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叶う想い

久し振りに頭から離れない内容の夢でしたので文章に起こしてみました。

 ある村に将来を誓いあったまだまだ幼い子たちが居ました。

 2人の仲は幼いながらにも睦まじく微笑ましいものでした。

 周りの同年代による冷やかしやからかいにも、恥ずかしがったり臆したりする事なく当然の事として受け止めていました。

 しかし2人を引き裂く出来事は唐突に訪れました。


 彼女には才能があったのです。

 彼女自身も知らなかった才能が。

 それは、世界の脅威を討つ事が出来る才能でした。

 その才能が発覚したその日に彼女は村より連れ去られてしまいました。

 そこに彼女の意思は存在しません、大人達の身勝手な意思により連れ去られたのです。


 彼女を連れ去られて彼は落ち込みました。

 自分の無力を恨みました、呪いました。

 しかし、恨み呪う事を生涯続ける事が出来る程に彼の精神は強くありませんでした。

 1ヶ月の後に、彼は落ち込む無意味さに気が付き日常に戻りました。

 しかし、それも長くは続きませんでした。

 

 それは、彼女が連れ去られて半年程経過した頃です。

 勇者と称えられる者が婚約を発表したと、村中で話題に上る様になったのです。

 只の婚約ならば下世話な者のみで盛り上がる話題なのですが、その婚約は異質でした。

 勇者が発表した婚約者の数が4人だったのです。


 複数人との婚約など、貴族でもない限り無い事です、それを勇者と称されているとは言え庶民上がりの者がするのは異例中の異例。

 話題になるのは当然だったのかもしれません。


 しかし、彼の一番気を引いたのは婚約者の名前です。

 そこには、彼女の名があったのです。

 最初は同名の他人と思ってのですが、勇者の役目を知ると他人と思えなくなりました。

 彼女が連れ去られた理由は、世界の脅威を討つ事が可能だからです。

 そしてそれは間違いではありませんでした。

 

 たまたま勇者が婚約を発表した街に村人が居たのです。

 そして彼女と同名の者が本人であったと証言したのでした。


 彼はまた嘆き落ち込みました。

 しかし、連れ去られた時の様に塞ぎ込む事はありませんでした。

 彼の中には怒りも存在したのです、その怒りが塞ぎ込む事を許しませんでした。

 その怒りの源は、たった半年で心変わりをし勇者と婚約をした事に対してです。


 彼はその怒りと悲しみを彼女に伝える事にしました、しかし直接会ってする事はしません。

 彼には自信が無いのです。

 会ってしまったら彼女を赦してしまいそうなのです。

 なので手紙をしたためる事にしました。

 ちゃんと彼女の元に届くのかは疑問でしたが、それは些細な事でした。

 届かなくても良い、出す事で彼にとっての決別となるからです。


 そして彼は手紙を出した後に所在を眩ませました。

 噂好きの村人などは、彼女に捨てられて自殺したのではないか?等と言われていましたが、真実は彼以外に知る者はいません。


 


 手紙は彼女に元に届きました。

 彼女は喜び勇み読み始めました。

 しかし、ものの数秒で表情は陰り目には涙が溢れて来ました。

 仕方ありません、彼の怒りと悲しみの詰まった手紙なのですから。

 読み進めるにつれ彼女の気は狂わんばかりに下降し混乱し嘆いていました。


「違う!」

「そんなんじゃ!」

「私だって」

 

 手紙に対して言っても栓無い事です。

 それどころか彼との関係を知る者にも栓無い事なのです。


 彼女は最後の一文まで読みました。

 そして最後の一文は彼女の決意を固めるに足る一文でした。

 最後の一文は、彼は何処と知れぬ場所に旅立つと書いてあったのです。


『あの人の居場所が分からなくなる』


 これは彼女にとり己が心を掻き乱し思うよりも先に行動に移すに足る一文でした。

 しかし彼女は動けませんでした。

 彼女は既に勇者の呪縛に囚われていたのです。


 勇者の呪縛とは、勇者の言葉に従い逆らう事が出来なくなるものでした。

 これは本来は、強敵と相ま見えた時にパーティーメンバーが恐れをなし逃亡したり、へたりこんでしまった時に強制的に戦わせる為のものです。


 勇者はそれを常時使用していました、己の欲望を満たすために。

 その欲望とは、パーティーの女性メンバーを手込めにする事です。

 彼女はこの呪縛により自らは全く望まぬ婚約をさせられていたのです。

 

