表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
交錯する意識  作者: 日次立樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/2

交錯と思念と音のない悲劇

 ―――――――――――――――――――――


 雨の日の小道はしんとしている。シーン、ではない。しんとしている。

 足元が悪くなるからだろう、雨の日にここを通る人は少ない。

 人がいない、ただそれだけで、見慣れた景色がどこか変わって見える。


 時折、傘を差した人間が通っていく。

 早足に歩く彼は、毎朝同じ時間にこの道を通る。今日は少しだけ遅かった。


 そのまま立っていると、水溜りで何か動いているのを見つけた。

「君は誰だい?」

 その見慣れない生き物は少し濁った瞳に僕を映した。

「こりゃ驚いた。あんたは喋れるんだな」

 彼が吃驚したのも無理はない。普段僕が彼らと話をすることはないから。

「僕が喋ったらおかしいかい?」

「いや、そんなことは――――――やっぱり、おかしいかな」

「正直だね」

 僕はこの得体のしれない生き物をなんだか気に入ったらしい。


「君はなぜここに居るんだい?」

「いちゃあいけない理由でもあるのかい?」

「いいや。ただ、いつもは見かけないから気になったんだ」

 どこかで見たような、気はするんだが。

「いつもはあそこにいるのさ。あんまり雨が降るから、落っこちてしまったんだ」

 そういって、不思議な生き物は空を示した。つられて見上げた灰色は重すぎて、息が詰まるようだと思った。

「ふ、それは素敵だ」

 皮肉ではない、むしろ羨望だ。

「だけどみたところ君には翼がないね。どうやって住んでいるんだい?」


「泳ぐのさ」

 パシャ。それっきりそいつは返事なんかしなかったけど、何故だか満足そうな顔をしていた。


 雨は上がった。さっきまでの静けさが嘘のように、賑やかに少女たちが歩いてくる。

「やだ、なにこれ」

 彼女達はさっきまで生き物だったあいつと、ついでに僕を大げさに避けて去っていった。

 灰色だった空も少しずつ青さを取り戻していくようだった。アスファルトの窪みの水溜りは彼女たちの笑い声に共鳴したようにさざめき、しかしすぐに何事もなかったかのように凪いだ。

 白く濁った瞳はもう何も映さないけれど、何かを問いかけるように僕を見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