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銃とマリオネット

「ご馳走さま。美味しかったよ」

 マオは空になった弁当箱をユウキに手渡した。

「うん。お粗末様です」

 ユウキは満面の笑みで弁当箱を受け取る。

「…………」

 ユウキは、ふと自分の膝の上に置いたカバンに視線を落とす。

「ユウキどうしたの?」

 ユウキが何かに悩んでいると思ったマオは、心配そうに話す。

「1つお願いがあるの」

 ユウキはマオの顔を見て、落ち着いた声で話す。

「? 俺に出来ることなら」

 自分の目をしっかりと見据えるユウキに、マオの表情は真剣さを帯びる。

「私との試合、私を殺すつもりで戦ってほしいの」

 ユウキはすがるような目で懇願こんがんした。

「え?」

 マオは、驚きから目を細める。

「私、マオの強さが怖い。狭間から出てきたマオがエルと戦った時。強すぎる力を持ったマオが、物凄く遠くに感じたの。パパが言ってたでしょ。この先、ランクSが率いる夢獣ピエロの集団と人間との戦争が起こるって。でも、ランクSと対等に戦える人間はマオしかしない。マオしかいないの! マオはきっと、この先も私たちを守る為に無理をする。その分だけマオは強くなり続けなければいけない……マオが強くなればなるほど、どこか遠くへ行ってしまうんじゃないかって。もうマオに会えなくなるんじゃないかって。そんな気がして……すごく怖いの。私は、マオの傍にいたい! だから!!」

 ユウキの目に涙が溢れ出す。

「ユウキ!!」

「!?」

 マオは右手でユウキの左肩を掴んだ。

「俺は、どこに行かないよ。俺は、ずっとユウキの傍にいるよ」

 マオはユウキの頭に優しく手を置いた。

「うん……マオお願い………私を置いてかないで……」

 ユウキは下を向いて一筋の涙を流した。

「ああ、ずっと一緒だ」

 マオは、ユウキの頭を優しく抱き寄せた。



『さぁ!! お昼の休憩も終わり、トーナメント戦も準決勝と決勝を残すのみとなりました。改めて準決勝の組み合わせを確認します。準決勝第1試合は、2年Aクラス五木 晋二と2年Aクラス吉村 猛。第2試合は2年Aクラス相川 ユウキと2年Aクラス瑠垣 マオです。解説の岸田司書長、試合のポイントはどこになると思いますか?』

 星野の弾むように明るい声がスピーカー越しに響く。

『あ〜ぁ。そうだな、まず第1試合の五木と吉村だが、互いに鋭物を用いた近接戦闘を得意としている。単純に考えると実戦経験のある五木に分があるが、今日の吉村を見ていると、どこか余裕があるように見える。それが何なのかは分からんが。もしかすると茂武との試合のように番狂わせもあるかもしれないな。第2試合は、相川がどこまで瑠垣の瞬間創造ソニックに、ついていけるかがポイントだな』

 岸田はやる気のない声で答えた。


『岸田司書長、ありがとうございます。っと、ここで五木 晋二と吉村 猛の両者がゲートから姿を見せました』

 星野の実況と同時に会場の視線は、ゲートからフィールドに向かう猛と晋二に集中した。


「…………」

(俺は今日、お前を倒して司書になる)

