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paradox (パラドックス)  作者: ナカヤ ダイト
voice編
19/55

ジュリビア帝国 3

いつもありがとうございます!


やっと更新できました。

今回も次回の話もバトル展開が続きます。

「じゃあ作戦内容について説明するよ」

 戸田は右手にマーカーを持ち後方のホワイトボードの方へ振り向く。

「まず作戦は明日の午前8時に開始する。自衛軍の協力で皇都近隣の一般市民の避難は明日の午前中7時には完了する」

 戸田は作戦日時をホワイトボードへ記入する。

「かなり急なんですね」

 太郎が驚いた様子で戸田を見る。

「すまないね。でも、それだけこの国には時間が無いんだ」

 戸田は太郎たちの方を向いて申し訳なさそうな顔をする。


「失礼します。軍隊長」

 作戦会議室の扉が開き軍服姿の体格のいい男が入ってくる。

「どうした? ルイス」

 アントスはルイスの方を見る。

「皇帝から勅命が」

 ルイスはアントスに一枚の書類を見せる。

「これは ……」

 書類を見たアントスは表情を暗くする。

「どうしましたか?」

「それが、司書の捜索命令が」

 アントスは戸田に書類を見せる。

「……いや、使えますよコレ」

「はあ?」

 アントスは戸田の言葉を理解できていない様子だ。


「そこだけで話を進めないでくださいよ」

 太郎が不満そうに口を開く。

「ごめんごめん、それじゃまず、作戦についての話しを進めるよ」

 戸田はホワイトボードに絵を描き始める。

「それはジュリビア城ですか?」

「正解」

 マオの質問に戸田は絵を描きながら答える。

「よし、こんなものかな!」

 戸田は絵を描き終えるとホワイトボードからマオたちの方へ振り向く。

「まずは、ジュリビア城の特徴から説明するよ。城の周囲は敵の侵入を困難にさせる為、深さ1.5mの水路が850mに渡って作られている、更に高さ7mの城を囲む円状の壁に遮られ城内に入るには壁に3箇所ある門のいずれかを通らなければいけない、しかも妨害電波を出しているアンテナが城内のどこにあるかが分からないんだ」

 戸田は描いた絵を指差しながら説明する。

「うわぁ、侵入もアンテナまで辿り着くのも困難ですね」

 太郎があからさまに嫌そうな顔をする。

「だけどチャンスはある。城周囲の水路は水の透明度を保つ為、定期的に水の入れ替えをしている」

「それは」

 司が目を見開く。

「この水路は水を抜く事ができる」

 戸田がマーカーを軽く振る。

「その水路を管理しているのは我々自衛軍だ」

 アントスが口を開く。

「明日の作戦は水路の水を抜き、水路に水を供給するポンプを破壊して水が再び入ってこないようにする。空になった水路から城内に侵入しアンテナを捜索し破壊する」

 戸田がホワイトボードを叩く。

「すみません。質問が」

 マオが左手を挙げる。

「どうぞ」

 戸田がマオを指す。

「その、まずそんな大きな水路の水を抜くには、かなりの時間がかかると思います。それから自衛軍が大きく動く事によって水を抜く前に異変を帝国側に察知され夢獣ピエロを使って対策をされると思いますが」

 マオが平然と質問する。

「まず水を抜く時間の事だけど、ボタン操作で水路の底をズラして1分ほどで水を抜く事ができるとの事だ、それから自衛軍が大きく動いても怪しまれないよ。理由はこれ」

 戸田は先ほどルイスが持ってきた書類をマオたちに見せる。

「これって俺たちの捜索命令」

 書類を覗き込んだ司が口を開く。

「そう、既に敵は僕たちが生き残っている事を知っている。現在、僕たちの大規模な捜索命令が出ているから自衛軍が派手に動き回っても帝国側は全く怪しまないって訳、それを利用して自衛軍に扮した鈴木班が水路の水が抜けて隙だらけになった城内に潜入」

