終わりとはじまり
朝目が覚めると、少し憂鬱になる人がいるのではないだろうか。
今日も学校に行かなければいけない、今日も仕事だ、子供のために弁当を作らないとなど…。
そんな事を思うであろう、しかしその平日の朝に楽しそうに本を家で読む目が、髪で隠れた男がいた。
その男は、目を輝かせて本を読んでいたが、まるで誰かに声を掛けられたように顔を上げ、時間を見た。
その時間は、今から学校に向かうと遅刻前に着くであろう時間。
それに気が付き大慌てで、玄関に走っていく男。
その時に、こんな声を出していた。
「時間やばいってわかってたなら、言ってよ満夜!」
誰かの名前を叫んでいたが、その家には髪で目が隠れた男だけしかいなかった。
一体、誰に向かって声を発したのかはわからない。
それは男……幸崎 真夜にしかわからない。
……いや、真夜を取り巻く一部の人間にはわかるが。
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真夜が遅刻ギリギリで、学校に着くと小馬鹿にするような視線が向けられていた。
妬みなども混じって居たが、それは一旦放置。
自分の席に着くと、一人の男がやってきた。
その男はTHE 不良という様な容姿をした男だった。
やけにニヤニヤして、近寄ってきたので周りの人間は、なにか起こると察した。
その男の周りには、少し取り巻きのようなものが居て、真夜を侮辱するような目で見ている。
そして、男は言った。
「昼に例の場所にこい……もし来なかったら…わかってるよな?」
「……うん」
そういって、男は離れて行った。
取り巻きたちは、男に対して媚びへつらうように男についていった。
その様子に、大変だなーと思いながら真夜は、見送った。
その真夜に近寄る一つの影……この学校でアイドルと呼ばれてるメンバーの一人如月 夕夏だった。
「おはよ、真夜くん今日も遅かったね、何してたの?」
「あはは……色々だよ如月さん」
夕夏は真夜に対する妬みの視線の理由の人間である。
真夜の学年の大半から人気を得ており、ファンクラブまであるそうだ。
別に妬みの視線をどうにかしようと思えば、出来てしまうのだがそうすればある程度の素性の様な物がバレてしまう為、『真夜達』はそれを許さない。
それに加えて、面倒な集団もいるので真夜は関わらないようにしている。
面倒というか……関係がややこしい集団というべきなのか。
そんなことを考えていると、そのややこしい集団が関わってきた。
「夕夏……まだ幸崎君に関わるのかい?幸崎君も迷惑なら迷惑だと言って、夕夏を振り切ればいい筈だよね?」
「そうだけど……」
話に割り込み、さらには真夜の意志を決めつけた男…井部 相葉学園内のイケメンランキング上位を取っている人物である。
そして真夜が思う限りでは、好きな相手に執着しまくってストーカーになってしまうのではないかと、若干危険視している。
女子からくる妬みなどはこのこともあり、子馬鹿にする視線も相葉と容姿を比べられているからだと予想できる。
そんなこんなで休憩時間は終了し、朝のSHRが始まった。
そして時間を飛ばし、昼休みになり言われたとおりの場所に来ていた。
不良はまだ来ておらず、ぼーっと空を眺めて待っていた。
そんな時に声が聞こえた。
「おう……来てたか」
「言われたとおりに来てますよ……要件は?」
二人の間に少し不穏な雰囲気が立ちこもるそして……。
「一緒にご飯食べましょ、ボス」
「そうだね、食べようか」
不良は優しそうな顔で、少し笑いパンをいくつか取り出した。
二人は腰を下ろせそうな場所に、座りご飯を食べようとする。
そんな時に、真夜の口が動き言った。
「今から会議するんじゃなかったのか?お前ら」
「「あ」」
その言葉は真夜の声のトーンより気分高めの声だった。
その言葉を聞いて、忘れていた二人は間に合うか?と思うながらスマホを片手に持った。
「満夜……ついにだね……」
「ああ、ついにだな……」
独り言の様に言っている真夜であるが、これはけして独り言ではない。
真夜には、二つの人格があり性格も違う。
しかし、その二人?の仲は悪くはなくむしろ超絶仲良しである。
髪で目元が隠れているときは基本真夜、隠れていないときは満夜である。
不良……石田 浩二もそのことを知っており、真夜と満夜を尊敬しており真夜をボス、満夜を兄貴と呼んでいる。
そして、最近有名なグループを纏めるグループ……それを制作し、行動している3名である。
因みに、グループのボスには名称のようなものが付いている。
グループ外には伝わっていないが、名称としては星座である。
浩二はキャンサー、真夜はジェミニキング、満夜はジェミニナイトである。
満夜の名称に関しては、本人が自称しているだけだが本来はヘラクレスとも言われている。
その名称を持っているものは、グループ最強なのだが……本人が言うには荷が重すぎるらしい。
そんな事よりも、集会である。
今回は盛大発表する予定であった。
「ジェミニ、遅れながらも参上しました」
「キャンサー遅れたけど間に合った可能性があって欲しい」
『……近くに居ながらもそういう反応の違いしますか…流石ボスとバカ蟹です』
「ああ?そういうクソ蠍はちゃんと間に合ったんだろうな?」
『見ての通り間に合ってますけど?』
「落ち着いて……喧嘩してるともう構ったりしないよ?」
真夜がそういった瞬間いがみ合いが収まった。
『…ボスが言うなら仕方ないですね』
「……同意だ」
「取りあえず、僕たちからの連絡以外何かある人」
『スコーピオンから連絡です……バルゴがボスの学校に転入手続きやって見事今日から、ボスの学校に入りました』
「そうなんだ……転入生として来たんならなにか言ってくればいいのに」
『ああ、それは……今捜索中なんだと思います…ボスを」
「そ、そうなんだ……会えたら会いに行かないとね…他は?」
『『『特にないです』』』
「まぁ…あらかじめ連絡は通してたから当たり前かな……それじゃあ、僕から。このたび麻薬売人を徹底的に捕まえて、ある程度は安全になったと思うけど注意はしててね。そして、本日ジェミニはこの名前を捨て、平凡に生きることをここに宣言します」
「俺もか……俺ヘラクレスはこの名前を捨て、安全に過ごすことを誓う」
『ボス、兄貴お疲れ様でした……今いない連中にも連絡回しときますね』
「……せっかく、止めるって宣言しに来たのにいない人がいるなんて寂しいな」
『他の連中はボスの口から止めることを聞きたく無かったんだと思いますよ……俺だって聞きたくないですし』
「そっか……また、連絡するからその時はちゃんと集合するように言っといて」
『はい、わかりました』
そういって、スマホの電話を切る真夜。
軽く伸びを行い、空を眺める。
「……こうして終わってみるのって、なんだか切ないね」
「だな……だけど、もう二度と会えないわけじゃないんだろ?なら、しみったれんのもおかしな話だろ」
「……そうだね……キャンサーご飯食べよっか食べ終わったら、バルゴ探しするよ」
「わかりました……真夜さん」
そういって二人は仲良くご飯を食べ、別々に教室に戻った。
そして、教室の中に入り浩二が鞄にごみをちゃんと入れるのを見て、夕夏が他の人気者集団と一緒にいるのを確認し、学食組ではない面々が楽しく会話してるのを見て真夜は自分の席に着いた。
そんな時に一人の見覚えのない女子生徒が近づいてきた時に、それは起きた。
床に大きな魔法陣のようなものが浮かび上がり、教室を包み込む。
そこから何が起きたのかはわからない、しかしこれだけは言える。
その時に真夜の、教室にいた人たちは全員、教室からいなくなった