 フィールド中央で猛は向かい合った晋二を睨む。

「いい目だね。これは、俺も最初から本気でいかないと」

 晋二は両手に短剣を創造した。


『おおっと! 五木 晋二が遂に両手に武器を創造しました』

 この日初めて両手に短剣を創造した晋二を見て、星野のテンションが上がる。


「やっと、本気の晋二と戦える。ありがとう、俺を認めてくれて」

 猛は右手にサバイバルナイフを創造した。


「………………」

 武器を創造し向かい合った両者の周囲は、時間が止まったかのような静寂に包まれる。

「はじめ!」

 山井が試合開始の合図をする。


「おおおお!!!!」

 猛は開幕早々、電光石火の如く晋二に突撃する。

「!!」

 晋二は、滑らかな動きで左方向に体を動かし、猛の突き出したサバイバルナイフを避ける。

「はあっ!!」

 晋二は左手の短剣を真横に振り抜く。

「……」

 猛は這い蹲るように低い姿勢を取り、晋二の攻撃をかわすと低い姿勢を維持したまま、晋二の右膝を狙ってサバイバルナイフを構える。

「!?」

 晋二は後方へ距離を取り、ギリギリのところで猛の攻撃を躱す。

「まだだ!!」

 猛は左手を軸にして晋二の両足首を狙い回転蹴りを繰り出す。

「くっ!」

 晋二はバク転して避ける。


「まさか、あれはCQC!?」

 岸田は驚愕の表情を浮かべる。

「え? CQC? それは何ですか?」

 星野の頭の中にハテナマークが浮かび上がる。

「ああ。500年以上前に生まれた、敵と接触もしくは接触寸前の極めて近い距離に接近した状況を想定した軍隊式近接格闘術。司書の対人戦闘は敵の無力化を目的とし、武器の破壊を最優先としている為、ある程度距離を取った状態で行う。だが、CQCは人間を殺す事を目的としている為、いかに敵に接近するかを重視している。いわば司書の戦闘とは真逆に位置している。そうか、これが吉村の余裕の正体って事か」

 岸田は前のめりで猛と晋二の戦闘を見た。


(距離が短い分、攻撃のテンポが早い。だけど、これぐらいなら)

 晋二は両手の短剣をリズムよく交互に繰り出す。

(さすが晋二だな、もう慣れ始めてる。予定より少し早いがアレをやるか)

 猛は晋二の両腕を左右の手首で止めた。

「……」

「……」

 動きが止まった猛と晋二の口角が上がる。


「……」

 晋二は後方に距離を取り両手を胸の前でクロスさせた。

「させるか!」

 猛は晋二との距離を詰める。

「おお!」

 晋二は接近する猛に対し、クロスさせた両腕を全力で振り抜く。

「がはぁ!!」

 猛は後方へ飛ばされる。


「今度は俺の番だ!!」

 晋二は、間髪入れず右手の短剣で猛の首を突きにかかる。

「!?」

 猛は右方向へ飛び込んだ。

「……」

 攻撃を躱された晋二は体制を立て直し、すぐさま左手の短剣で猛に斬りかかる。

「!?」

 立ち上がった猛は、晋二の攻撃が胸元をかすめる。


「はぁはぁはぁ」

(もう少し)

 猛は息切れをして晋二を見る。

「……」

(猛、本当に強くなったな。でも、これで終わらせる)

 晋二は猛に突進する。

「!!」

(できた!)

 猛は左腕を晋二に向かって真っ直ぐ伸ばした。


「!?!?」

 銃声と共に晋二の動きが止まる。


「ちっ。外したか」

 コルトガバメントを左手に創造した猛は、悔しそうに銃弾が通った跡を見る。


「おい……あれって、まさか」

「銃だよな」

 会場内は突然の事に静まり返る。


「マオ! あれ」

 ユウキは、猛の左手にあるコルトガバメントを指差した。

「猛、たった4ヶ月で」

 マオは開いた口が塞がらなかった。


『吉村 猛。なんと、なんと!! 銃の単独創造を成功させました!! 夢図書館高等専門学校の歴史上トーナメント戦で銃の単独創造を成功させたのは、当時3年生だった岸田司書長ただ1人です。それを、2年生にして成功させました!!』

 興奮した星野は大声で実況した。

「たく、あいつ。やりやがったなぁ!!」

 岸田は嬉しそうな顔で笑った。


「おおおお!」

 観客席から歓声が上がる。


「びっくりしたよ。まさか、銃なんて」

 晋二は額の汗を拭った。

「俺はもう、守られるだけの奴じゃない。今度は晋二たちの力になるんだ! もう、あんな思いはしたくない」

 猛はコルトガバメントを構えて走り出し、1発の弾を放つ。

(そうか、猛もあの日から進みだそうと必死だったんだな)