「なるほど、もし敵に発見されても城の近くで危険なランクBの崩壊は使えない敵の戦力はランクCだけですね」

 マオは納得したように頷く。


「……わたしも作戦に参加する」

 ユウキが壁を伝うようにして作戦会議室に入る。

「ユウキ!? まだ寝ていないと」

 マオは足元がおぼつかないユウキの肩を支える。

「……もう大丈夫」

 ユウキは弱々しい声で答える。

「班長命令だ、相川は待機だ」

「……ですが」

 強い口調の太郎に不満そうなユウキ。

「そんな状態のヤツを連れていけないし、万が一作戦が失敗した時に本部へ情報を伝える人間が必要だ」

「……はい」

 ユウキは太郎の命令に頷く。

「ユウキ部屋に戻ろう。今は休むんだ」

「……うん」

 マオはユウキに肩を貸して作戦会議室を後にする。



 ジュリビア城潜入作戦 当日


 避難していくジュリビア帝国の国民の衣類はツギハギだらけで靴を履いている者は数人しかいない。

「これから私たちはどうなっちゃうの?」

 50代ほどの女性が俯く。

「もう、こんな国は嫌だよ」

 80代の男性はトボトボと歩く。

「お腹空いたよ」

 7才ほどの男の子は目に涙を浮かべている。


 皇都というのに華やかしさは全くなく石畳の街の建物はヒビ割れや色あせが酷く、痩せ細った土壌で栽培された野菜は不恰好でシワが目立っていた。


「ひどいね」

 自衛軍軍服姿のマオは避難する人々の手首と足首に赤く付いた枷の跡を見て若干ではあるものの怒りの表情を見せる。

「俺たちが終わらせるんだ」

 同じく軍服姿の晋二は右手を握り締める。

「そろそろ、時間だ」

 軍用ジープを運転している司と隣に座る太郎も軍服を着ていた。



 同刻 ジュリビア城内

 

「そろそろ時間ですね」

 五つ星ホテルのスイートルームのような城内の客室で青い執事服姿のシンは白い手袋を両手につける。

「お客様。ご朝食はいかが致しましょうか?」

 ノックと共に若い女性の声がする。

「お気遣いありがとうございます」

 笑みを浮かべたシンが扉を開けると若いメイドが立っていた。

「では、さようなら」

 笑顔のままでシンは冷たい声を出す。

「え?」

 シンの右手はメイドの腹部を貫き背中まで貫通した、メイドは現状を全く理解していないような反応をした。

「うぅぐ」

 メイドは床に血の池を作りその場に倒れる。

「さて」

 白い手袋を血で真っ赤にしたシンは薄っすらと冷たい笑みを浮かべた。


「大臣、失礼します」

 城内のメイドや執事、全30人を皆殺しにしたシンはマルスの側近が朝食を摂る贅を尽くしたような食堂へ姿をあらわす。

「おお、シン殿ではありませんか」

 丸々と太った洋風の貴族のような格好をした男が席を立ちシンを迎える。

「その汚れは?」

 太った男は返り血で汚れているシンに疑問を持つ。

「あなた方も用済みですね」

 シンは右手を真横に振り抜くと男の首は食堂の床に落ち、首の無くなった体は傷口から血を吹き出して倒れた。

「きゃーーーーーぁ」

 貴婦人のような格好の女性が悲鳴をあげる。

「貴様!? どういうつもりだ?」

 座っていた19人の側近たちが立ち上がる。

「はぁ」

 シンは退屈そうにため息をついて血まみれの右手を顔の付近まで持ってくる。


「着替えが必要ですね」

 開いたままの扉の前に立っているシンの後方には無残に切り裂かれた側近たちの死体が無造作に積み重ねられていた。



 鈴木班はジュリビア城を囲む水路の前に到着した。


 水路の先には4本の塔が連なった巨大な城がそびえ立っていた。

「作戦開始まで、2分」

 司は左手のAMCを確認し両手にトンファーを創造する。

「覚悟はいいか?」

 太郎は巨大な斧を創造し右肩に乗せる。

「はい」

 両手に短剣を創造した晋二が城を睨む。

「問題ありません」

 マオは軍服の袖を七部袖の高さまでたくし上げる。


「はじまったぞ!!」

 司が口を開く。

 8時丁度、ゴゴゴと大きな音を立てて地響きがすると水路の水かさが見る間に下がっていく。

「作戦通り途中から3つの班に分かれ、3つの門からそれぞれ侵入しアンテナを捜索して破壊。敵は夢獣ピエロをコントロールできるから絶対に気を抜くな!」


 正面の南門から潜入する太郎とマオのA班・西門は司のB班・東門は晋二のC班の3班に分かれ、それぞれに自衛軍員を50人、計154人が太郎の合図と共に城を目指し走り出す。



