ジュリビア帝国 2
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「ランクB……」
マオは上空10mの高さに浮かぶ龍を呆然と見上げていた。
「瑠垣! しっかりしろ!!」
「すみません」
太郎が怒鳴るとマオは落ち着きを取り戻した。
「はっ生きてる」
パイロットが機体の部品を押しのけて立ち上がる。
「動けるか?」
「はい、なんとか」
パイロットは太郎の呼び掛けに答える。
「なら相川の側にいろ。俺たちはランクBをどうにかする」
「りっ了解です」
パイロットは横たわるユウキの近くまで歩く。
「まず、ランクBを相川から遠ざける。行くぞ」
太郎の指示で3人は左方向へ走り出す。
「グオァアーーー!」
龍は、この世のものとは思えない叫び声を上げ威嚇する。
「来たぞ!」
司は全員に龍が追い掛けて来ている事を伝える。
「うおぉぉぉぉ!」
太郎は龍に向かって両手で持った巨大な斧を振り下ろすが、龍は凄まじいスピードで太郎の斧を躱す。
「くっそ、速い!」
(さすが、時速7300kmで飛行する機体に追い付いただけはある)
龍は体制を変え再び突進してくる。
「五木!!」
「了解です」
太郎の指示で晋二は右手に持った短剣を龍に向かい投擲する。
「弾かれた?」
晋二の短剣は龍に当たる直前に弾かれた。
「集合圧縮が不安定なランクBがステルス機と接触しても体を保っていたのが不可解だったが、やっぱりこのランクBは既に崩壊が始まっている」
司が龍の様子を見て呟く。
「ああ、いつ崩壊するか分からないランクBをこのタイミングで、ジュリビア帝国は本当に夢獣をコントロールできるのか!?」
太郎は再び斧を構える。
「わからんが、敵からすれば最高のタイミングでランクBを嗾けた事になる。もしこれが狙ってやっている事なら考えただけでも恐ろしい」
司は目を細めトンファーを構える。
「ブレスがきます!」
龍は上空で口を開いて動きを止めた事を晋二が知らせる。
「まずい、左右に散れ!!」
龍の口内に光が集まった瞬間に太郎が叫ぶ。
マオたちが龍の正面から回避した刹那、極太の雷にも似たエネルギーの塊が龍の口から放たれた。
「……」
(これじゃまるで、ゲームや漫画の世界のドラゴンと同じ、じゃないか)
爆風と共に放たれたブレスが通過した周辺の草は焼け焦げ地面は一直線にえぐり取られた光景が右方向へ回避したマオの目の前に広がる。
「こりゃ早く決着を付けないとまずいな」
同じく右方向へ回避した太郎の頰に一筋の汗が流れる。
「さっき立花さんが言っていた崩壊って、まさか」
青ざめるマオ。
「そうだ、ランクBは暴れるだけ暴れて最後にはエネルギーの暴走を起こし周りに甚大な被害を出す。既にこの龍はエネルギーの放出と暴走がはじまっている」
太郎は斧を握り締める。
「ふぅーーー」
深呼吸をしていつも通りの冷静な目つきになったマオはコートの袖を七部袖の高さまでたくし上げ、両手に日本刀を創造して構える。
(たしかに龍の体は崩れかけているけど、放出されたエネルギーが体を守る壁になっている。並みの攻撃じゃ届かない)
マオは鱗に無数のヒビが入り、体のいたるところが崩れはじめている龍を冷静に見る。
「グオァアーーー!」
龍はマオを目掛けて突進する。
(やっぱり、頭や首を狙ってくる)
マオは左方向へジャンプして低い姿勢を取った。
(今だ!)
