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paradox (パラドックス)  作者: ナカヤ ダイト
voice編
13/55

voiceアジト殲滅作戦。

 voiceアジト殲滅作戦 本日



 工業用倉庫が多く建ち並ぶ港、その1つの錆びついた倉庫の物陰に鈴木班の司書5人は身を隠していた。


「みんな、順調に創造履歴の無い倉庫に辿り着いたみたいね」

 本部にいる学子はメインモニターに写し出されたれた地図上に赤く点滅するGPSの位置を確認した。

「ああ、問題ない」

 インカム越しに聞こえた学子の声に太郎が小声で返事をする。



「来ましたね」

 青い執事服姿のシンは倉庫街から少し離れたビルの屋上でマオたちの様子を見ていた。

(司書たち来た?)

 幼い声がシンの心に直接話し掛ける。

「はい、あなたが計算した時刻ぴったりです」

 シンは声に出して返事をする。

(当たり前でしょ。でいつ帰ってくるの? みんな待ってるぞ)

 幼い声は退屈そうに話す。

「ええ、この前に伝えた面白い学生が司書になっています。少し様子を見てから帰りますよ」

(ふぅ〜ん。あんまり遅いとレイが怒っちゃうよ!)

 幼い声は聞こえなくなった。

「それは怖いですね。さて、私も」

 シンはビルから姿を消した。



「作戦開始のカウントダウンに入るから、準備してね」

 インカム越しに学子が指示をする。

「了解だ。相川、準備はいいな?」

「……問題ないです」

 ユウキの返事で学子はカウントダウンを始める。

「10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・作戦スタート」

「……いきます」

 ユウキは作戦スタートと同時に倉庫全体を包み込むドームを創造し、マオたちは倉庫の窓を割って中へ飛び込む。


「!?なっ夢図書館?」

「何故ここが!?」

 薄暗く錆びたコンテナが立ち並ぶ倉庫内に飛び込んだマオたちの目の前に10人の黒ずくめの男が立っていた。

「ちぃい!」

 10人はそれぞれに刃物を取り出しマオたちに襲い掛かる。

「作戦通りだ! 瑠垣!!」

「はい!」

 太郎の命令でマオが前に出る。

「うおおお」

 voiceメンバーがナイフを構えてマオに突進してくる。


 マオは左手に創造した日本刀でナイフを弾き飛ばし日本刀は粉々に砕け散る。

「こいつ圧縮率が低いぞ!」

 すかさず、ナイフを持った2人の男がマオに襲い掛かる。


(瞬間創造(ソニック))


 流れるような動きでマオはあっという間に10人全てを倒してしまった。

「さすが、行くぞ!」

 太郎がマオの肩を叩くと一同は薄暗い倉庫の奥へと進む。



「カンザキさん!! カンザキさん!!」

 1人のvoiceメンバーが慌てて倉庫2階へ駆け上がる。

「なんだ?」

 大柄でサングラスを掛けた40代ぐらいの、くわえ煙草をしている男がソファーで寝ていた。



 ―――カンザキ・マディール。ジュリビア帝国国籍 身長179cm 体重79kgの筋肉質な体つき。犯罪組織voiceのリーダー―――



「カンザキさん! 夢図書館が攻めて」

 ドアを乱暴に開けるvoiceメンバーの男。

「何人だ?」

 カンザキは眠そうに答える。

「5人です」

「あ〜 そうか、じゃあ地下に逃げるか」

 カンザキは急な襲撃にも関わらず落ち着いていた。

「どうせ、ココは嗅ぎつかれるのも時間の問題と思ってたしな。テメェら地下からずらかるぞ!」

 カンザキは、その場にいた50名のメンバーを引き連れ1階の階段から地下に降りた。


「当たりだったな! ドンドン出てくるぞ」

 太郎は100人ほどに増えたvoiceメンバーを巨大な斧で蹴散らせながら話す。

「ああ、岸田司書長の作戦通りだ」

 司は両手にトンファーを創造し交戦している。

「学子さん、もうすぐ制圧できます!」

 晋二は状況を学子に伝える。

「了解、では事前の作戦会議通り倉庫内から地下に降りれそうな階段を探して!」

 学子は追加で指示を出す。

「はい!」

(さすが、岸田司書長だ! 作戦会議通りに敵が動いている)