「どうした!! なんだこの音は?」

 皇室の机で優雅に朝食後のコーヒーを飲んでいたマルスが水路の水が抜ける音に驚き立ち上がる。

「くそ」

 マルスは不機嫌そうに机の上の受話器を取る。

「………」

 マルスが取った受話器からはノイズしか聞こえなかった。

「おい、何をやっている!! 出てこい役立たずども!!」

 マルスが側近を呼び出そうと叫ぶが返事はなく城内は異様な静けさだった。


「皇帝閣下、大変です」

 綺麗な青い執事服姿のシンが皇室に入る。

「シン殿! 一体、城で何が起こった?」

 慌てた様子のマルスはシンの近くまで走ってきた。

「司書と結託した自衛軍のクーデターです。現在周辺水路から水を抜き、メイドや大臣たちを殺害した模様で」

 シンは深刻そうな顔で話す。

「なんだと!!! あの自衛軍ゴミどもめーーーぇ!」

 マルスは顔を真っ赤にして激怒する。

「ですが、城内の自衛軍は私が始末しました」

 マオたちの狙いがマルスの殺害ではなくアンテナの破壊だという事を知っていいるシンは嘘をつく。

「ふん。私に楯突くのが悪い」

 マルスはニヤリと笑みを浮かべる。

「ですが司書たちは空になった水路から城内に侵入しようとしています」

「なら、少し早いが自衛軍ゴミども国民カスどもの粛正も司書を殺すついでに始めよう」

 マルスは受話器を取る。


「はいは〜ぃ! こちらDr.ジークでぇーす。皇帝閣下ぁ、やられちゃいましたねぇ」

 Dr.ジークは相変わらずふざけていた。

「黙れ」

 マルスは一蹴する。

「で? ご用件は?」

 Dr.ジークは軽い口調ながらも真面目に応答する。

「地下室に夢獣ピエロは何匹いる?」

「え〜っと。ランクCが1000体にランクBが4体ですねぇ」

 Dr.ジークは退屈そうに答える。

「手始めにランクCを全て空になった水路へ放て」

「あいあいさ〜」

 Dr.ジークは電話を切った。



「くそバレたか。もはや潜入作戦ではなくなるが迎撃するぞ」

 太郎は前方に出現したランクCの大群を見て叫ぶ。


 軍服を着ていた司書たち4人は軍服を脱ぎ捨て下に着ていた司書の制服姿になる。


(瞬間創造ソニック)

 前方に出たマオは両手にロングブレードを創造し前方から襲い掛かるチーターとプロングホーンを同時に切り裂く。

(剣が壊れてない?!)

 晋二たちはマオのロングブレードが夢獣ピエロ、ランクCに接触したにもかかわらず壊れていない事に驚く。

(あれ?)

 マオはACMで自分の圧縮率を確認する。

(圧縮率が50%!?)

 マオが右手にはめたACMを見て驚く。

「ボケッとするな!!」

 太郎が怒鳴る。

「すみません」

 マオは前方にから飛び掛かる2体のスプリングボックを同時に切り裂く。

(夢獣ピエロってこんなに軽かったか?)

 マオはいつもよりも軽い手応えに疑問を持つ。


(間違いない瑠垣の圧縮率が急激に上がっているな、それだけじゃない攻撃の威力も上がっているようにも見える。あの結晶タイプの創造が影響しているのか?)

 太郎は飛び掛かる狼の群れを蹴散らせながらマオの変化を気にしていた。

「さすがに数が多い」

 司は次々と溢れ出るランクCを睨んだ。



 ―――立花 司 創造スピード4.2秒 圧縮率75%―――


 

「援護頼む!」

 太郎が50m後方にいる自衛軍に命令を出す。

「イエッサ、援護射撃用意!!」 

 150人の自衛軍はライフルとハンドガンを構えてランクCに向けて次々と発砲する。

「おお! 数が減った減った!」

 視界が少し開け太郎が喜ぶ。

「あれ完全に違法創造だけどな」

 司が複雑な表情をした。

「味方になると心強いですね」

 晋二はジャッカルを倒しながら話す。

「このまま押し切ります!!」

 マオは1人だけ異次元のスピードでランクCを切り裂いていく。

(瑠垣あいつ、本当に一ヶ月ぐらい前まで学生だったのか? 1人だけ動きがおかしいぞ)