マオは両手に持った日本刀を目の前を通過する龍の腹部を狙って同時に振り上げた。
(足りないか)
マオの日本刀はエネルギーの壁を通り抜け龍の体に微かに触れるが、ダメージを与える前に日本刀は粉々に砕け散ってしまった。
「司さん! 司さん!!」
晋二の叫び声が聞こえる。
「お前ら、いつまでも何してる!!」
太郎が左方向へ回避した晋二と司を睨む。
「司さんの頭にブレスの爆風で飛んできた石か何かが当たったみたいです」
「なに!?」
太郎の視界に、しゃがみ込んだ晋二の傍でぐったりと横たわる司の姿が映った。
「待ってろ!」
太郎は晋二と司に向かって走り出す。
「鈴木班長、危ない!!」
空中で体制を立て直した龍が太郎に向かって口を開いた。
「!? しまった」
龍は太郎を狙って先ほどよりも小さいブレスを放った。
「ぐうっぅぅく」
太郎は斧を盾にして防ごうとするがブレスの威力に負け吹き飛ばされる。
「ぐわぁぁあ」
太郎と龍の延長線上にいた晋二と司もブレスの余波を受け後方へ吹き飛ばされる。
「みんな!!」
マオは大破した機体まで飛ばされた晋二たちの元へ走った。
「ぐっ瑠垣、逃げろ」
うつ伏せで倒れている太郎は首だけを起こし弱々しい声で立膝をつくマオに命令する。
「嫌です」
マオが龍の方へ視線を向ける。
ボロボロに崩れ後ろの景色が透けて見える龍の体は溢れ出したエネルギーが異様な光を放ち、そのエネルギー全てが口へと集まっている。
「あれが、見えないのか? あの龍はもうすぐ崩壊する。お前だけでも生き残って、この状況を本部に伝えるんだ」
太郎はかすれた声で話す。
「嫌です」
マオは龍の正面を向いて立ち上がった。
「わがまま言ってんじゃねぇ。これは任務なんだ! 学校の授業と違う、俺の命令に従え瑠垣!」
太郎が力を振り絞って大きな声を出す。
「嫌なんです。だってまだみんな息している。生きている。もう二度と大切な人を失いたくない。だから俺は少ない可能性でも、みんなと生き残る可能性に賭ける!!」
マオは龍に向かって左手を突き出す。
「瞬間創造!!」
マオは8m四方の巨大な盾を創造する。
「グオァアーーー!」
龍は体内全てのエネルギーを口から放出した。
今までとは比べ物にならないほどの威力と大きさのブレスは辺りを滅茶苦茶に破壊しながらマオの盾を目掛けて飛んでくる。
(バカが、無理だ。お前の圧縮率じゃ一瞬で)
ブレスの接近だけでヒビが入る盾を見て太郎は俯く。
「俺は絶対に諦めない」
マオは両手を前に突き出した。
ブレスが接触した瞬間に盾のヒビは大きな亀裂に変わる。
(ここまでか、学子……すまん)
太郎は死を覚悟した。
(ダメだ、もっと夢粉が必要だ。一瞬だけでいい、この場にある全ての夢粉を支配できれば。みんなを守る力が欲しい)
マオは力一杯に奥歯を噛み締めた。
(なんだ………これ?)
突然、マオの視界がスローモーションになる。
(この透明でキラキラした帯のような物は何?)
マオの視界の所々に靄がかかったように映る。
(すごいエネルギーを感じる。そうだこれで盾の亀裂を塞ごう)
マオは無我夢中に視界に見える靄を盾に集める。
(集まれ! もっと集まれ!)
「あれは? 一体」
太郎の視界はボヤけていた。
ブレスの眩しい光の中で立っているマオの頭上に周りが黄緑色に光る直径30cmの黒いリングが浮かんでいる。
「グオァアーーー!」
龍はエネルギーを使い果たし消滅していく。
辺り一面の地面は掘り返されたように荒れ果てマオの創造した盾の後方だけが不自然に草が生えていた。
「生きてる?」
龍が消滅した後、静寂に包まれた草原で太郎は生きている事を実感する。
「少し気を失っていたようだ」
若干ではあるものの体が軽くなっていた太郎は起き上がる。
「はぁ……はぁ」
マオは息を切らせ足を伸ばし地面に座っていた。
「瑠垣、大丈夫か?」
太郎は左腕を抑えながらマオの隣に立つ。
「無事でよかったです」
マオの表情には疲労が滲み出ていた。
「俺の失態だ。すまん」
太郎は頭を下げる。
「大丈夫ですよ」
マオは笑みを浮かべる。
「でも、よくお前の圧縮率で……」
ブレスを防いだ盾を見た太郎は衝撃のあまり絶句する。
「やっぱり、気になりますよね」
マオが苦笑いで太郎を見上げる。
「瑠垣、お前って……一体」
マオの創造した盾には無数の亀裂が入り、その亀裂を塞ぐようにして透明度の高い夢粉の結晶が盾をコーティングしていた。
「すみません、夢中であまり覚えてないんです。気がついたらこうなっていました」
(さっきの、靄のかかった景色は一体?)
