7 まとめ ー幻想と現実の矛盾ー ①
さて、この文章もまとめに入ろうと思う。
まず、私が感じているのは、過去にあった自己幻想の絶対化、その再演である。自分達は特別な存在であって、決して負ける事はない神の国の住人であるという思想ーーそれは敗戦という事態に至った。しかしきっと多くの人はその事実を自分の魂で受け止めたのではなかったのだろう。多くの人は心に傷を負いながらも、現実に「順応」していったように思う。
戦争が起これば戦争を賛美し、敗戦になれば敗戦は良かったと言い、平和になれば平和が良いと言う。鬼畜米英は一夜にして親米に変わった。しかし実際には考えが変わったのではない。考えというものがそもそもなかったのだろう。考えがあればそれを変える事もできるし、変えるのに苦痛も感じるだろうが、考えがない人間は場の変化に柔軟に順応していくのみだ。多くの人はこうして変化に耐えたーーあるいは自らが変化そのものである事によって、自分自身は全く変化せずに済んだ。
この文章のタイトルは「オタク的なものの行く末」としたのだが、その結論は簡単に『破滅』である。それは過去に演じられた幻想の再演だろう。この破滅はどのように起こるかと言えば、自分達が作り上げた幻想や偶像を絶対視し、それが実際の現実と乖離していくのだが、それを指摘するのは禁じられている。この矛盾は時と共に進み、ある点で決壊する。もうどうしようもないほど、自分達の幻想と現実が乖離する事が明白になり、破滅は避けられなくなる。
人間が人間であるにも関わらず、自己・自分達を神に擬したのがそもそもの問題であった。最もこれは歴史的に繰り返された事なのだろうから、別に今の我々がとりたてて劣っているという事ではないのかもしれない。ただ歴史を繰り返しているだけなのかもしれない。
我々は神ではないが、同時に神を望む存在でもある。かつては神を本当に信じていたわけだが、その世界における問題は人間の悲惨をどう処理するかという事であったように思う。神の恩寵から漏れた人間が、自己を発見し、また神の支配下にあった世界を全く新しいもののように眺めた。そこから近代性に繋がるものが生まれていった。