 手紙を読んだ彼女は考え、行動を始めました。

 なんとかして呪縛から逃れ彼を探しに行こうと必至になりました。

 しかし、勇者の呪縛は強力で逃れる事はできませんでした。

 すると彼女に異変が起き始めたのです。


 先ず、一切喋らなくなりました。

 次に、目から光が徐々に失われていったのです。

 目から光が完全に消え去った時、彼女は自らの意思で体を動かす事はなくなりました。

 

 それはもう、彼と将来を誓った彼女ではありませんでした。

 文字通り、生ける屍となったのです。

 彼女の自我は崩壊してしまったのでしょうか?

 将又はたまた貝の如く殻に閉じ籠ってしまったのでしょうか?

 確かな理由は分かりません。

 ですが、彼女が彼女でなくなった事だけは確かです。


 しかし、勇者は生ける屍となった彼女を手離す事はしませんでした。

 それどころか、是見よがしに彼女を酷使したのです。

 時に、1人敵の只中に突撃させたり。

 時に、自分の楯としたり。

 時に、性欲捌け口としたり。

 人として何かが欠如しているかの如くでした。

 

 

 

 ある日、転機が訪れました。

 その転機とは、彼女と彼が再会したのです。

 敵として対峙をしたのです。

 

 しかし彼女の瞳が彼を映した時、彼女の目に光が戻ったのです。

 そして開口一番の言葉は・・・


「私を・・・私を殺して・・・お願い、貴方の手で私を殺して・・・お願いだから・・・私を救って・・・


 彼は思い付きもしなかった彼女の言葉に面を喰らいました。

 しかし、勇者の一言である仮説を立てたのです。

 勇者の一言、それは『黙れ』でした。


 その言葉を耳にした彼女は口を動かしているにも拘わらず声が出ていなかったのです。

 彼は立てた仮説を確かめる為に勇者に襲い掛かりました。

 彼と勇者との技量の差は明らかでした。


 彼は勇者を圧倒していたのです。

 

 勇者は彼女が殻に籠ってから、ほぼほぼ戦闘行為を行って居らず技量が全くと言って良い程に上がって居なかったのです。

 負けの見えた勇者は『俺を守れ!こいつを殺せ!』等と彼女に命じてましたが、彼女は動きませんでした。


 彼女は文字通り全身全霊、体力、精神力、生命力は勿論、魂までも削り勇者に逆らっていたのです。

 

 程無くして勇者は彼に無力化されました。

 先ず喉を潰され声が出なくなり、喉を潰され驚愕している隙に足の腱を切り歩けなくし、両方の肩を砕き腕を動かせなくしました。

 彼は念には念を入れ、両手両足の親指と小指も切り落としました。

 これで勇者は動く事も喋る事も何かを握り投げる事も出来なくなったのです。


「殺して・・・私を、私を楽にさせて・・・」


 彼女は勇者の呪縛から仮にとは言え解放されました。

 しかし、彼女は自らの命を絶ってくれとしか言いません。

 それを見た彼は・・・何も言いません、何もしようとしません。


 暫しの間、懇願していた彼女ですが彼のこの態度が意味するところを思い出しました。

 彼が黙し動きすらしないのは『遮ったりしないから、全て話して』です。


「あの・・・えっと・・・私は・・・私は貴方を裏切ってない、捨てたりなんかしてない!私は貴方が好き、貴方を誰よりも愛してる!でも・・・何も言わずにその人と婚約をしてしまったなら、裏切りになってしまうよね・・・でも!でもね、私の気持ちはそこに無かったんだよ。私の望みは・・・夢はずっと変わってないんだよ?貴方と結婚して子供を産んで、その子の子供をこの手に抱いて・・・貴方と一緒に楽しい事も嬉しい事も、時には苦しい事も一緒に感じたいの・・・どんな時も貴方と一緒に居たいの・・・」


