、何故私が来たのかはわかるか?」


「はい、イギアリ・サイイバン様の魂獣、金岩のスフィンクスは真偽を明らかにする能力が備わっていると聞いております」


 俺は内心でへぇ、そんな便利な能力があるんだなぁ、と思っていた


「そうだ、故に私が来た、魂獣の届け出で嘘をつく事は重罪だ、勿論育って色と属性がついて届け出た時よりも育っていることはある、だが育っても居ないのに色と属性を虚偽申告する事はあってはならんのだ」


 なるほど、と言うか魂獣って届け出があったのか、それすら俺は知らなかった

 確かに届けないと学院の特別コースには行けないか、いきなり幻獣種でたんで席あけてくださーい、とはならないのは当然の事だろう


「お前らが竜種と幻獣種を所持している事に偽りがないのはわかった、ではランスロットとやら、お前の魂獣、黒火のスレイプニールとやらを出してみろ、本当に色と属性があるのかをこの目でしかと見届けるのが私がここに来た理由だ」


「あ、はい、わかりました、これが私の魂獣です」


 俺はそう言って自分の中から黒火のスレイプニール、アロンダイトを呼び寄せた


「こ、これは・・・確かに間違いなく色も属性も付いている・・・そして八本足の馬・・・スレイプニールか・・・」


「虚偽申請ではないとわかっていただけましたでしょうか?」


「ああ、そうだな、お前の魂獣にはちゃんと色と属性がついている、だが一つだけ間違いがある」


「えっ!?な、なにが違っているんでしょうか!?ランスロットは国を騙そうとするような人間じゃあありません!こいつの父親もです!!」


 俺が反応するよりも先にイバールが慌てはじめてくれた


「ああ、イバールとやら、心配するな、問題はない、ただこのスレイプニールが黒火じゃなく黒炎のレベルにまで達しているだけの事だ」


 黒火じゃなくて黒炎・・・?どういう事だろうか


「ランスロット、よくわからないという顔をしているな?魂獣には6種の属性が存在すると言われている、そしてそのうちの4つは2段階あるのだ、火は炎となり水は氷となり石は岩となり雷は電となる、あと2つは光と闇、この2つは成長してもそこまで見た目が変わらないから分けてないのだがな、お前の魂獣を見るにこれはもう火のレベルを超えている、黒炎のスレイプニールだ、私がそう報告しておく」


「あ、はい、わかりました、ありがとうございます」


「ランスロット、イバール、お前ら2人は学院の特別コースに行く事になるお互い切磋琢磨しあいながらこの国の為に強くなるのだぞ」


「「はい!ありがとうございます!」」


「うむ、では私は忙しいのでもう行く、お前達が強くなったらいつか一緒の戦場を駆けるかもしれないな、楽しみにしておくぞ、ではさらばだ」


 そう言い残しイギアリ・サイイバンはまた金岩のスフィンクスに乗り込み空を飛んで行った


「あー・・・めっちゃ緊張しためっちゃ緊張しためっちゃ緊張した・・・」


「そうか?でもなんだか優しそうな人だったじゃないか、俺達平民に対してもあんな言葉をかけてくれるくらいなんだし」


「そりゃお前今は平民だけど竜種と幻獣種の所有者だぜ?成り上がる事が決定してるようなもんなんだからああやって声をかけてくれたんだろ、ザッコンとミーソカスになんか視線すら向けてないぞ」


「あー・・・そうか・・・そういう事か」


「そうだよ、それが貴族ってもんさ、油断して間違えちゃあだめだぞ、特にお前は黒炎のスレイプニールの所有者になったんだ、お前を自分の派閥に取り込もうとする動きだって絶対にある、どいつもこいつもお前の力を欲しがって利用しようとしてくると思った方がいい」