 晋二は目を輝かす。



 4日前 voiceアジト殲滅作戦、作戦会議


 本部1階の第1会議室にスクール型に並べてられた机に100人の司書が座っていた。


「よぉお前ら、今日はvoiceアジト殲滅作戦の作戦内容について話す。居眠りすると作戦中に死ぬぞ」

 岸田が机の前に立つと司書たちに緊張が走る。

「まずはこれを見ろ、敵アジト周辺地図だ」

 岸田が前方モニターを指差すと地図が表示される。

「この周辺倉庫43箇所全てに司書を配置する」

「質問を」

 1人の男性司書が手を挙げる。

「許可する」

「ありがとうございます。敵アジトは既に判明しています。その一箇所を数で攻めた方が効率的かと」

 男性司書は一礼して質問をする。

「それは敵アジトが倉庫1つの場合の話だ」

「えっ?」

 男性司書は眉間にシワを寄せる。

「この港は雨水貯める為の地下通路が建設途中のまま放置されている。その地下通路の配置と倉庫の位置を合わせるとこうなると」

 岸田はリモコンを押すと地図に地下通路の位置が浮き出た。

「これは!?」

 司書たちが驚愕の声を出す。

「そうだ、倉庫は地下通路の上に建設されている。それを利用しない敵では無い、俺は地下通路を含めた43箇所の倉庫全てがvoiceのアジトだと考えている」

「おおーぉ」

 司書たちは納得したように頷く。

「作戦内容だが、鈴木班に敵アジト本部と思われる創造履歴の無い倉庫1に奇襲をかける。外に敵が逃げ出さないように倉庫1の周辺には相川に結晶のドームを創造してもらう。敵は間違いなく地下通路から他の倉庫に移動し外に出るはずだ、それを待ち伏せして確保だ。鈴木班は倉庫1を殲滅した後に地下通路を捜索しろ」

岸田は睨むような目つきで話す。



 カンザキとvoiceメンバー50人はオレンジ色のハロゲン灯が点々と光る地下通路を歩いていた。

「夢図書館は創造履歴の無い倉庫を狙うと思っていた。だが俺たちの本当のアジトは、この地下通路だ」

 更に歩き進めるカンザキたち。

「これだけ離れれば大丈夫だろ」

 カンザキたちは階段から別の倉庫に上がった。


「来たぞ!!」

「!?! なんで司書がここに!?」

 武器を構える2人の男性司書と驚くカンザキたち。

「本部! 本部! 倉庫27にvoiceメンバー約50人、現在交戦中」

男性司書はインカムで本部に連絡をする。

「岸田司書長、voiceが地上に」

 学子が隣で立っている岸田に話し掛ける。

「よし、狙い通りだ。地下に入った鈴木班を倉庫27に向かわせろ」

「はい!」

岸田は学子に命令を出した。

「太郎くん、倉庫27にvoiceメンバーが出てきたよ! 場所は私がナビゲートするから」

「わかった、付いてこい!」

 学子から指示を聞いた太郎の合図で鈴木班は走り出した。


「ダメです。数が多過ぎて対応しきれません3人ほど地下通路へ逃げました」

 倉庫27では数の多い敵に苦戦し男性司書が本部に連絡をした。

「岸田司書長、どうしますか?」

「インカムを貸せ」

 岸田は学子からインカムを受け取る。

「鈴木! お前と立花、五木は倉庫27へ向かえ! 瑠垣と相川は地下通路に逃げ出したメンバーの捜索しろ。敵が何人いるか分からない以上、他の司書を持ち場から動かすわけにはいかん」