 この頃になると、勇者のパーティーメンバーや彼のパーティーメンバーが戦闘を止め集まって来ていました。

 そして、無力化された勇者を見た皆は誰しもが蔑む視線を送っていたのです。

 恐らくは、勇者のパーティーメンバーに聞いたのだと思います。

 誰一人として勇者を助けようとする者は居なかったのです。


「分かってるの、あの人に汚された私なんかじゃ英雄と呼ばれるまでになった貴方の側に居れない事くらいは・・・」


 彼は旅の果てに一地方で英雄と呼ばれるまでに成長をしていた、彼は自分の正義に準じ難題を解決したり自らの技量を上げたり自分を成長させる事を怠る事をしなかったのです。

 

「だから・・・だからね・・・せめて貴方の手で私を殺して・・・貴方の側に居れないなら生きてる意味が無いの・・・貴方に触れて死ねるなら私は満足するから・・・ううん、違うな、満足出来るからだな・・・だからね・・・お願い・・・」


 彼女はそこまで言うと、黙して彼の判断を待った。

 彼は・・・

 彼女が話終わり数秒間考えて行動にでた。

 彼は勇者を無力化した剣を鞘から抜き放ち、ゆっくりと彼女に近付いて行ったのです。


『やっぱりか・・・そうだよね、私なんか・・・ね』


 彼女は覚悟を決めたのでしょうか。

 近寄る彼を見る事を止め、瞳を閉じてその時のを待ちます。


『嫌な事ばっかりの人生だったけど・・・』


 彼が彼女を切り伏せるに十分な場所まで歩みを進め、剣を振り被った時です。

 彼女は急にへたりこんでしまいました。


「やっぱり・・・やっぱりやだよー死にたくないよー・・・せっかく、せっかく貴方と逢えたのに死ぬなんてやだよー・・・側なんて贅沢言わない、近くで良いから、貴方が見える場所で良いから・・・私なんか無視しちゃって良いから、生きて貴方を見ていたいよー、うわぁ~~~ん!」


 彼は膝を着き彼女の頭に手をやりました。


「やっぱり直ってなかったんだな」

「え?」

「直せって何度も言っただろう?」

「な、なにを?」

「その癖だよ。決断を迫られると格好をつけたがるのだよ。いっつも切羽詰まらないと本音を言わない・・・違うな、言った事は全部本音なんだ、だけど心底にある事は言わないってところか」


