変化 2
「おす。話ってなんだ?」
「ほな入るでぇ」
夢図書館構成員寮の岸田の部屋に、雹丸と崩巌が入る。
「悪いな急に呼び出して」
白の床と壁に黒のテーブルと、1人掛けのソファーが3つテーブルを囲むように配置された部屋の中から岸田が出迎える。
「なんだ改まって」
「別に気にせんでええで」
雹丸と崩巌は部屋の中に入り、岸田を挟むようにソファーに座った。
「気の利いた物は置いてないがな」
岸田はそう言って、ロックのウイスキーを3つテーブルの上に置いた。
「お! 悪いな」
雹丸は手に取ったグラスを回しウイスキーの香りを楽しむように鼻を近づける。
「岸田。奮発したな」
雹丸は上物のウイスキーに顔を緩ませた。
「ほんまや! マルッテコの18年やぁ!」
崩巌は棚の中に置かれたボトルを見て目を輝かせる。
「お前らとは久しぶりに飲むからな」
岸田と雹丸、崩巌は乾杯してウイスキーを一口飲んだ。
「でっ本題は? わざわざここに呼び出すぐらいだ、築さんにも話せない事か?」
しばらく雑談した後に、雹丸は目付きを変え話題を変えた。
「せやな。ウチも気になるわ!」
崩巌も興味深々だった。
「ああ」
酒の弱い岸田は最初の一口しか飲んでいないウイスキーグラスを、テーブルに置いた。
「12年前の事件についてだ」
岸田は目を細め低い声で話す。
「岸田!? いいのか?」
雹丸は若干取り乱す。
「ああ」
岸田は冷静に話す。
「!? なんやて!! 何が分かったんや??」
崩巌は顔色を変え立ち上がる。
岸田の言う12年前の事件とは、ランクA捕獲作戦でスイスに向かった五島 麗華が作戦中に起こった原因不明の事故によって殉職した事件の事である。
「麗華を殺したのはランクSもとい、道化の楽園で間違いない」
岸田は5秒ほど間を開けた後に話した。
「は? なんやねんそれ? 奴らの目的はそれぞれに夢を叶える事やって、瑠垣が言ってたやろ。それとなんで麗華が関係あんねや?」
崩巌は拍子抜けしたようにソファーに座りなおした。
「理由は2つある。1つ目は、奴らの移動手段だ。瑠垣の報告書によるとランクSはそれぞれに固有の能力を持っているらしい。その中に瞬間移動にも似た力を使える個体がいるのは俺たちも知っているはずだ」
「狭間から出てきた瑠垣と戦ったエルは消えるようにして、その場から姿を消したからな」
岸田の話に雹丸は補足説明をするように話す。
「これも報告書に書いてあったが、この能力は不特定多数のモノを運搬する事ができるらしい。もし、麗華がそのランクSに襲われたのなら、作戦に同伴していた16人の夢図書館構成員が何の痕跡も無く、こぞって姿を消した事も説明がつく」
「でも、あれやで。もしほんまに麗華を殺したのがそのランクSだったとしてもや。わざわざ死体を移動させるメリットは正直ないと思うで」
岸田の仮説に崩巌が異論を唱える。
「メリットはある。それは2つ目の理由だ。町田 幸光が道化の楽園に手を貸している」
岸田はウイスキーを一口飲んだ。
「はぁ!? おかしいやろ! 町田さんは12年前の事件で行方不明になって、死んだ事になってんねんぞ!!」
崩巌は声を荒げる。
「voiceが密輸していた武器の圧縮型に町田 幸光のものがあった」
「なんやて!?」
岸田の言葉に崩巌の顔が青ざめる。
「証拠はまだある。ジュリビア帝国が、異常なまでの夢粉技術の成長を始めたのも。マルス・ジュリビアが4代目ジュリビア皇帝に即位したのも12年前。それも、麗華が殉職して間も無くして起こった出来事だ。これはとても偶然とは思えない。それに俺は、麗華とスイスに向かった17人が全員殺されたとは一言も言っていない、道化の楽園が人間を殺さず生かすメリットはもちろんある……………それは、少し考えれば分かるはずだ」