「了解です」

 岸田の命令に太郎は返事をする。


「瑠垣、相川、聞いた通りだ。お前らは地下通路の捜索、敵は銃を持っている可能性が高いから結晶タイプの相川は防御に徹しろ」

「はい」

「……了解」

 マオとユウキは鈴木班から離脱し別行動を取った。



 地下通路に逃げ出したカンザキたち3人は走っていた。

「カンザキさん、どうするんだ?」

「危険だが在庫室に行く」

 カンザキは最後の手段を口にした。

「多分、ヤツらは倉庫にしか目が行っていない。在庫室なら外に出られる」

 カンザキを先頭に3人は在庫室に向かった。



「地図データをACMに送ったから参考にしてみて」

 インカムから学子の声が聞こえる。

「はい」

 マオは右手に装着したACMを確認した。

「ユウキ、こっちが倉庫27だから、多分」

「……うん、敵は倉庫の密集していない場所に逃げるはず。多分、全ての倉庫で待ち伏せているのは、もう分かってると思うから」

 無表情のユウキはマオの意図を察した。

「そうだね」

「……」

 ユウキが無言で頷き、2人は走り出した。


「いた!」

 マオは前方を走るvoiceメンバー3人を見つける。


「おい! 来ちまったよ。カンザキさん!」

 慌てるメンバーの1人。

「ちっ、奴らの中に相当頭のキレるのがいる。仕方ない、ダイナマイトで壁を崩すぞ」

 カンザキの合図で2人のメンバーは壁にダイナマイトを取り付けた。


(追いつける!)

 マオは走るスピードを上げる。

「マオ! 危ない!!」

 ユウキがマオの袖を引っ張る。

「どうしたユウキ!? 敵は目のま」

 マオが言いかけた瞬間に前方の壁は爆発と共に崩れ行き止まりになった。


「あ……ありがとうユウキ」

 マオは呆然と崩れた壁を見た。

「……いい」

 ユウキは無表情のまま頷く。

「でも、これでアイツらの行き先が分かったよ」

「??」

 マオの言葉の意味が分からずユウキは首を傾げる。


「岸田司書長、聞こえますか?」

「どうした瑠垣」

マオがインカムで岸田に連絡を取る。

「すみません。壁が破壊され行き止まりになってしまい取り逃がしました」

「くっそ!」

 苛立つ岸田。

「ですが、行き先は分かりました」

「なんだと!?」

 マオの言葉に岸田は驚く。

「この道の延長線上に、使われていない古い建物はありますか?」

「そうか、なるほど。考えたじゃねぇか!」

 岸田の声が明るくなる。

「松下、今の聞いたか?」

「はい、調べています」

 岸田の指示よりも早くキーボードを叩く学子。

「ありました!」

 学子はインカムのマイクを持つ。

「瑠垣君。この先約2.8kmの位置に今は使われていない製薬会社の研究施設があるわ! そこからだと倉庫15が1番近いから、倉庫15から外に出て! 移動用のジープがそこにあるから追跡して」

「了解しました。ユウキ!」

「……」

 ユウキは小さく頷く。

 

「はぁはぁはぁ」

 マオとユウキは倉庫15から外に出た。

「よし来た! これに乗れ」

 倉庫15の担当の男性司書はジープを出口付近まで移動させていた。

「あっ」

(しまった。俺、運転できない)

 マオの動きが止まる。

「……乗って」

 ユウキが運転席に乗り込みエンジンをかける。

「ありがとう!」

(同い年なのに、すごいなユウキ!)

 マオとユウキは製薬会社研究施設へ向かう。



「やっと着いたぁ〜」

 走ってヘトヘトのvoiceメンバーの1人は在庫室である製薬会社研究施設を見て安堵する。

「おやおや、やっと来ましたか」

 シンは3人を待っていたかのように立っていた。

「お前は、シン」

 カンザキがシンを見て目を細める。

「お待ちしておりました」

 シンは会釈をする。

「司書が攻めてきた、だがここは分かるまい」

(相変わらず薄気味悪い野郎だ)

 カンザキは余裕の表情を浮かべる。

「悪い知らせですが、司書の2人がこちらへ向かっています」

「なに!?」

 シンが冷静に話すとカンザキは動揺した。

「カンザキさん、俺たちもう……」

 メンバーの1人が諦めたように膝に手をつく。

「銃火器を使って迎撃する」

「カンザキさん、今度の取引用の商品だよ。ヤバイって」

 焦るメンバー。

「敵は2人だろ、殺せばなんとかなる。最悪、夢獣(ピエロ)も使う」

「カンザキさん……」

 カンザキの判断に困惑するメンバー2人。

「話している間にきましたよ」

 シンが冷静に話す。


 車のエンジン音がカンザキたちの耳に入る。

「もう来たぁ」

 情けない声を出すメンバー。

「テメェら中に入れ、シンお前も手伝え!!」

 カンザキがシンの方へ振り向く。

「って、いねぇ!」

 シンの姿は既に無かった。


「ユウキ、ここだね」

「……うん」

 ユウキは車を止め、2人は製薬会社研究施設に入る。


「やれ! 今だ!」


 ドアが開いた瞬間にマシンガンを放つ2人のメンバー。

「これで蜂の巣だ!」

「カンザキさんに連絡を」

 弾が切れて土煙りが昇る様子を見て喜ぶ2人のメンバー。


(瞬間創造(ソニック))