 晋二は銃口から逃げるように、左方向へ鋭いターンをした。

「!」

 晋二の顔の真横を弾が通過する。

「逃すか!」

 猛は立て続けに3発の弾を撃つ。

「……」

 晋二は、まるでどこを弾が通過するか分かっていたかのように、簡単に3発の弾を避ける。

「なっ!?」

 焦った猛は2発の弾を放つ。

「……」

(悪いな猛。俺たち司書は銃を持った敵を想定し、岸田司書長と実戦形式の訓練をいている。熟練されたテクニックを持つ岸田司書長に比べ、猛の銃はあまりにも未熟。どこを狙ってるか仕草や目線で分かってしまうんだ)

 晋二は立ち止まった。

「くそ」

 猛の放った2発の弾は晋二の両隣を通過した。


「!!」

 晋二は猛との距離を一気に縮め短剣を顔の前に突き付ける。

「くっ」

 猛はコルトガバメントを晋二の顔の前に構える。

「さっきので7発撃ったから、もうその銃に弾は入っていないよね」

 晋二は冷静に話した。

「くそ……俺の負けだ」

 猛はコルトガバメントを持つ左腕を力なく下ろした。


「勝者、五木 晋二」

 山井が結果を告げる。


「頑張ったな!!」

「吉村すごいぞ!!」

 観客席から暖かい拍手が送られる。


「危なかった。ありがとう、猛」

 晋二は猛に右手を差し出す。

「やっぱ、強いな晋二。俺の方こそありがとう」

 猛は晋二と固い握手を交わす。


『稀に見ぬ激戦を制し、決勝へ駒を進めたのは五木 晋二です!!』

 星野は興奮冷めやらぬ様子だった。

(あの2人にあったものは経験の差か。もし、吉村に実戦経験があれば最初の1発目で五木を捉え勝負はついていたか……面白いな)

 岸田は意味深に笑った。



「お疲れ」

 控え室でマオは猛を出迎える。

「ありがと、負けちまった」

 猛は苦笑いした。

「でも、すごいよ。銃の単独創造なんて。いつ覚えたの?」

「マオが夢図書館本部に行ったあの日から、ずっと練習してて夏休みにようやく完成したぐらい。やっぱ慣れない武器じゃ晋二に歯が立たなかった。それよりも次、ユウキとだろ。頑張れよ」

 猛はマオの背中を軽く叩く。

「ああ」

 マオはフィールドに向かって歩き出す。



「五木、お疲れ様」

 ユウキは控え室で晋二を出迎える。

「ありがとう」

 晋二の表情は暗かった。

「? どうしたの」

 ユウキは小首を傾げる。

「この試合、本当なら俺は負けていた。猛があと少し銃の扱いに慣れていたら、俺が完全に油断していた最初の1発目は確実に当たっていた。今でも震えが止まらないよ」

 晋二の膝は小刻みに震えていた。

「猛もあの日と必死に向き合ってる。立ち止まっていたら、すぐに追い越されちゃうよ」

 ユウキは真剣な表情で話した。

「!? そうだよね。あはは……ユウキには敵わないや」

 晋二は乾いた笑いをした。

「もう時間だから、行くね」

 ユウキはフィールドに向かった。

「頑張ってね」

「うん」

 晋二の言葉にユウキは笑顔で頷く。


「……」

(そうだよな。俺はいつまでも、あの時の事を引きずって。前に進めていない……)