岸田は崩巌の目をしっかりと見た。
「夢獣を統率するランクSが率いる道化の楽園やったら、人の目に入るようにわざとランクAをスイスに配置する事が出来る。それに、夢図書館でトップクラスの研究者だった町田さんが、協力すれば短期間で夢粉技術を進歩させる事は簡単や。あと道化の楽園が人間を生かすメリットは………まさか!? せやけど、それは…………」
頭の中で1つの答えを導き出した崩巌の目が泳ぐ。
「人間を生かすメリット、それは夢獣には出来ない創造をさせる為だ。12年前スイスに向かった町田 幸光を含む16人は夢図書館を裏切っていて、麗華は罠に嵌められた可能性が高い。つまり行方不明になった16人は生きている。夢獣に必要な物質を創造する為の協力者としてな」
岸田は目を瞑った。
「たしかに、その仮説なら、ジュリビア帝国で行方不明になった250人の自衛軍の事も説明できるな」
雹丸は厳しい表情で頷いた。
「!!!」
崩巌はテーブルを両手で思いっきり叩いた。
「なんや!! なら麗華は最初から殺される運命やったんか!? 町田!! 今すぐ見つけ出して殺したる!!」
崩巌は怒りから顔を真っ赤にし鬼の形相で立ち上がった。
「待て、雫!!」
雹丸は大きな声を出した。
「!? なんや」
崩巌は苛立ちを隠す様子もなく立ち止まる。
「正直に話す。俺と岸田はvoisuアジト殲滅作戦から間も無くして、町田 幸光が生きていて、敵側に協力している可能性がある事を知っていた」
雹丸は冷静に話す。
「それ、どういう事や!! ウチらは友達やなかったのか!? ウチだけ除け者にして…………わたしはあの日から麗華の事を一瞬たりとも忘れた事なんてなかった!! ねぇどうして? 剛!! 恋!! 」
崩巌の瞳に涙が溜まっていく。
「俺たちが町田の事を知った時は、まだ情報が少なく不確定で今、話したような仮説すら立てる事が出来なかった。もし崩巌が俺たちと同じタイミングで町田の事を知ったらどうしていた? 不確定な情報でもなんでも麗華の死の最も近くにいて、死んでいたと思われていた人間が生きていたとなれば、今と同じように飛びだそうとするだろ! 俺はお前にそんな危険な事をさせたくなかった。それに、お前が無茶をしてもしもの事があったら1番悲しむのは親友の麗華だ!! 『私が雫に無茶をさせるきっかけを作ってしまった』麗華はきっとこう思うはずだ。それに俺も、もう大切な人間を失いたくない」
岸田は強めの口調で話した。
「…………ごめんなさい」
崩巌は肩を落とし、トボトボとソファーに座りなおした。
「俺も、隠していてすまなかった」
「申し訳ない」
岸田と雹丸は頭を下げた。
「ええよ。ウチの事、思っての事って分かったから。でも、あかんね。麗華の事になるとすぐ頭が真っ白になってまう」
崩巌は控えめな声で話した。
「関西弁が変だぞ」
雹丸は茶化すように話した。
「もぉ真面目な時に、茶化さんといてやぁ!!」
崩巌は雹丸の肩を叩いた。
「……!!!」
突然、岸田は机に突っ伏した。
「岸田!? …………こいつ寝てる」
雹丸が慌てて岸田の頭を起こすと、目を閉じて一定のリズムで呼吸をしていた。
「剛は、相変わらずお酒が弱いねんな。ほら、まだ少ししか飲んでないでぇ」
崩巌はまだたっぷりとグラスに残ったウイスキーを見ながら話した。
「たく、手伝ってくれ。岸田を寝かせるぞ」
雹丸は岸田を抱きかかえ立ち上がった。
「はいはい」
崩巌はベットの掛け布団を捲り上げる。
「よいしょ」
雹丸は岸田をベットに寝かせた。
「こいつ、寝顔は昔のまんまかよ」
「せやな、そういえば、剛はよく授業中に寝とったなぁ」
雹丸と崩巌は岸田の寝顔をしばらく見た後、部屋を出た。