頭上のリングが消え視界が元に戻ったマオが申し訳なさそうに話す。
「この事は本部に帰ってからゆっくり話そう。今は全員の手当てをしないと」
太郎は横たわる班員の方へ振り向き歩き出す。
(具現タイプが結晶タイプの創造を? 聞いた事がない。もぉわけが分からねぇ)
「なんの音だ?」
太郎は遠くから近付くエンジン音の方向へ振り向く。
「お〜い。無事か?」
8人乗りの軍用ジープから男の声がする。
「戸田さん!」
声の主が分かった太郎はジープに手を振る。
「これはひどいね」
ジュリビア帝国の軍服姿で黒髪を後方で一本に縛った中肉中背の男が滅茶苦茶になった草原を見回しながらジープから出てくる。
―――戸田海都 30歳 身長168cm 体重56kg 夢図書館現役のオペレーターの中で最も信頼が高く、戦闘面でも司書に引けを取らない―――
「すみません。でもよくここが」
太郎は一礼しする。
「約束の時間になっても来ないから、何かあったと思って。インカムが使えないから本部に確認も取れないしジュリビア帝国の面積は広いしで途方にくれていたらすごい音がしてね。そこ目指して走ってきた感じかな」
戸田はジープで走ってきた道を指差す。
「その車は?」
立ち上がったマオが戸田に近付く。
「おお! 君が期待の新人だね! 俺は戸田海都、君の事は岸田さんに聞いているよ! よろしくね、瑠垣マオ君」
「よろしくお願いします」
マオは軽い雰囲気の戸田に会釈をする。
「それで、この車の事だったね。まあ募る話もあるからまずは怪我人を車に寝かせて移動しよう」
「移動ってどこですか?」
太郎が質問する。
「皇都にある、ジュリビア帝国自衛軍の拠点さ」
「え!?」
「え!?」
軽い口調で答える戸田にマオと太郎はシンクロする。
「ふっふぅ〜♪」
マルスは皇室の椅子に踏ん反り返り鼻歌を歌いご機嫌だった。
「司書を捕虜にして、為す術のない夢図書館へ奇襲をする。グフフ」
マルスは不気味に笑った。
「なんだ!? 地震か?」
マルスは突然の地響きに驚き椅子から立ち上がる。
「まさか、あのマッドサイエンティスト!!」
マルスは激怒し受話器を手に取る。
「あれぇ〜おかしいですね」
Dr.ジークは暗い城内地下室で机に座ったままパソコンを眺めていた。
「檻から出て崩壊するまでに35分も掛かってしまいましたぁ〜 5分のズレですねぇ」
パソコンの画面は先ほどまで、マオたち司書とランクBの龍との戦闘が映し出されたいた様子。
「しかし、面白いモノを見れましたぁ」
Dr.ジークは砂嵐になった画面を見てニヤける。
「そうですね。彼は本当に面白い」
「いたんですかぁ? シンさん」
Dr.ジークは椅子に座ったまま、後方に立っていたシンの方向へ首を倒す。
「ええ。あなたが偵察用の高速ドローンを飛ばしたあたりからずっと」
下を向いて笑みを浮かべているシンは冷たい声で話す。
「気配が無いのは怖いですねぇ。それよりも彼を知っているんですか?」
Dr.ジークは首を倒したまま質問する。
「はい、彼の名は瑠垣マオ、私も一目を置く人間です」
シンは右手人差し指でメガネを持ち上げる。
「へぇ〜 それはそれは」
Dr.ジークはゆらりと立ち上がる。
「彼は、具現タイプにして結晶タイプの創造を行いましたぁ。あなた方が言っていたparadoxではないですかぁ〜?」
猫背のDr.ジークはシンの顔を覗き込む。
「まだ断定はできません。五島麗花のようなケースもあります」