 彼が剣を抜き放ち近付いたのは、彼女が本当に望む事を引き出すためでした。

 この様な事は幼い頃から一緒にいた彼にしか出来ない芸当です。


「良いの?近くで見ていても良いの?」

「それだけで良いなら、それでも良いよ」

「・・・え?・・・いじわる!」


 どうやら彼は近くと言わず傍らに居ても良いと言っているようです。


「ふふふ。でも先ずは・・・勇者パーティーに聞きたい!そいつの呪縛から完全に抜け出す方法は有るのか?」


 彼は勇者の手から自由にする事を優先しました。


「そいつの持ってるパーティー契約書を破棄すれば解放されるはずだ。そいつの能力はパーティー内でしか通用しないからな」

「・・・これか」


 彼は勇者の道具袋を漁り金属の筒に入っていた書類を6通発見しました。

 それは、彼女と彼女以外の婚約者3人と男性2人のパーティー契約書です。

 パーティー契約書の破棄は簡単です。

 燃やしてしまうだけです。


 切り刻むのではダメでした、刻んでも復元が可能だからです。

 燃やして書面内容と署名が復元不可能にしないと契約が破棄されないのです。

 これは、勇者の力が大勢に行き渡らない様に配慮されたシステムだったのです。

 このシステムも当代の勇者の所業を見る限りだと、穴のあるシステムと言えます。


「全部燃やしてしまったが、構わなかったんだよな?」

「ええ、人としてまともな奴だったなら違ったんでしょうがね」

「そうか。それで君達はこれからどうするんだ?」


 勇者パーティーメンバーは各々違うみちを行くようです。

 中には彼のパーティーに入れてくれと言う者も居ましたが、彼は丁重に断りました。


 彼曰く。

 彼のパーティーに入るには全員の許可がないと入れないそうなのです。

 彼はこう考えていました。

 パーティーとは皆が助け合い信頼しあってはじめて機能するものだと、ですから彼女もパーティーに入れる気はありませんでした。

 その言葉を聞いた勇者パーティーメンバーは、頻りに頷き得心いった様子です。


「さあ、これで君は自由だ」

「うん、でも・・・本当に側に居ても良いの?」

「抗えない状態だったのはわかったからね」


 彼女は彼に飛び付きました。

 今まで我慢していたものが一気に爆発したかのようでした。


「夢みたい!」

「え?夢だよ?」

「!!・・・嘘吐き・・・いじわる!そこは、変わってたって良いと思う」

「あはははは、内面は成長してない自信があるぞ」

「それ自慢になってない・・・」

「あはははは、・・・蒸し返すけど・・・本当に怒ってたんだよ」

「うん、手紙を読んだから・・・」

「本当に辛かったんだよ」

「うん、ごめんなさい」

「でも・・・」


 彼は一際強く彼女を抱き締めました。

 これまで伝える事が出来なかった愛情を込めて。

 これまで感じる事の出来なかった温もりを求めて。

 彼はあらゆる想いを込めて・・・


「い、痛いよ?貴方の気持ちが込もってるのは分かるんだけど、痛いよ?」

「ごめん!・・・つい」

「ううん、痛かったけど嬉しい」

「はい!いつまでいちゃついてるつもりじゃ?やらねばならぬ事はまだあるのじゃぞ?続きは床に就いてからにいたせ」

「と、とと、床ぉ!?」

「なんじゃ?せんのか?」

「いや!・・・あの、その・・・」

「かっかっ、未通娘おぼこじゃあるまいに。此奴は意識がある時にした事がないゆへに、お主が導かねばならんのじゃぞ」

「えっ?あっ!・・・うん」

「ちょと待て!意識がある時ってのはどうゆう意味だ?」

「そのまんまの意味じゃ。お主は意識の無い時にならした事があるのじゃ」

「身に覚えがない!」

「あたりまえじゃっ!意識がなかったのじゃからな」


 彼は苦虫を噛み潰したような顔になっていました。


「いつ誰としたって言うんだ?何でお前が知ってるんだ?いや・・・そうか!」

「そうじゃ相手は妾じゃ。お主と出会って直ぐじゃったかの?酒に呑まれ前後不覚になった事があるじゃろ?その時に味見をさせてもらったのじゃ」

「あ、あの時か!あの時は初めて誰かとパーティーを組んで嬉しかったからなぁ」

「安心せい、酒に呑まれてなくとも味見はしたじゃろうからな」

「どんな安心だっ!」

「そんな事よりもじゃ。お主、此奴の相手は中々に大変じゃぞ?心して掛かるのじゃぞ」

「あの、大変って?」

「うむ、それがの・・・1回1時間程掛かるのじゃ」

「え?・・・えぇーっ!い、1時間!?」

「しかもじゃ、3回やってもまだ元気じゃったのじゃ」

「さ、3回?・・・3時間・・・まだ元気?」


 彼女にとっては知らない領域の事のようです、困惑しオロオロしています。


「あっ!小さくて締め付けるのが、難しかったからとか?」

「そんな事はないのじゃ、妾の知る限りでは五指に入る大きさじゃ」

「そ、そんなに・・・」

「そうじゃ!グズのと比べて見るのじゃ」

「どうやって?」

「任せておくのじゃ」


 そう言うと勇者に近付き下半身の衣服を剥ぎ取りました。


「我が意に従い膨張せよ」


 すると、みるみるうちに膨張し彼女の見慣れたものへと変化しました。


「なんじゃこれは?これも五指にはいるのじゃ。小さい方の五指じゃがな」

「そうなんですか?」

「お主、奥を叩かれる様な経験をした事が無いじゃろ?」

「奥ですか?・・・無いです」

「この大きさでは届かんのじゃ。届かぬ故に種も届いてなかったのじゃろうな。お主が懐妊せんかったのは此奴が希な小ささじゃったからやも知れん。そこは不幸中の幸いじゃったな」 


 彼女は不思議に思っていたのです。

 何度となく種を出されていたにもかかわらず子を授からない事をです。

 もしかすと自分は子が授かれない体質なのか?