「しかし、びっくりしたよな。あの副総館長の緊急招集なんて」
「ああ、なんでも普段滅多に使わない地下の会議室で極秘に集まるらしい」
夢図書館本部内の廊下でダークスーツ姿の男性が2人横並びで歩いていた。
「何かあったのか? 」
「さあ? 例のランクSについてじゃないか?」
「そっか。世間にはまだ公表してないらしいけど、それで大丈夫なのか?」
「さあ? 偉い人の考える事はわからない」
2人は地下の埃っぽい会議室の中へ入った。
室内は木造でニスで艶を出した、木目が上品な空間を作り出していて、既に200人ほどのオペレーターが集まっていた。
しばらくすると、副総館長の竹宮 陣が会議室前方の議長席に座った。
「今日は多忙の中、よく集まってくれた。夢図書館が健全に活動できるのは、オペレーターが日々熱心な調査を行なっているからこその事だ。この場を借りて礼を言う。なお、本日集まってもらったのは全オペレーター50,000人の中から私が実力を認めた選ばれし者だ」
竹宮は後方のスクリーンにプロジェクターを使い資料を写し出した。
「皆も知っての通り、若干16歳にして特別筆頭司書長に任命された瑠垣 マオだ。彼の夢獣化については、報告書が出ているので皆は周知していると思う。これを見てもらいたい」
竹宮はスクリーンにある動画を流した。
「なっ!?」
「これは?」
「一体?」
スクリーンには左腕が真っ黒く変色し、周りが黄緑色に発行したマオがその左腕に武器を持ち、夢獣同様に100%の使用率を使いランクSのエンに向かって、斬撃を飛ばすマオの姿が写し出された。
「この映像は戸田が命懸けで撮ってくれた。ここで前の画面に戻る」
竹宮はそう言ってスクリーンを先ほどの資料の画面に戻した。
「映像を見て分かった者もいたと思うが、瑠垣 マオは夢獣化の事を問われた際に、創造した左腕では武器を持つ事は出来ないと答えている。だが、実際には武器を持つ事は可能だった。それにこの写真を見てもらいたい」
竹宮は画面を切り替えた。
「なんだあれは?」
「黒い輪っか?」
マオの左肩付近に出現したparadoxを捉えた写真が写し出され、場内が騒然とする。
「瑠垣 マオは、この黒いリングを出現させる際にparadoxシステムと発している事が唇の動きから読み取れた」
竹宮は淡々と話した。
「副総館長! これは明らかな規則違反です!」
1人のオペレーターが立ち上がった。
「そうです!」
「これを野放しにするのはおかしいですよ!」
「噂によれば瑠垣はランクSを一体を持ち帰り武器にするとか」
この発言を皮切りに場内が物々しい雰囲気になる。
「虚偽発言と事実の隠蔽。これはたとえ16歳であっても許される事ではない! 瑠垣マオは我々にとって危険な存在だ!!」
竹宮は立ち上がる。
「ここで1つ君たちに提案しよう」
竹宮はニヤリと笑った。
「夢図書館でのオペレーターの地位を私と一緒に変えてみないか?」
「…………」
竹宮の言葉に場内が沈黙する。
「君たちはどれだけ、地道な努力をしても、最後は司書に手柄を横取りされるだけの生活で満足しているか?」
「どれだけ頑張っても、民主から賞賛され報われるのはいつも司書。そんな現実で満足か?」
「どれだけ、成果を重ねても総館長になれないような不平等な制度で満足か?」
竹宮は煽るように言葉を重ねる。
「!!!!」
場内にいるオペレーターたちの目の色が変わり、表情は不満の色で染まる。
「相川 築は瑠垣 マオを特別筆頭司書長に任命した」
竹宮は低い声で言った。
「!!!!」
場内のオペレーターたちは全員、同じ思考に辿り着いた。
