表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の声  作者: 渡里あずま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/33

第四章【中】

 その質問に、きょとんと目を丸くし――次いで、にっこりと笑う。


「はい、つき合いますよ? 苺ショートのお店に」

「……えっと、そうじゃなくて」


 知愛の答えに、克己が困ったように口ごもる。

 それに、いつもの克巳のようにフフッと笑うと――知愛は、小首を傾げて克己を見上げた。


「克巳君の言う意味でつき合ったら、すぐに終わっちゃいます」

「……えっ?」

「男女の友情、私はあると思いますけど……つき合った後に友達になるのは、難しいと思うんです。だから私、まずは瑛君と……皆さんと、仲良くなりたいんです」

「っ!」

「……って、前半は周りからの受け売りですけど。簡単に終わりたくないのは、本当ですよ? 日本に来て、初めて会った人達ですもの」


 そう言って悪戯っぽく笑う知愛は、ウサギのぬいぐるみを持っているせいもあり、年よりも幼く見える。

 だが、その口から語られた内容は――我が儘ではあるが、何も知らない子供の言い分ではなかった。


「克巳君、この教室ってどう開けるんですか?」

「……えっ? あぁ、そこに学生証をかざすんです。生徒会役員と椎名先生だけが開けられるんですよ」

「ありがとうございます……って、うわ、すごい……っ」


 そんな克巳を余所にドアを開け、仮眠室(別名・ぬいぐるみ部屋)を見た知愛が驚きの声を上げる。

 くるくると表情を変える、掴み所のない少女――そんな知愛に、克己はフッと双眸を細めて呟いた。


「あなたは、僕達と一緒にいても変わらないって思ったけど……僕達の方が、変えられちゃうのかな?」



 瑛の言った、次の日――つまりは本日、朝十時に瑛が車で迎えに来る事になっている。

(大げさな気がしますけど)

 何しろ、お茶を淹れただけで庶民扱いする相手だ。ここは突っ込んだら負ける、と知愛は妙な結論を導き出し、一人頷いた。

 祖父に出かける事を言うと、随分、喜んでくれた。口数が増える訳ではないが、時折、笑みがこぼれていたので間違いないだろう。

(デート……に、なるんですかね?)

 そんな訳で、帰国した彼女の為に源蔵が用意していたワンピースを着て出かける事になったのだが、ここで困った事になった。

 いや、一般的には困らないのだが――このワンピースには、ポケットが無かったのだ。

(ボールペンは、バックに入れるしかないですね)

 普通、デートに武器はいらない。

 しかし、戦場が長い知愛としては丸腰はどうも落ち着かなかった。その為、別な方法である物を装着すると――一安心とばかりに微笑み、バッグを手に階下へと降りていった。


「……ここ、ですか?」

「うん、ここの苺ショートは絶品なんだ♪」


 ケーキを食べると言うので、カフェに行くのだと思っていた。だが瑛の車に乗り、連れて来られたのは高級ホテルだった。

 ケーキ一つ食べるのに、また随分とおおげさな――考えたことが、顔に出たのだろう。一緒に車を降り、隣を歩いていた瑛がニッと笑う。


「本当に美味しいんだって! 変に遠慮して、食べに来ないなんてもったいないよっ」

……その言葉は、知愛の予想とは少し違った。

店の格重視かと思ったが、美味しさ故なら話は別だ。幸い、祖父や瑛達とは比べ物にならないが、彼女にも傭兵の時の報酬がある。


「そうですか!」


 だから、知愛は遠慮無く初めてのケーキを楽しむことにした。

 オムライスの時同様の、全開な笑顔を向けられて――瑛が思わず見惚れたことに、苺ショートで頭をいっぱいにした知愛は気づかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