「おお、彼女も興味深かった。夢図書館に隠してはいましたが彼女も具現タイプと結晶タイプの両方を使えましたしねぇ」
Dr.ジークは左手で頭を掻く。
「ええ、ですが彼女はただの人間でした」
シンはパソコンの画面の方を向いて目を細める。
「paradoxとは一体なんなのか? 気になりますよねぇ。ふふふふ」
Dr.ジークは不気味に笑う。
「それは、私にもわかりかねます」
シンは両手を小さく挙げ分からないとジェスチャーをする。
♬〜♬〜
「また電話ですかぁ?」
Dr.ジークは受話器を取る。
「貴様!! 何をした!!」
「おや、皇帝閣下。お元気で何よりですぅ」
激怒したマルスにふざけて応答するDr.ジーク。
「ふざけるな! 司書どもに何をした?」
マルスは荒々しい口調で話す。
「檻の実験の為にランクBで迎撃しましたぁ。結果は失敗ですぅ崩壊までに5分も遅れが出てしまいましたぁ」
Dr.ジークは悲しそうに話す。
「ランクBだと!? 私は生け捕りと命令したはずだ!!」
マルスは怒鳴り散らす。
「これは大切な実験なんですよぉ。私の設計した檻は夢獣の集合圧縮状態を維持する機能があるんです。しかし実戦データは皆無、ランクBを国の戦力にするなら、この檻は必要不可欠ですぅ。今回のデータで改善点も見つかりました。あと司書は生きていますよぉ」
Dr.ジークは受話器のコードを右手人差し指でクルクルと遊びながら話す。
「なんだと!?」
マルスは驚く。
「はい、彼らはランクBの崩壊に耐えた模様ですぅ。ドローンの映像を見ていましたぁ」
「司書は今どこだ? ドローンで追跡しろ」
マルスは興奮で早口になる。
「それは無理ですぅ。崩壊に巻き込まれてドローンが破壊されてしまったんですぅ」
「ちっ、使えないヤツだな」
マルスは舌打ちをして電話を乱暴に切る。
「では、今後の事は任せますよ」
「はい〜♪」
城内地下室を後にするシンにDr.ジークは右手を左右に振る。
「これで、よし」
マオは治療の終わったユウキを個室のベットに寝かせて安心したように微笑む。
マオたちは戸田の運転するとジープに乗り皇都にあるジュリビア帝国自衛軍の拠点へ移動していた。
帝国自衛軍の拠点は病院のような造りで、所々にヒビ割れが目立ち物資も不足している様子だった。
「マオ、戸田さんがミーティングをするって」
「ああ、今行く」
車の中で意識を取り戻した晋二が個室を遮る汚れた白いカーテンを開いてマオを呼びにくる。
「失礼します」
自衛軍拠点の一室、机がスクール型に配置された60人が収容可能な広さの作戦会議室にマオと晋二は入る。
「疲れているところ、すまないね」
教室でいう教卓の位置に戸田は立っていた。
「まず、僕の部下に持たせた手紙通り作戦内容を話すよ」
戸田はユウキを除く司書が全員着席した事を確認して話し始める。
「すみません」
頭に包帯を巻いた司が机に座ったまま手を挙げる。
「どうしたの?」
戸田が司に問い掛ける。
「まず、この状況が理解できませんが」
司は敵軍の拠点に無警戒で招かれ、敵軍服を着ている戸田に疑問を持っていた。
「あれ? 手紙にジュリビア帝国自衛軍の現状と落ち合う場所、それから作戦は口頭で伝えると書いたはずだけど」
戸田は首を傾げる。
「いや、戸田さんの手紙にはジュリビア帝国とvoiceの詳細と集合場所しか書いてませんでしたよ」
立ち上がった太郎が胸ポケットにしまっていた手紙を戸田に見せる。
「え!?」
太郎から手紙を受け取った戸田の表情が凍る。
「手紙の内容が変わっている。間違いなく僕の字だけど内容が抜けている」
