ユウジの平凡じゃない夜〜肝試しメンバー四強集結〜
大学2年生のユウジは、平凡なつまらない毎日に飽き飽きしていた。
夜更かしして遊んでも、酒を浴びるほど飲んでもすぐに飽きてつまらなくなる。
ユウジは身震いするようなスリルを欲した。
そこで思い立ったのは一人で心霊スポットに行ってみることであった。
幽霊など欠片も信じていないユウジだが、小心者でビビリなので一人で行くことは早々に却下し、多くの友人を誘って周りを固めることにした。
親友、友人、知り合い、父、母、妹、祖父、祖母、親戚など計77人を誘う。
しかし、類は友を呼ぶかの如く、ユウジの友人達は小心者でビビリで怖いのが苦手で、一度会って軽くアドレスを交換した相手には『誰だっけ?』と送られる始末。
結局集まったのはユウジを含め4人だけだった。
親友1人、知り合い1人、……祖父1人だ。
自分で誘っておきながら、ユウジは祖父が来たことに驚いた。
祖父は全ては儂が法律だ!を地で行く、亭主関白頑固じじいである。
こういった誘いには「けしからん!」と憤慨して、説教をしてきた後に殴りかかってきそうだ。
天変地異の前触れか?!と祖父を凝視する。
祖父はいつも通りの頑固じじいにしか見えない。
眉間にシワを寄せ、キツい三角眼が心霊スポットを捕らえている。
口角は著しく下がって、表情筋は衰えているように見える。
いつものデフォルトじじいだ。
口元がピクピクと痙攣しているのは気になるが……。
「おい!お前、ユウジだっけ?よくその場のノリで連絡先交換した奴を心霊スポットなんぞに誘えるものだぜ!!」
「ええっと、シン……であってるよな?まあ、人数が集まりそうになかったんでな」
目の前には、恐らくシンという名前のチャラそうな男がいた。
ちなみに名前は、アドレスの登録名で確認済みだ。
いつどこで会って、連絡先を交換したのすら覚えていないほどの関係、まあ、ほぼ知らない他人だ。
「誘っておきながら、なんだけどさ、シンはどうして参加しようって思ったんだ?」
「刺激だよ!刺激!毎日同じこと繰り返してさ、もう飽き飽き。毎日つまんねーから魔が差したんだ」
シンは突然両手を大きく広げて笑い出した。
その様子にユウジは一歩後ろに下がる。
「ふはっ、来てみて正解だったぜ!ぶはは、なんだよ!そのじじいはよぉー!!お前んとこのじじいかぁ?普通、心霊スポットにテメェのじじい連れてくっかよ!くくくっ、ユウジィー、お前サイコーだぜ!!」
ユウジは思った。
やばい奴を誘ってしまった、と。
シンにドン引いていると、祖父が前に出た。
「お主、ユウジの友か?」
「あ?まっ、知り合い以下他人以上ってところだ」
「お主、取り憑かれておるぞ!!」
祖父はかっと目を見開き、世迷い言を言い出した。
「くくっ、何を言い出すかと思えば、ぶふふ……」
(おいおい、もう勘弁してくれよ)
心霊スポットに入る前から、ユウジは疲れて来た。
ユウジは祖父とシンの会話を無視し、頼れる親友に声をかけた。
「なあ、アイツら放っておいて、俺たちで2人で行動しないか?ユウジロウチームとシンじいチームで丁度良いじゃないか」
「まあ、僕はかまわないけどさ、1人で行くのが怖いから知らない人やお爺さんまで誘ったんじゃないの?」
「い、いい加減なこと言い出すなよジロウ!」
「はいはい、で、どうするの?」
ユウジは大笑いしているシンと詰め寄るじじいに目を向け、溜息を吐いた。
「皆んなで行くぞ。それに、あの2人といたら怖くない気がする」
「まあ、ね……」
S市にある廃墟の遊園地の敷地に4人は懐中電灯を持って侵入した。
入ると直ぐに、ようこそS遊園地へと書かれた看板がある。
その更に奥に進んだ時、突然シンが騒ぎ出した。
「おお〜、こりゃあ良いもん見っけちまったようだぜ!」
シンは手元のカメラを見てニタニタ笑っていた。
「な、何か写った、のか?」
「ああ、とっても素敵なものが撮れちまった」
「それって、やっぱり……心霊しゃ「爺さん!そこの穴から顔を出してくれ!!俺が最っ高な爺さんの遺影を撮ってやる!」
「かたじけない」
祖父は何故だか少し嬉しそうにしながら、顔出し看板から顔を出していた。
「1+1は?」
「にい」
パシャパシャパシャパシャパシャ……
写真は何故か連写で撮られていた。
もう、あの2人は気にしないことをユウジは決めたが、はしゃぎまくる2人と一緒にいる限り無理かもしれないと思うのであった。
ユウジの平凡じゃない夜は始まったばかりである。
続く、かもしれない……?