 等と考えた事も有った程です。

 勿論、勇者の子など授かりたくはありませんでしたが。


「ふむ、これしか知らぬのならば此奴相手じゃと未通娘おぼこと変わらぬやも知れんな」

「え?・・・それってどうゆう・・・

「おおよそじゃが、これの倍はある」

「倍っ!?えっ!?・・・倍っ!?」

「うむ!太さ長さ共にじゃ」

「そ、そんなの入らない・・・」

「その心配はないのじゃ、産まれ出る子は比べるまでもない大きさなのじゃからな」


 言われてみればその通りです。


「でも、壊れちゃったりしそう・・・」

「ふむ・・・申し訳無いのじゃ、不安を煽るつもりは無かったのじゃ」

「え?ううん、大丈夫。他のを知ってるから、何も知らないで彼のを見たら泣いちゃったかも」

「泣くのか?」

「うん、拒みたくないもん。でも、そんな大きいのは怖いはずだもん」

「そうやも知れんな。ふむ、妾が付き添おうか?」

「えっ!?それっって・・・」

「いやな、妾も彼奴のものを久方ぶりに味わってみようかとじゃな・・・

「だ、だめーっ!」

「かっかっ。冗談じゃ、じゃがな、彼奴の種の子ならば産んで育ててみたくはあるのじゃ。お主が許してくれるのならば貰いたいのじゃ。まぁ、今日は2人でゆっくり幸せを味わうのじゃぞ」 



 ・・・

 ・・

 ・

「かっかっ。どうじゃったのじゃ?」

「・・・2回・・・2回しか出来なかった、言ってた通りまだ元気だった・・・」

「なんじゃかなぁ、そのような事くらいで落ち込むでない」

「でもさ、元気だったって事は満足してないよね?・・・私・・・捨てられちゃう?」

「彼奴はそのような事はせんのじゃ」

「そう思うけど・・・不安だよ?」


『参ったのじゃ、女の妾から見ても可愛いのじゃ・・・妾では敵わんのかのう』


「どうしたら良いのかな?本人に聞いたって不満なんて無いって言うに決まってるもん」

「そうじゃのう・・・やはり妾も共に・・・

「それは、やっぱりやだよー」


『やはりダメか』


「独り占めしたいって気持ちしかないもん」

「ならば仕方ないのじゃ。ふむ、答えが出ぬ事を考え続けても仕方ないのじゃ、別の事を話すのじゃ」

「別の事を?」

「そうじゃの・・・どうだったのじゃ?初めて彼奴に抱かれた感想は?」

「えっ!?あの・・・」

「抱かれたのは知っておるのじゃから、話してくれてもよいじゃろう?それに、彼奴を満足させるヒントがあるやも知れんぞ」

「う、うん・・・気持ち良かったよ。最初はやっぱり怖かったし、痛かった。あれは大き過ぎだよ」

「かっかっ、じゃが気持ち良くなったのなら次はすんなり入るのではないか?」

「多分?」


「他にはないのか?」

「えっとね、裸でね、彼に触れられただけで心が満たされる感じがしたの。それでね、進めて行くうちに涙が溢れちゃって・・・」

「それも仕方ないのじゃ、真に愛する者と長き時の末に繋がれたのじゃ。感極まるのも頷けるのじゃ」

「うん、今幸せなんだなって自分でも分かった」

「良かったのう、それから?」

「・・・私、夜も彼無しじゃ生きれなくなっちゃうかも?・・・」


『これはいかんのじゃ!妾には同性でする趣味は無いのじゃが・・・此奴は可愛い過ぎるのじゃ!』


「ダメだよね、満足させられないのに依存しちゃったらさ」

「ふむ・・・彼奴はどうじゃったのじゃ?勢いに任せていたのか?」

「ううん、優しかったよ。勇者と全然違ってビックリしちゃったもの、乱暴な事は全然しなかったし、ずっと包まれてるみたいだったもの。でも、最後の方は激しかったな」

「当然じゃな、最後までゆっくりでは満足感は無いじゃろうて。因みに聞くが、2回目は彼奴が望んだのか?」

「違うよ?私からだよ」

「ふむ、これは確かでは無いが、彼奴は1回で満足したのやも知れん。ずっと想い続けた者と繋がれたのじゃからな」

「でもさ、昨夜が初めてだったし、次からは何度も求めて来るかも知れないよね?・・・私、ホントどうしよう。拒むなんてしたら捨てられちゃいそうで怖いし。・・・どうしよう」

