偽桃太郎
彼女は絶望した。ここに味方が一人もいない事に。状況が全く飲み込めない彼女が今分かっている事と言えば、彼と鬼は、裏で繋がっていたという事だけだ。目が真っ赤になった雪乃は、必死に泣き声をあげた。しかしここには助けてくれる大人がいる訳でもなく、鬼達は余計に顔をニヤつかせるばかりであった。
鬼「偽桃太郎、今回も良くやったぞ。報酬の話は後でするから、今はこのお嬢ちゃんを楽しんで良いか?」
偽桃太郎「ここまで連れて来るのも簡単だったがな。」
雪乃「偽桃太郎…?」
彼女は全身の服を剥ぎ取られた。まだ純粋な身体がそこにはあった。鬼達にこれから何をされるかは彼女にも分かりきっていた。そこで全てを悟ったらしい。母親も同じように鬼にやられて殺された事に。そして自分が、人間と鬼との間に生まれた子供だという事に。全てを悟り、絶望した。もう遅い、それだけが頭に浮かんできた。しかし、洞窟の奥の方から一人の足音が聞こえてきた。走る音だ。そこに現れたのは桃太郎だった。
桃太郎「おい、雪乃!今助けるから待ってろ!」
桃太郎は必死に鬼達のところへ駆けて行った。鬼達はこれからする事を邪魔され、怒りに満ちていた。桃太郎は雪乃と喧嘩別れをした後、終わった後の出発式会場に行き、雪乃も付いて行った事を村長から聞いたのであった。雪乃の帰りが余りにも遅いので、急いで駆けつけたのだ。桃太郎は雪乃の事が好きだった。偽桃太郎はどこかへ消えてしまった。鬼達は金棒を振り回し、必死に桃太郎を潰そうとした。この金棒に当たった瞬間に二人の人生は終わってしまうだろう。鬼がさっきの酒の酔いが回って一瞬フラついた隙に何とか雪乃を抱き上げ、洞窟の出口へ駆け抜けた。鬼達も全力で彼らを追っていたが、洞窟の中は鬼にとっては走りにくく、とうとう力尽きた。二人で船がある場所へ急いで行き、ようやく到着した。しかし、そこにはさっきあった筈の船は無かった。そこに現れたのは偽桃太郎だった。
偽桃太郎「船はさっき私が全て壊した。お前達はここで死ぬ運命なんだ。鬼の子供を産み、その子供が大人の身体に育ったら鬼に明け渡す。それが運命なんだ。」
桃太郎は雪乃の顔を見つめた。真剣な眼差しで、覚悟を一緒に決めようと、確かめるように雪乃も桃太郎の顔を見た。笑顔で彼を見つめていたが、両目から涙が溢れそうになっていた。鬼がようやく洞窟を抜け、やって来るのが見えた。二人の意思は通じ合い、固く手を繋ぎ、海の底へ向かって飛び込んだ。
おしまい