「もし、相川 築が失脚すれば誰が総館長になると思う? それは私だ。つまりオペレーター出身の構成員として初めて総館長になる。もし、そうなれば君たちの処遇は間違いなく改善される。そうとは思わないか?」
竹宮は不気味に笑った。
「…………これで俺たちも!」
「早く、瑠垣に尋問を!」
場内は騒々しくなる。
「待て、現状ランクSと戦える人間は瑠垣 マオただ1人だ。まだ利用価値がある。瑠垣 マオを堕とすのは、道化の楽園との戦いが終わった後でも遅くはない。それに、まだ足りない。相川 築を確実に仕留めるには、瑠垣 マオの存在を完全な悪にしなければいけない。そこでだ、瑠垣 マオの連れ帰ったランクSのエルを監視してもらう、奴はエルを武器にすると言っているが、所詮は夢獣、人間とあい入れるはずがない。必ず怪しい行動を取るはずだ。それを掴めれば、瑠垣 マオは夢獣を利用し人類を脅かす存在であると、世間に公表できる。そして今の資料や映像を証拠として提出する。そうなれば相川 築に任命責任が発生する。更に幸いにも相川 築はランクSの存在を公表していない、つまり隠蔽しているのだ。我々はランクSの事を公表し“正しい情報を世界に提供したと"世論を味方に付け確実に失脚させる事ができる。些細な事でも構わない、エルの不穏な動きを暴き出せ!」
「おおお!」
オペレーターたちは団結するように雄叫びを上げた。
「タイムリミットは瑠垣 マオが道化の楽園を全滅させるまで。以上だ、解散!」
竹宮は地下の会議室を後にした。
「しかし、いいんですか? いきなりあんな大人数を動かしても? 総館長にバレません?」
副総館長室の中で竹宮の机の前に立つ戸田は軽い口調で質問した。
「かまわん。相川築は、既に私の計画に勘付いている」
椅子に踏ん反り返る竹宮はつまらなそうに爪切りで左手の爪を切る。
「へ?」
戸田はきょとんとする。
「世界中に拠点を置く夢図書館のトップに立つ程の男だ。私程度の考えならお見通しだろ。まったく何処までも尺な奴だ」
竹宮は右手の爪を切り始めた。
「総館長にバレているなら計画は、それってもう失敗じゃないですか!?」
戸田は慌てふためく。
「いや、失敗はしないよ」
「すみません言っている意味がよくわからないですが……」
冷静に話す竹宮に戸田は戸惑う。
「相川築ほど自己犠牲という言葉を体現した男はいない。しかも相川築は今、最も重要な事を理解している。それは、世間を過度に混乱させない事だ。道化の楽園やランクSの脅威が露点されれば、世界は混乱しその混乱は、思わぬ事故を引き起こす。そんなリスクを相川築は最も嫌う。だから、ランクSや道化の楽園の存在を世間に隠したまま、これらを駆逐したいと考えており、瑠垣 マオの力はそれを可能とするだろう。なにせヤツが狭間に入る時に宣言した目標は『ランクSから、みんなを守れる存在になる』だった。一度入った狭間から外に出るには、宣言した目標をクリアする事が絶対条件だ。そして瑠垣 マオは戻ってきた。つまりそれは、ヤツがランクS以上の存在となった事の証明になる。それと、私が全ての戦いが終わってから計画を実行に移す事までお見通しの相川築は、私を止める事ができない。理由は今、私を止めれば夢図書館内に亀裂が入り道化の楽園との戦いに集中する事が出来なくなるからだ。逆に戦いが終わった後、ランクSの事が世界に露点しても、全責任を負い総館長を辞職するだけだ。相川築はどう転んでも、自分1人が犠牲になろうとしている。ふっ既に相川築は詰んでいる」
竹宮は爪切りを机の1番上の引き出しにしまった。
「なるほど! だから、竹宮さんと総館長はそんなに落ち着いているんですね」
戸田は納得した様子で両手を叩く。
「そうだ、私たちはこうしてゆっくり待てばいい。楽な仕事だ」
竹宮は立ち上がり戸田に背を向けた。