「そのような事はせゎじゃろうがな・・・一度妓館にでも通わせて自分が並み以上だと分からせるか?」

「いや!それは絶対にいや!妓館に行かせるくらいなら、私が壊れちゃう方が良い!」


『確かに妓館ならば金さえあれば女を替え放題じゃからな』


「・・・分からない事があるの」

「?、急にどうしたのじゃ?」

「分からないの・・・なんで私なんかに優しくしてくれるの?、なんで親身になってくれるの?私は・・・元敵で、私は彼を求めてるだけの役立たずなんだよ?」

「ふぅ、そのように卑下するではない。御主はな、御主が彼奴を必要としているように、彼奴にも御主が必要なのじゃ」

「・・・私が?必要?彼に?」

「そうじゃ、彼奴の性格は知っておるじゃろ?口下手で話下手で言葉足らずな上、口が悪くぶっきらぼう、そのくせ人と話すのが好きときた。時折怒鳴りたくなるのじゃ、歩く火種がっ!とな」

「火種?」

「そうじゃろう?彼奴の様な輩はトラブルを無意識に生み出すものじゃ。英雄は勿論じゃが、旅人としても失格じゃ。町や村で気心の知れた者等と暮らすのが一番なのじゃ、じゃが1人ではダメじゃ、気心の知れた者等が出来る前に破綻するはずじゃ、仲を取り持つ者が必要なのじゃ」

「それが私なんだ」

「うむ・・・御主が現れなければ妾がやっておったのじゃがな」

「妾さんが?」

「妾さん・・・まぁよい。他に適任がおらんのじゃ」

「・・・・・それだけ?理由、それだけなの?」

「む?」

「それだけの理由で彼の面倒をみるの?」

「むむむ・・・」

「私ならそれだけの理由じゃそこまで出来ない、妾さんはきっと・・・

「みなまで言うな、その通りじゃ、妾は彼奴が好きじゃ、愛しておるのじゃろうな」

「やっぱり・・・でも彼は悪い所ばかりが目につく人だよ?良いところなんて見当たらない人だよ?」

「無駄じゃぞ、妾は彼奴良い所も知っておるからな」

「ちぇ、ダメか」


『強かなところも有るんじゃな』


「確かに、彼奴は悪い所ばかりが目立つが、それに慣れて来ると良い所が見えて来たのじゃ。ほんに難しい輩じゃ」

「そっか・・・私だけが知ってる事じゃなくなったんだ・・・」

「そうなるの、しかし・・・彼奴は何なのじゃ!普段は鈍感なのに妙な所で優しくなりおる」

「何があったの?」

「ん・・・うむ。妾はの、どの様な重傷も一晩寝れば治るのじゃ、彼奴もそれは知っておるのに怪我をする度に寝ずに看病してくれたり・・・彼奴の方が重傷なのに、妾を背負ってくれたり・・・露店でのう、好みのアクセサリーなどを見付けたりすると、何故か夕食にそれをプレゼントしてくれたり・・・風がキツイ日なんかには、然り気無く風から守ってくれたり・・・卑怯なのじゃ!そんな事をされたら・・・妾は・・・妾は・・・」

「うん、分かるよ。彼は見るからに弱ったり危うそうだったりする人は放って置けないの、自分に出来る事を頑張っちゃうんだよね。それと、見てない様で凄く見てるのよね・・・でもさ、それ位なら他にもやる人は居るよ?彼じゃなくても良いんじゃないかな?」

「居らぬ、妾の怪我の治りの異常さを知ると放置か気味の悪い者となるのじゃ・・・それを彼奴は毎回毎回目覚めると其処に居って安堵の笑顔を向けるのじゃ、そして『ごめん、もっと強くなるから、怪我なんてさせない位に』とな。これが妙に温かいのじゃ」


