表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の声  作者: 渡里あずま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/33

第七章【中】

「おはようございます」

「……おはよう、ございます」

「もうすぐ、豪君達も帰って来ますね……私、お茶の準備しますね」


 目を開けた克己の視線の先で、歌っていたのは知愛だった。

 しかし彼が目を覚ましたのを見ると、彼女はピタリと歌うのをやめてしまった。そして照れたように笑うと、ごまかすようにキッチンスペースへと向かう。


「ちょっと、昔を思い出しました」


 そう言った知愛の過去を、聞きたいと思ったのは夢のせいだろう。だが、一方的に聞く訳にも――と克己が躊躇していると、聞き慣れた足音が近づいてきた。


「しつこいぞ、貴様っ!」

「女の子は、もっと控えめな方がいいと思うよー」

「実行委員に、男も女も関係ないわっ」


 そして豪や瑛と共に現れた少女に、克己と知愛は目を見張った。



 ヘアバンドで全開にされた額。眼鏡をかけているせいもあり、真面目な印象を受ける。

(だけど、この人……)


「ケチケチしなくても、いいじゃない! 一人くらい参加しても、減らないってばっ」

「いや、物理的に減るだろうが!?」

「そーそー、俺ら今日まで忙しかったんだからさー。明日からの本番くらい、楽させてよー」

「却下よ!」


 真面目さ故かどうかは不明だが、豪達に対してズバズバ物を言っている。もしかして、彼ら以上の名家の令嬢だったりするのだろうか?


「逆ですよ」

「……えっ?」

五十嵐潤いがらしじゅんさん。彼女は、二年の……いえ、当校唯一の特待生です」


 考えていたことが、顔に出ていたのだろう。しかし、克己から教えて貰った内容に、知愛は大きく目を見開いた。


「特待生さん……」


 ポツリ、と落ちた呟きに一同の視線が集中する。

 そんな中、知愛はその目をキラキラと輝かせていた――言葉は悪いが、つまりは庶民。少なくとも、他のご令嬢達よりは話が合いそうだ。


「あの、初めまして。神崎知愛と申します」


 とは言え、話せるようになるかどうかは相手あっての話である。

 それ故にキチンと名乗り、頭を下げると――クスクス、と言う笑い声が聞こえてきた。


「五十嵐潤、よろしくね」


 顔を上げ、笑っているのを見て嫌われなかったようだとホッとする。

 そんな知愛の反応に、潤はニンマリ人の悪い笑みを浮かべ――クルリ、と豪達に向き直った。


「食堂で会長達がデレてるの見て、悪い子じゃないとは思ったけど……こんな逸品、どうして紹介してくれないのよ!?」

「……そう言う反応をすると、思ったからだ」

「知愛ちゃんも、駄目だよー」

「独占禁止! ミスターも大切だけど、今年は絶対的エースが卒業して初のミスコンなんだからっ」

「……っ!」


 それは一瞬のことだったので、言い合いをする三人は気づかなかった。

(克己君……?)

 しかし、隣にいた知愛だけは克己が息を呑んだのに気づき――咄嗟に、この場にいてはいけないと思った。


「それじゃあ、今度は私達が見回り行って来ますね」

「は? おい?」

「知愛ちゃん?」

「えっ……あのっ」


 それ故、知愛は克己の手を取ってSクラスを後にした。そんな彼女の突然の行動に、豪達がそれぞれ驚きの声を上げる。


「何だ……五十嵐に、妬いたのか?」

「違うと思うわよ、バ会長」


 そして共にSクラスに残された潤は、勘違いしかけた豪をバッサリ切り捨てたのだった。


「難しいお話は豪君達にお任せして、私達は休憩しましょう……でも、食堂だとゆっくり出来ませんかね?」

「……あの」


 一方、廊下に出た知愛はこれからどこに行くべきか悩んでいた。と、そんな彼女に手を引かれた克己が声をかけてくる。

 それに足を止め、振り返ると――真剣な表情をした克己が、口を開いた。


「少し暑いですけど……屋上に、行きませんか? お話したいことがあるんです」



 清琳学園には、自動販売機がほとんどない。名家の出である生徒達は手軽さではなく質を求める為、飲み物が欲しければ食堂に向かうのだ。

 そんな名門校唯一の自動販売機は、屋上にある。

 一般の生徒には開放していないが、生徒会の面々は利用出来る場所――その息抜きのお供として、自動販売機は今日もひっそり活動していた。


「はい」

「……ありがとう、ございます」


 万能な学生証は、そんな自動販売機にも有効である。

 知愛の分の飲み物も買った克己に一瞬、知愛は申し訳なさそうな顔をした。だが、そこで食い下がらず素直に受け取ってくれたのに、克己は内心、ホッとする。


「克己君も、自動販売機とか使うんですね?」

「そうですね、便利ですから」


 知愛にはそう答えたが、実はあまりここには来たことがなかった。以前は豪がよく、女生徒達を連れ込んでいたからだ。

 しかし、知愛を好きになってから――そして、彼女のある行動によって豪は変わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