 晋二は誰もいない控え室で立ち尽くす。



『さぁ! 準決勝2試合目! 昨日の演劇中に電撃告白をしてカップルになった2人の対決です』

「……」

「……」

 星野の実況でフィールドの中央にいるマオとユウキは、顔を真っ赤にして俯く。


「あの、試合の準備をしてください」

 山井は申し訳なさそうに話す。

「!? すみません」

 マオは慌てて正面を向き直した。

「!? はい」

 ユウキも慌てた様子で頷く。

「あれ? 瑠垣君は分かるとして。相川さん。武器の創造は?」

 山井は何も創造していないユウキの顔を覗き込む。

「私もこれでいいです」

 ユウキは、いたって真剣な表情で答える。

「わかりました」

 ユウキの迷いのない返事に、山井は一歩下がった。


「あれ? 相川さんが武器を創造しませんね。どうしたのでしょうか?」

 星野は岸田に問い掛ける。

「わからん。相川が瞬間創造ソニックを使う瑠垣に、創造スピードで勝つ事は不可能だ。何か考えがあっての事だと思うが、読めんな」

 岸田はユウキを見て難色を示していた。


「ユウキ。本当にいいんだね」

 マオはユウキの覚悟を確かめるように、厳しい表情で問い掛けた。

「うん」

 ユウキは膝を軽く曲げた。

「わかった」

 マオから表情が消え、右手を強く握った。


「はじめ!」

 山井は試合開始の合図を告げる。


「はあ!!」

 ユウキは右手を前に突き出し、自身を結晶で出来たドームで覆った。


『おおっと! 相川 ユウキ、いきなりドームで自分を覆い隠した! ですが、相川 ユウキの創造スピードは5秒台。試合開始直後にドームを創造する事は不可能なはずですが』

『試合前の防具の創造は禁止されているからな。もともと、ドームを創造するつもりで準備していたんだろ。他の学生や司書相手なら絶対的な防御になるが。今、相川の目の前にいるのは、具現タイプで圧縮率が90%を超える瑠垣だ。数秒の時間稼ぎにしかならない』

 星野と岸田の実況が会場内に響く。


瞬間創造ソニック!!」

 マオは右手にロングブレードを創造し、ユウキのドーム目掛けて力一杯振り下ろした。

「さすがに硬いな」

 ユウキのドームは、一筋のキズが入っただけでビクともしていなかった。

「だったら」

 マオは日本刀で次々とドームを斬りつける。

「……」

 マオの猛攻でドームに亀裂が入っても、ユウキの表情は変わらなかった。

(ユウキ……一体なにをしたいんだ? 何が狙いなんだ? このドームが壊れたらユウキに勝ち目はなくなるのに)

 攻撃をしながらマオは目を細めた。


(私は、ずっと貴女に憧れてきた。誰よりも強くて誰よりも優しかった貴女は、私の全てだった。だけど、私にも守りたい人ができたの、愛おしい人ができたの。私はこの人を失いたくない! この人と一緒に歩きたい! だから力を貸して、麗花!!)

 ユウキのドームは粉々に崩れ去る。

「……」

 ユウキのドームが崩れたのと同時に、マオのロングブレードも跡形も無く粉砕した。


瞬間創造ソニック

 マオは右手に日本刀を創造した。

結晶の操り人形 (マリオネット)!」

 そう言ったユウキの両隣には、結晶で出来たユウキの姿を模した人形が2体が創造され、人形の首輪から伸びる細長い糸は、ユウキの両手の小指に創造された指輪のような物に繋がれていた。


結晶の操り人形 (マリオネット)だと!?」

 岸田は、見た事もないような慌てようで立ち上がった。

「え? 結晶の操り人形 (マリオネット)ってまさか、あの?」

 星野も驚愕の表情を浮かべた。

「ああ。かつて五島 麗花が編み出した。結晶タイプの戦闘用武器だ」

 岸田はゆっくりと椅子に座り直した。


結晶の操り人形 (マリオネット)?」

 マオは興味深そうに、ユウキの両隣に立っている結晶の操り人形 (マリオネット)を見た。

「マオ、いくよ」

 ユウキは両手をマオに向かって振った。

「!?」

(人形が動いた!?)

 ランスを持った結晶の操り人形 (マリオネット)と、槍を持った結晶の操り人形 (マリオネット)はマオを狙い動き出した。

「わぁ!?」

 2体の結晶の操り人形 (マリオネット)は、驚異的な加速をしてマオに斬りかかる。

「くっ」

 マオは後方に飛んだ。

(なんて力だ、床に穴が)

 結晶の操り人形 (マリオネット)のランスと槍は空を切り、攻撃が直撃した床には小さなクレーターができていた。

「……」

 マオは、ランスを持った結晶の操り人形 (マリオネット)に向かって日本刀を振り下ろす。

(このスピードに反応した!?)