「いつまでも、あの若造の好きにはさせん」
竹宮は呟いた。
「もぉ〜」
薄暗い空間の中で、サイズが合わずだぼだぼの白衣を着たフルが頬を膨らませていた。
「悪かったて。俺も瑠垣 マオとタメ張りたくなったんだって」
フルの2倍以上の身長のオールはめんどくさそうに右手で頭を掻く。
「エルと2人で戦えば、瑠垣 マオを倒せたのに」
フルは羊皮紙に書かれた計算式をオールに見せた。
「そんな細かい字を見せられても、俺にゃわからん」
オールは反省した様子もなく、羊皮紙には見向きもしなかった。
「たしかに、今回の失敗の責任はオールにある。1年前から準備していた計画だったのに」
オールとフルの後方からレイは明るい表情で歩いて来る。
「だよね! 僕の計算は間違っていない。オールが言う事聞かずに勝手な事するから」
フルは胸を張る。
「フルの言う通りだよ。だから、次は任せたよ」
フルの真正面まで接近したレイは微笑む。
「え?」
フルの動きが止まる。
「フルの作戦は完璧だよ。だから、私は思ったんだ。次の作戦はフルに任せようって。君の特性を活かせば、きっと瑠垣 マオからparadoxを奪取する事が出来るはずだ」
レイはフルの右肩を右手で持った。
「ほんとに、いいの!?」
フルの瞳が輝く。
「ああ、やり方はフルに任せるよ。必要なモノがあれば私が用意するから」
レイは満面の笑みで話す。
「うん! 任せて!!」
フルは白衣の胸ポケットから万年筆を取り出し、計画を始めた。
「じゃあ、行こうか」
レイはオールに話し掛ける。
「ああ」
レイとオールはフルのいる空間を後にした。
「たく、もっとマシな方法はなかったのか?」
「ごめんごめん。フルをやる気にさせるのは、今の方法が1番なんだ」
演技とはいえ、咎められた事をオールは快く思っていなかった。
「それにしても、頭がいいのに意外と単純なヤツだな」
オールは何気ない口調で話す。
「ああ、フルもまだ子供だからね。褒められると嬉しいんだろう」
レイの声のトーンが下がった。
「たく、お前もいい性格してるぜ。成功確率が0%の作戦を与えるなんてな。本当にフルも用済みか?」
オールはふざけた口調で話す。
「未知を模索する。探求者のフルにとって生きている意味その物だからあの子はもう夢を叶えているんだ、だったら思い残す事はないよね? それに、フルの完全演算では、paradoxについて計算する事が出来ない事が分かったからね」
レイはひどく冷たい口調で話す。
「そうだな。戦闘力は大人の人間以下、頭だけが取り柄のヤツが頭使えないならそりゃ荷物だわな。だが、エルが裏切った手前、俺たちの戦力をこれ以上下げるのはなぁ」
オールは退屈そうに伸びをした。
「正直、エルが人間側に付くとは思わなかったけど、私たちの記憶を失ったエルでは脅威にすらならないからね。しかし、仲間の位置を知る為に、オールの能力を使って私と他のランクSの脳の一部分リンクさせておいた事が、こんな形で役に立つとは」
レイは冷たい笑みを浮かべた。
「だが、実際問題時間が無いんだろう?」
オールは真面目な顔になる。
「そうだね。だけど、私の新しい計画は既に動いている。準備に少し時間も掛かるから、その間はフルで。それぐらいの役には立つと思うから」
レイは目を細めた。
「確認の為、聞いておく」
オールは立ち止まった。
「……」
レイはオールに背を向けたまま立ち止まった。
「今度こそ、お前の計画が成功したら。俺と全力で殺し合えレイ。俺はその為だけに仲間になったからな」
オールは笑っていた。
「ああ、約束だからね。オール、君を完璧に破壊してあげるよ」
レイは後方に振り向くと、オールに向かって消え入りそうな笑顔で答えた。