 マオが電光石火の速さで2人倒した。

「峰打ちだ、2日も寝れば起き上がれる」

「……マオさすが」

 ユウキは事前に創造していた透明な結晶の盾から顔を出すと感心した様子だった。

「行こう」

 マオたちは製薬会社研究施設内部の暗く開けた空間を進む。


「たく、アイツら。貴重な弾を無駄にしやがって」

 カンザキはマオたちの8mほど上の踊り場に立ってピストルを構えた。

「!!?!つ」

 銃声と共にユウキが転ぶ。

「ユウキ!!」

 銃弾は右肩をかすめユウキは血を流していた。

「ユウキ、大丈夫か?」

 マオはユウキの側に立膝をつく。

「……っ」

 ユウキの顔は苦痛に滲む。

「あははは! まさか、ここまで来るとは!」

 大笑いをしたカンザキは階段を降りてマオたちの前に立つ。

「やっぱ、最後に信じられるのは自分だよな」

「はぁ……はぁ」

 マオの呼吸が荒くなる。

「お前ら、今の状況理解してるか?」

 カンザキが指をパチンと鳴らす。


 動物のうめき声と共に、40体の夢獣(ピエロ)の狼が陰から出現しマオたちの周りを取り囲んだ。

「この数のランクC、これからお前らは死ぬんだ」

 カンザキが笑みを浮かべる。


「はぁはぁはぁ」

(血がこんなに……正輝? 遥?)

 ユウキの右肩から流れる血、それを見たマオの脳内では血まみれで倒れる正輝と遥の姿がフラッシュバックした。

「モウダレモ……ウシナワナイ」

 マオの頭が真っ白になった。

「お前、聞こえてる? まさかチビっちまったか?」

 カンザキはバカにしたように笑う。

「……」

 無言のマオ。

「つまんねぇ。やれ」

 カンザキの合図で40体の狼が遠吠えを上げ、一斉に襲い掛かる。

「……」

 マオは無言のまま立ち上がった。

「マオ?」

 ユウキはマオの異変に気付く。

 狼が飛びかかった瞬間。


「キエロ」


 マオの一言で40の狼は一斉に消滅した。





 ここは何も無い白い空間。


 白髪混じりのボサボサ頭の白衣姿の男が1人立っている。

「見つけた」

 マオが狼を消した瞬間に、一言呟くと白衣姿の男の手の上で浮いている、直径が30cmほどの黒いリングの周りが黄緑色に光った。

「早く、引き継ぎ者の顔が見たいな」

 白衣姿の男は上を向いた。





「はぁ?」

 夢獣(ピエロ)が一瞬で消された事を理解できないカンザキは、口を開いたまま呆然と立っている。

「……マオ!?」

(あれは一体なに? ……天使?)

 ユウキの目には、周りが黄緑色に光る直径30cmの黒いリングが頭上に浮かんでいるマオの姿があった。


「なんだこいつ?」

 カンザキはピストルをマオに向ける。

「熱っ!?なんだコレは!?」

 マオが睨むとカンザキのピストルが粉々に崩れた。

「まさか、強制的に夢粉(ゆめ)に戻された? そんなの聞いた事ないぞ!」

 カンザキは激怒する。

「…………」

 マオは無言のままカンザキの方へ歩いて行く。

「やめろ、くるな!」

 カンザキの表情は恐怖に染まる。

「うっうわぁーーーー」

 カンザキは後方へ走って逃げようとする。


「ふっ、あなた既に用済みです」

「シン、貴様!?」

 男の声と共に飛んできたレーザービームのような物に包まれたナイフが直撃したカンザキは跡形も無く消し飛ぶ。



 マオはその場に倒れ込む。

「マオ!!」

 ユウキの叫び声が製薬会社研究施設に響き渡る。

いつも、ありがとうございます。

いつも私の下手くそな文章にお付き合い頂き本当にありがとうございます!


毎度毎度、説明が多いですが今後の伏線をしっかりと張っているつもりです。(笑)


また頑張って更新しますので、よろしくお願い申し上げます。

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