「何者かに、すり替えられたって事ですか?」
晋二が口を開く。
「それは無いよ。この僕のサインの下の印鑑は世界に一本しかないからね」
戸田は胸ポケットから印鑑を取り出して全員に見せる。
「じゃあ、自衛軍の件も口頭で説明するよ」
戸田は腑に落ちない様子で話し始める。
「はぁ」
太郎も納得のいかない様子で机に戻る。
「入って下さい」
戸田が作戦会議室の扉の方を見る。
「………」
軍服を着た男が厳しい表情で入ってくる。
「彼の名はアントス・リバインさん、ジュリビア帝国自衛軍の軍隊長だよ」
戸田が隣まで歩いてきたアントスを紹介する。
「!?!」
突然の敵軍隊長の入室にマオたち司書は身構える。
「大丈夫だよ」
「だけど!」
戸田を疑うように太郎は睨む。
「助けてくれ」
アントスは深々と頭を下げる。
「なっ」
マオたちはアントスの予想外の行動に呆気に取られる。
「これが、この国の叫びだよ……ジュリビア帝国国民と自衛軍の不満は限界を通り越している。理由はマルス・ジュリビア4世の無茶な政策だ。国民は強制労働を強いられ自衛軍は国に対して反抗的な言動を取る罪の無い国民を粛正、つまり殺すように命じられる」
戸田が神妙な面持ちで話す。
「俺たちは、愛する家族のいる国を守る為に自衛軍になったんだ。それをあの皇帝は……」
マオたちを真っ直ぐに見るアントスは眉間にシワを寄せて苦しそうに話した。
「我々、自衛軍は大規模なクーデターを計画していた」
「!?!!」
アントスの言葉でマオたちに衝撃が走る。
「妨害電波の影響で一般的な通信機器は使えず、助けを呼ぶ事もできなかった。もう自分たちが立ち上がるしか無いと思っていたところで戸田が調査にやってきたんだ」
アントスは戸田の方を見る。
「僕が夢図書館のオペレーターだと分かると自衛軍は僕たちを快く迎えてくれて、調査にも協力してくれた」
戸田が着ている軍服を右手でつまみながら話す。
「ですから、その格好にあの車だったんですね」
司は納得した様子で口を開く。
「そう、彼らの協力が無ければとても調査なんてできなかった。その調査で分かった事はジュリビア皇帝が国民全員を粛清し、夢図書館に奇襲を仕掛ける計画を秘密裏に動かしていた事とDr.ジークの存在」
「Dr.ジーク?」
太郎が首を傾げる。
「ジュリビア帝国は14年と言う短い期間で夢粉の技術力を急激に成長させている。それに関わっているのがDr.ジークという男、詳細は謎のままだけどvoiceの所持していたフェイクカードを開発したのはDr.ジークで間違いない」
戸田が答える。
「そんな」
マオたちの表情が暗くなる。
「voiceが行なっていた武器と夢獣の密輸密売は世界中の反社会的勢力の戦力の増強を支援し、夢図書館奇襲に伴う世界規模の混乱を増長させる事が狙いだった。なんとしても止めなければいけない」
戸田は右拳を握る。
「作戦だけど、妨害電波を出すアンテナを破壊する事には変わりないが、アンテナはジュリビア城内にあるとの情報だ、僕たち5人で突撃するのは危険過ぎるし強行すれば失敗は必至」
戸田は目を見開いて強い口調で話した。
「そこで、我々自衛軍が夢図書館の作戦に全面協力をする事を決めた」
アントスは覚悟を決めたような表情をした。
「……」
マオたちは目を丸くしていた。
「既に、全ての自衛軍メンバーがこの事を了承している。敵はマルス・ジュリビア4世とその側近、そして使役している夢獣だ」
アントスは強い意志を持って話す。