 司はマオの動きに圧倒される。

「あははは、すげ、なんだありゃ」

 太郎はマオを見て笑う事しかできなかった。

(さすがマオ! やっぱりマオの実力は)

 晋二はワクワクしながらマオを見ていた。

 1000体のランクCは30体にまで数を減らしていた。



「くそぉーーー」

 偵察用ドローンを飛ばしたマルスは皇室内の垂れ幕スクリーンに写し出された戦況を見て親指の爪を噛む。

「ランクBだ!! ランクBで一気にケリを付ける!!」

 マルスが受話器に手を伸ばそうとした瞬間。

「お待ち下さい」

 シンが大きな声を出した。

「なんだ!!」

 額に血管を浮かべ真っ赤な顔になったマルスが怒鳴る。

「ここでランクBを使用すればエネルギーの崩壊で城諸共、皇帝閣下までが巻き添えに」

 シンは跪きマルスを諭す。

「なら、どうすればいい!!」

 マルスは受話器をシンに投げつける。

「ランクAです。四夢将(よんむしょう)を使うのです」

「なにぃ?!」

 シンの提案にマルスは血走った目を開く。

「迷っている暇は御座いません。今を乗り切らなければ今まで築き上げてきた皇帝閣下の夢が」

 シンは冷静に話す。

「くぅーーーー」

 マルスは10秒ほど唸ってから口を開く。

「仕方ない司書ザコどもにはもったないが」

「どうぞ」

 シンは受話器を拾い上げマルスに渡す。


「はいはい〜こち」

「四夢将だ!! 奴らを迎撃に使う」

 マルスはDr.ジークが話し終える前に命令をする。

「あいあいさー」

 電話が切れる。



「よし! ここからは班別で門を突破するぞ!」

 1000体のランクCを全て倒したタイミングで太郎が指示を出す。

「わかった」

「了解です」

 晋二と司はそれぞれ50人の自衛軍員を引き連れ門を目指し走り出す。

「いくぞ瑠垣」

「はい」

 マオと太郎も50人の自衛軍員を引き連れ正面の南門に向かって走る。


「あれ、門の前に何かいる」

 マオが門の前の人影を発見する。

「なんだ?」

 太郎は目を凝らす。

 門の前には西洋風の銀の鎧を身に付けたピンク色のセミロングの青年が大剣クレモイアを両手で持ち振りかざす。

(まさかアイツは!?)

「まずい全員退避だ! アイツの正面から逃げろ!!」

 悪寒を感じた太郎が慌てて叫ぶ。

 鎧の青年が大剣クレモイアを振り降ろすと、強力なエネルギーをまとった斬撃が飛んでくる。

(これは、もしかしてランクA!?)

 右方向に飛び込んだマオが立ち上がり後方を見ると付いてきた50人の自衛軍員は斬撃で跡形もなく消滅していた。

(なんだよこれ、同じランクAでも狂暴鬼バーサクオーガとは比べ物にならない)

「瑠垣、無事か?」

(まさか、ジュリビア帝国はランクAまでも……最悪だ)

 左方向へ飛び込んだ太郎が立ち上がり斧を構える。

「はい、いけます」

 マオは両手のボロボロになったロングブレードを捨て左手に日本刀を創造する。

「我が名はアージン。ジュリビア帝国、四夢将の1人。侵入者を駆逐する」

 光の無い虚ろな目をした身長180cmほどのアージンは大剣クレモイアをマオたちに向けて門の前に堂々と立つ。



「一気に門を突破します!」

 東門までの距離が100mほどに迫ったタイミングで晋二は後方30mを走る自衛軍員に指示を出した瞬間、光る何かが凄まじいスピードで飛んできて晋二の25m後方に落ちる。

「うわぁあ」

 爆風と共に晋二は6mほど前方に吹き飛ばされた。

「なんだ?」

 全身に鈍い痛みを感じた晋二が起き上がる。

「これは……まさかランクA」

 光が落ちた後方を振り向いた晋二の顔は絶望感で青ざめる。

 石ブロックで出来た水路の床には大穴が空いており、そこにいたはずの自衛軍員は全員消滅していた。

「くっ」

 晋二が前を向いた瞬間、強力なエネルギーをまとった矢が接近している事に気付く。

「うっ」

 晋二は右方向へ転がり込み紙一重で矢を(かわ)す。

「飛んできたのはあそこか」

 晋二の視界に70m先の城を守る壁の上で、軍服姿で緑色の短髪の15歳ほどの少年がしゃがんでいた。


「第1、第2射撃共に失敗、目標ターゲットは司書」

 身長160cmほどの光の無い虚ろな目の少年は棒読みでクロスボウを構える。


「またか」

 晋二は飛んでくる矢を走って避ける。

(くそ、隠れる場所がない。これじゃ門に近付けない)