「・・・・・」


「決定的じゃったのは、あれじゃのう。夜営をしておった時に妾に凭れ掛かって寝てしまった時じゃの。その日は1日戦い詰めじゃったからの。起こして床へ就けとは言えなかったのじゃ、じゃから膝枕をして寝かしてやったのじゃ」

「ああっ!いいなぁ!私もした事ないのに!」

「かっかっ、早い者勝ちじゃ♪」

「ぶー」

「かかっ・・・その時に見た寝顔がなんとも愛おしくての、自分でも不思議な位に穏やかじゃったのじゃ。こんな時間がずっと続かぬかと願っていたのじゃ。そこまで思ってやっと気付いたのじゃ、妾が彼奴に心を奪われておるとな」

「・・・・・」

「じゃがな、その幸せな気分は長く続かんかったのじゃ」

「?、なんで?」

「御主じゃ、寝言で御主の名を呼んでいたのじゃ」

「えっ!?」

「口では他人だ知らない人だと言って頭で決め付けてはいたんじゃろうが、御主は居ったのじゃ。消そうと思っても決して消す事の出来ぬ心の中にしっかりとな」 

「心の中に・・」


「そうじゃ、じゃから妾は消そう努力したのじゃ。じゃが、何処へ行っても勇者の話題は尽きなかったからの、必然的に御主の事も思い出して居ったのじゃ」


「・・・・・」


「消せぬのならば、妾も彼奴の心の中に居るようになろうとしたんじゃ。御主より大きな存在としてな。そんな折りに御主が再び彼奴の前に現れたのじゃ。妾は妾の相手をしていた者をさっさと倒し、御主に引導を渡すつもりじゃった」


「・・・・・」


「『殺して』これには流石の妾も驚いたのじゃ。裏切り捨てた者の台詞ではないのじゃ。勇者を倒し、泣きじゃくる御主の言葉を聞いて居ったら・・・のう。妾とて女じゃ、締め付けられる位に気持ちが分かってしまったのじゃ。じゃから、そこで彼奴の事は諦める事にしたのじゃ」

「・・・・・いいよ」

「?、なにがじゃ?」

「彼と子供を作って・・・」

「御主、何を言っておるのか分かって居るのか?」


「うん・・・だって私が現れたりしなければ妾さんは幸せになれてたよね?突然現れた私が横取りした様なもんだよね?それって、勇者が私にした事と同じだよね?ううん、違うな。勇者がしたより酷い事だよ。だって、睦まじくしている私と彼を見なきゃいけないんだもん。離れ離れより辛いはずだよね?私なら毎日泣いてるはずだもん。だからね・・・いいよ」

「し、しかしじゃな」

「勿論、独り占めしたい気持ちはあるよ。でも、一方的に疎遠になって、私の居ない所で彼の魅力に気が付いて愛した人に何かを言う資格なんて無いよ。私はね・・・私は勇者と同じになんてなりたくない!!されて嫌だった事を誰かにしたくない!!」

「御主・・・」

「ほら、勇者なんかでも4人と婚約したじやない。だから彼も2人と結婚したって良いじゃない。私、妾さんなら大丈夫だよ」

「・・・御主、格好をつけて居らぬか?」

「・・・つけてる・・・かな?でも嘘じゃないよ?妾さんなら良いって思うのは本当だよ?それと、独り占めしたいのもね」

「かっかっ、ならば妾は誓おう。妾は彼奴とする時は御主が居る時にしかせぬ!妾が独り占めするような事はせぬ!」 

「そ、それって・・・3人でするって事?は、はずかしいよ!?」

「ほう、ならば妾が独り占めする時間があっても良いのじゃな?」

「え?・・・いや、かな」

「ならば共にじゃな。かっかっ」

「・・・声とか顔とかみられちゃう」

「それは妾も同じじゃ」

「~~~~~~~」

「かっかっ、では早速参るのじゃ!」

「えっ!?いまから!?もう明るいよ?」

「昼間にやってはならぬ法はないのじゃ。かっかっ、彼奴はどんな顔をするかの?裸の女が両脇に居たら。かっかっ」

「それ面白そう♪」


 

アンチ勇者丸出しになったかも。

個人的には勇者なんかよりも英雄の方が称賛される存在だと思っています。

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