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召喚と完結

すみません、出来心です!!

 地下に設けられた祭壇にははっきりと召喚のための陣が書かれていた。

 篝火が焚かれ岩肌のような壁に影が躍る。

 いくつかの捧げものが並べられ、少女が神秘の言葉を唱え続ける。

 篝火に照らされて輝くふわりとした金の髪。エメラルドのような瞳。いずれ咲き誇るであろう花の(かんばせ)。飾り気のない白い衣装が華奢な体を包んでいた。

 彼女の左右には魔術師のローブをまとった二人の男が立ち、やはり同じ言葉を唱えている。

 この日のために選ばれた騎士が周りを固め、有事に備えてあたりを見回す。

 そして──ついにそれ(・・)は現れた。

 召喚陣の中央の上に光がともり、それは瞬く間に人の形をとる。

 さして大きな人影ではない。

 平均的な女性より少し高いくらいの背。風変わりな鎧をつけているが、細身で、いっそ華奢といえるほどだ。

 長い髪を高い位置で一つにくくり後ろに流している。

 男なのか女なのかはっきりしない整った顔。

 ただ、それは血まみれの片刃の剣を手にして、殺気立っていた。

「お前たちは何者だ! ここは、いったいどこなんだ!」

 若い男の声でそれは叫んだ。


 最後のペンが入れられ「天恵の朱理」最終回の最後の頁が仕上がった。

 漫画家、(くろがね)(けい)こと本名、田代(たしろ)圭一(けいいち)は資料で埋もれる仕事部屋で一息ついた。

 二年続いた連載の最後の一頁だった。

 両親を殺し、常に主人公命を狙い続けたラスボスともいえる敵を、主人公朱理が討ち取って勝ち名乗りをあげ、味方を振り返り微笑んだところで話は終わる。

 連載終了を言い渡されて四回分で無理やり格好をつけたところである。

「もう少し活躍させたかったなぁ……」

 圭はぼやいた。

 朱理はお気に入りのキャラである。

 少々女性読者を狙った少女じみた顔立ちをデザインしたことは否めないが、自分の趣味の限りを尽くした主人公である。

 天恵世界も和風にした。

 能力も和名にしてある。

 入魂の一作だったが、読者アンケートの壁に敗れたのである。

 まったくの力不足であった。

 不甲斐ない作者を許してほしい。

「もっと大きなスケールで暴れさせたかったなぁ」

 できれば続きが描きたかったが、いったん終わった話をもう一度描かせてはくれないだろう。

 圭はそれが心残りだった。

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