 マオの日本刀はランスによって止められた。

「!?」

 槍を持った結晶の操り人形 (マリオネット)は、マオを槍で突こうと接近し、マオは日本刀を下ろし逃げるようにして避ける。


「なんだあの人形!?」

「あの瑠垣が押されてる!?」

 場内はユウキの結晶の操り人形 (マリオネット)に湧く。


(結晶タイプはその特性から防御に回る事が多い。だが、結晶の操り人形 (マリオネット)はそのイメージを覆した。夢粉ゆめエネルギーを効率よく使ったスピードとパワーそして、遠隔操作で動く結晶の操り人形 (マリオネット)には死角ができにくい。だが結晶の操り人形 (マリオネット)は、結晶タイプの人間が最も苦手とする細かい整形をする為の創造技術と、結晶の操り人形 (マリオネット)を操り続ける強靭な集中力が必要になる。麗花にしか扱える者は現れないと言われていたが。相川のヤツいつのまに)

 岸田は右手で顎を触った。


「くっ」

(離れた位置から戦況を見る事によって、ユウキは俺の動きを捉えやすいのか)

 マオは、2体の結晶の操り人形 (マリオネット)が振り下ろしたランスと槍を日本刀で同時に受け止める。

「ぐっ!!」

 マオは力負けし、後方に5mほど吹き飛ばされる。


(夢獣化ピエロかしていないとはいえ、私の力がマオに通用している。私も戦えるんだ!!)

 ユウキは力強い目で、自身の操る結晶の操り人形 (マリオネット)を見る。

「くっっ。いてて」

 マオはヒビだらけになった日本刀を捨て、右手で頭を抑えながら立ち上がる。

「まさか、結晶タイプにこんな創造ができるなんて。俺は勉強不足だな」

 マオは先ほどまでの無表情を崩し、優しい表情を浮かべていた。

「私、考えたの。どうやったらマオと一緒に戦えるかを。私も猛と同じ、守られるだけじゃ嫌なの!!」

 ユウキは必死に思いを伝えた。

「うん。ありがとう! 本当に嬉しいよ。でもね、ユウキが俺の事を想っているのと同じぐらい、俺もユウキの事を想ってる。だから、立ち止まるわけにはいかないんだ」

 マオは力を込めた目でユウキを見る。

「うん、分かってる。マオは決めた事を絶対に曲げないって。だから私、マオの後を必死について行くから。マオがどこに行っても、私ついて行くから!!」

 ユウキはそう言ったあと、両手を振って結晶の操り人形 (マリオネット)をマオに向かって動かした。


(こんなに俺の事を想ってくれる恋人が出来て、俺は世界一の幸せ者だよ)

 マオは手ぶらのまま2体の結晶の操り人形 (マリオネット)に向かって走った。

瞬間創造ソニック!!」

 マオは右手に結晶で出来たロングブレードを創造し、結晶の操り人形 (マリオネット)を2体同時に切り裂いた。


『具現タイプの瑠垣 マオが、結晶タイプの創造を!?』

 星野は声を荒げる。

『あ〜ぁ。知らなかったのか、瑠垣は世界で唯一具現タイプと結晶タイプの創造が可能なダブルホルダーなんだ』

 岸田は面倒くさそうに答える。


「おい、嘘だろ」

「どうなってんだ、今年の2年」

 場内は星野と岸田の実況で騒然とする。


「……」

「……」

 2体の結晶の操り人形 (マリオネット)が砕け散る中、マオは結晶で出来たロングブレードを捨てユウキを抱き締めていた。

「ありがとう……今はこれしか言葉が思いつかない」

 マオは目に薄っすらと涙を浮かべていた。

「うん。マオはいつも無理をしてしまうから」

 ユウキはマオの胸に顔を押し付けた。


「あの〜ぉ。お2人さん」

 赤面した山井はマオとユウキに話し掛ける。

「!?」

 マオとユウキは、電光石火のように勢いよく離れた。

「すみません。私の負けです」

 ユウキは赤い顔のまま笑顔で返す。

「勝者、瑠垣 マオ!」

 山井は大きな声で結果を告げる。


『ここで決着!! 勝者は瑠垣 マオ! これで決勝戦のカードが出揃いました。決勝戦は五木 晋二と瑠垣 マオ。ここで15分間の休憩を挟み14時20分に開始します』

 星野の声が会場に響いた。

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