 晋二は焦る。

「ボクの名前はドヴァー。君をここで撃ち抜く」

 ドヴァーは再びクロスボウを構える。



「門が見えてきた」

 西門との距離が80mまで迫り、司は両手のトンファーを力強く握る。

「立花司書、門の前に誰かいます」

 自衛軍の1人が口を開く。

「誰だ? 女?」

 司が目を凝らすと門の前にはハルバードを両手で持ち、ミニスカートタイプの軍服を着て黒髪を短いポニーテールにまとめた15歳ぐらいの少女が立っていた。

「………」

 少女は無言のままゆっくりと脇構えをする。

「まずい、ランクAだ!! 回避!! 回避しろ!!」

(くそ、このタイミングで)

 司は慌てて10m後方を走る自衛軍員を左右に散らせる。

「えぇい!」

 少女のハルバードに電流のようなエネルギーが溜まり振り放たれる。


「くそっ半分以上やられたか」

 司は逃げ遅れ少女の攻撃に巻き込まれ消滅した自衛軍員の方を見た。

「また、さっきのがくる!!」

 自衛軍の1人が叫ぶ。

「はぁぁぁぁ」

 司は再び脇構えをする少女に向かって突撃する。

(その攻撃はタメが長い攻撃を放つ前なら隙がある)

 司は両手のトンファーを振り降ろす。

「バカね」

 少女は小声で話すと、脇構えをやめてハルバードを司に向かって右斜め下から左上へ振り上げる。

「がわぁぁぁ」

 ハルバードと接触したトンファーは大破し司は40mほど後方に吹き飛ばされる。


「う………ぅ」

 身体中に激痛が走り司は目を覚ます。

 物音が一つしない事から周りにいたはずの自衛軍員は全員消滅した様子。

 目の前に立つ身長150cmほどの少女は光の無い虚ろな目でハルバードを倒れる司の顔に向ける。

「私の名前はトリー。ジュリビア帝国、四夢将」

 トリーは棒読みで話す。




「瑠垣、俺があのランクAを引きつける。お前は城内に入ってアンテナを破壊してこい」

 汗まみれの太郎はアージンを睨みつける。

「それって!?」

 マオが前に一歩前に出る。

「相手は武装したランクAだ! このままだと2人とも()られる。アンテナを壊して岸田司書にこの事を伝えろ!」

 太郎は必死に命令を出す。

「分かりました」

 マオは前方の門に向かって走り出す。


「逃すか」

 アージンは両手で持った大剣クレモイアをマオに向かって振りかざす。

「こっちだ! ランクA!!」

 太郎は両手で持った斧をアージンに向かって振り下ろす。

(ランクおまえらは、タメを作っている時間つまり攻撃をする前は通常の人間と同じ力、そこが弱点だ)

「うおぉぉりゃぁ」

 太郎はアージンを押し切る。

「必ず戻ります!!」

 マオは門をくぐる。


(ランクAを押し切るなんて、さすが班長だ)

 城内に入ったマオは白い大理石で作られた巨大なフロアーを走り進める。

「!?!!」

 マオは前方から飛んでくる斬撃を日本刀で切り裂く。

「まさか、この先にもランクAがいるのか?」

(この国はどうなっている?)

 マオはさらに奥へ進むと一つの人影が見えた。

「やあ、久しぶり」

 マオの耳に聞き覚えのある懐かしい声が聞こえた。

(おい……嘘……だよな)

 動揺したマオの視線は左右にぶれバランスを崩す。

 フロアーの奥で立っていた男は夢図書館高等専門学校の学生服を着て、オレンジ色のツンツンとした短髪に日焼けした肌、人懐っこい笑顔を浮かべていた。

「あれ? どうしたんだよ、マオ!」

 笑顔で話す男の声に動揺してマオは後ずさる。

「はぁはぁ……どうして……お前がここに……」

 マオは頭に右手を当てて息を荒くしている。

「さぁな」

 男は目を細め太刀をマオに向けた。

「なんでだよ……正輝」

 マオは首を左右に振った。

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