「んー・・・そっか、そうだな、そんな事考えなかったよ、すごいなイバール、お前そんな事まで考えていたのか、これじゃああんまり三馬鹿って言えないな」


「何言ってんだ、四馬鹿なんだよ、俺達は」


「「「「あっはっはっはっは!!」」」」


 それから時が経ち俺達は学院に行く年齢となった

 学院と言っても別にそこまで勉強をやる訳ではない、どちらかと言えば兵隊になる為の学校と言った方がいいだろう

 しかし特別コースとなるとそうもいかない、人の上に立つ可能性があるのだ、それなのに文字も読めない字も書けないじゃあ話にならない

 貴族の子は卵をもらう前から勉強をしているが俺はそんなものをしたことは無い

 竜種や幻獣種を平民で貰う確率は低いがゼロとまでは行かないので学院は勿論対策をしてあった

 10歳で卵をもらうとしても誕生日の近くで貰うので他が11歳になったとしてもまだ卵が孵化していない子だっている

 その為学院にはいるのは12歳になってからだ、その間に勉強をしてろと学院から色々勉強に必要なものが届いていた


「はー・・・もうアロンダイトが産まれてから一年以上経つのか・・・はやいなぁ・・・」


 異世界転生のボーナスなのか俺は習ってはいないが文字を読んだり書いたりする事は産まれた時から出来ていた、まあ、さすがに赤ん坊の時は書けはしなかったか

 それに前世の記憶もあるしそこまで基本の勉強には困らなかった

 子供の脳みそという事もあって記憶力がある、なんと素晴らしい事だろうか


「さて・・・じゃあ行くか、学院に!」


 前の日家族は学院へと旅立つ俺を盛大に祝ってくれた

 母さんは途中で泣いていた、なにかあったらすぐに帰って来いと言ってくれた

 もう1度親の愛情を受けれる事になったのは本当にありがたい

 だから俺は心配ないよ、休みの日にはちゃんと帰ってくるし、なにかあったらちゃんと周りにも相談するから、と言った

 家族皆が応援してくれている

 俺はこれから頑張らなくてはいけない、国の為と言われるとちょっと規模が大きすぎてピンとこないけどこの家族を守る為にならきっとどんな困難でも乗り越えていけるだろう


「じゃあ行ってきます、父さん!母さん!兄さん!」


「ああ、いってこい、元気にやれよ」


「いってらっしゃい、気を付けてね、ちゃんとご飯食べるんだよ、帰ってこれそうなら帰ってきてね」


「うん、わかってるよ、じゃあね!!」


 俺はアロンダイトに乗り込み学院への道を駆けていく




 時は流れ、この国では5頭の魂獣と5人の所有者が話題となった


「なあ、ランスロット・・・俺はなんでこんなに弱いんだろうな・・・戦いになると足が震えちゃうんだよ」


「いいから!!イバール様を連れて早く逃げろよ!!象よりも馬の方が速いのくらいわかるだろ!!俺がここでなんとか!なんとかするから!!だから速く!!」


 石を操る心優しい象の所有者


「へっへっへ、俺の牛じゃあ戦いはあんまりできねぇからな、でも諦めてねぇぞ?俺はイバール様やザッコン、それにお前と肩を並べてこの国を守るんだ」


「見ろよ!!戦闘用じゃあないと思ってたけど諦めなかったから!いっぱい頑張ったからこいつはそれに答えてくれたんだ!!」


 雷を操り戦場を駆け抜ける牛の所有者


「初めまして、私はコウサイって言うの、貴方でしょ、噂になってる黒炎のスレイプニールの所有者って」


「ばれちゃったか・・・そうよ、私の名前はコウサイ・サイイバン・・・サイイバン家の・・・落ちこぼれよ・・・」


「ねぇ、ランスロット・・・私ね、結婚するんだ、お母様がスフィンクスになる可能性がない狼の魂獣の所有者なんて子供を産む事くらいしか価値がないって・・・分家の方でスフィンクスも持ってる奴がいるからそいつの子供を産めって・・・それだけがお前に残された価値だって・・・」


 家名を捨て自由に生きる銀色の毛並みを持つ狼の所有者


「ランスロット、俺は絶対にお前には負けないぞ!!」


「そうやって!!お前はなんだって上から言いやがって!!!お前は俺を見下してるんだろ!!自分が上だと思ってるんだろ!!」


「ランスロット・・・俺はさ・・・確かにお前の事が気に食わなくなった時だってあったよ・・・でもさ、俺がここまで成長できたのは・・・絶対お前がいたからだって・・・わかってんだ・・・お前は最高の友達だよ・・・」


 最弱の竜種から成長し赤く巨大となった竜の所有者


「さて、じゃあ世界の隅々まで見に行くとするか」


 そして黒く燃え上がるようなタテガミに8本の足を持つ馬の所有者


 5人の名前はこの世界をどこまでもどこまでも駆け巡っていく

 それはまるで燃え盛る炎のように

わーぐなーのぶいぱらにご期待ください

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