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女神の声  作者: 渡里あずま


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第三章【前】

 克己の話によると、生徒会役員には幾つかの特典があるらしい。


 授業免除。

 風紀不問。

 学食無料。


 最後の一つは一見、微笑ましいがこの学校の食堂は三ツ星レストラン級だと言う。全く、どこまで贅沢なのか。

 ……そこまで考えて、知愛は瑛の長い髪や学生服の前を全部開け、中にTシャツを着ている豪を見た。成程、確かに風紀不問である。


「食堂があるなら、明日からはお弁当を用意しなくて良いですね」


 全員分のお茶を淹れ、話を聞いていた知愛はそう呟いた。実は、源蔵の家の料理人に弁当まで作らせるのを、申し訳なく思っていたのだ。

(高そうですけど、タダですし)


「ってお前、あの超音波の中で昼飯食う気か?」

「やめときなって、落ち着かないよ?」

「僕達と一緒に、ここでお昼を食べましょう?」


 しかし三人から口々に止められて、知愛は朝の騒ぎを思い出した。確かに、あの歓声と嫉妬の眼差しは間違いなく消化の妨げになる。

 一旦、諦めかけたが、そこで知愛はあることに気がついた。


「……って、皆さんと一緒に行かなければいいじゃないですか」


 知愛は転校生な上、登校してすぐこの教室に来ている。校門や職員室に行くまでに目撃されてはいるが、それにしても校内全生徒には顔を知られていない筈だ。


「克己君。明日、行ってみますから後で食堂の場所、教えて下さい」


 にこにこ、にこにこ。

 満面の笑顔で言うと、困り顔ではあるが克己は頷いてくれた。



 咄嗟に止めようとした豪だったが、そんな自分に気づいて眉を寄せた。

(何だよ、俺。関係ねぇだろ?)

 知愛を生徒会に入れたのは、化けの皮をはがす為だ。未だに彼らに媚びて来ない辺り、いっそ馬鹿なのかもしれないが――明日、食堂に行くのはむしろチャンスだ。

(……まあ、茶淹れるのは美味いけどな)

 今まで、生徒会を手伝うという名目で近づいて来た者は、男女問わず大勢いた。

 中にはご機嫌取りの為、自らお茶を淹れようとした者もいたが――手際も味も、やり慣れていないのがバレバレだった。


(って、俺のものになればそもそも必要ねぇ技術だし)


 浮上しかけた知愛の評価を豪は無理矢理、一蹴した。

 やりたい放題やっている豪だが、親にだけは逆らえない。理由こそ違うがそれは他の二人も同様なので、今回のような馬鹿げた婚約話も断れないのだ。


「許婚って、何の話でしょう……どなたかと、勘違いされてませんか?」


 だから、知愛のあの台詞が癪に障った。自分一人だけ、関係ないという顔をした少女に腹が立った。八つ当たり上等である。


(そうだよ、嫌いだから気になるんだ)


 自分に言い聞かせるようにそう思うと、豪は立ち上がってフラリとSクラスを後にした。ちょうど休み時間だったので、女生徒達の熱い眼差しが彼に集中する。


 そのうちの一人を目線で促し、腕を絡めてきた少女を連れて豪は屋上へと向かった――苛立ちを、一時の快楽でまぎらわせる為に。

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