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<R15>15歳未満の方は移動してください。

少年好きの元悪役令嬢のお姉さんを拾ったら。

作者: 橘 月菜

少年視点で話が進みます。

婚約破棄後の少年好きの悪役令嬢と異世界に召還されて世界冒険している少年との出会いの話です。


この世界では女性はわりと肉食系が多いようです。


R15の表現があります。

「ねぇ、お姉さん大丈夫?そんな所で寝ていると、悪い大人に襲われちゃうよ?」


 僕はギルドの依頼を終わらして、泊まっている宿に帰ろうと夜道を歩いていたら。

 路地裏で屈んで壁に背を預けて寝ている、少し汚れている血のように赤いドレスを着た貴族っぽい金髪のお姉さんがいた。


 まあ、この国では何かの事情で路頭に迷うなんて珍しい事もないけど……。お姉さんは見た感じ貴族風で高そうなドレスを着ているし。この近くの高級なお店を使用した後、従者を連れずに店を出て酔いが回ってこの路地で力尽きたのかな?

 起きてくれれば、後は自分の足で帰れるよね。


 見過ごすのも後味が悪いと思いお姉さんに近寄り、声を掛けた……そうするとお姉さんは僕の方に気怠いに頭を向けて僕の事を見ると、驚いたように目を見開いて……声を出そうとしているのか『ショ……』と言ったきりパクパクと口が開くが声が出てこない。

 僕は後は宿に帰るだけなので、お姉さんの声が出るまで待つことにした。

 それから、少し長い前髪を弄って待っていると……。


「た…す…け…て…お願い…」


 路地裏が劇場になったかのように月の光に照らされて、今まで薄暗くて分からなかったお姉さんの容姿が明らかになる。今まで僕が話しかけていたのはこの世の者とは思えないほどの美しく、お姫様と思えるほどの容姿を持つ豪華な赤いドレスを着た金髪で碧眼の女性だった。


 美しい容姿のお姉さんは、喉を痛めてるのか少し枯れた声だったけどその見た目と合った可憐な声で僕に助けを求めた。

 月の光に照らされてお姉さんは、遺跡で見た天使の壁画を思い出させるほどの幻想的な雰囲気を醸し出している。


 そのこの世の者とは思えない美しいお姉さんの顔を見ると、お姉さんの目元に涙の後が残っていた。

 誰がお姉さんを泣かすような事をしたのかと、今すぐお姉さんの涙を拭いてこの手で助けてあげたいと言う衝動が沸きあがってきたが……ある先輩の言葉が僕の行動を押しとどめる。

 

 『人を助けるという事は、自分の人生にも影響を与える事だ。今日お前が助けたその人のせいで、明日お前が死ぬかもしれない。良く考えて、人を助けるんだな』と何も考えずに人を助けようとした僕を叱った冒険者の先輩の言葉だ。

 先輩はその後、助けた女性と結婚した。先輩は語る。『お前は後悔のない、人助けをするんだぞ』と少し辛そうな表情をしていた。何故そのような表情をするのですか?と聞くと先輩は……今は嫉妬の鬼嫁と呼ばれる今のお嫁さんに、生活圏を縛られていると言う。

 少しでも他の女性と仲良くなると、妻がキレて自分の方じゃなくて女性を襲うので辛いと言っていた。

 悲痛の表情をしている先輩の言葉を胸に刻んで、僕は助けない決断も出来るようになろうと思った。


 さて、どうしよう。


 人助けをした先輩は、自由を奪われた。

 今人助けを行おうとする僕は、何を奪われるのだろう?

 するかしないかうーん、悩む。


「えと……その……」


 考える時間も長く返答が遅れていると……困り顔の僕を見て断られると思ったのか、お姉さんの雰囲気が一変して……子犬から狼に変わり、気の強そうな碧い目は僕を逃がしてなるものかと言う強い意思をみせてきた。


「たす…けて…くれないの…ですか?」


 さっきまで幻想的で儚い雰囲気の美女は、どこへ行ったのか分からないが一つだけ分かる事がある。それは……目の前に居るのは、肉食獣だと言う事を……。


 お姉さんを見てその時、もう一つ僕は思い出した……『俺の妻は初めは、可愛らしいひよこだった。だが……ひよこはこちらが興味を示さないと分かると、ひよこの皮を破り。中からウロボロスが現れた、そして己に興味を示さない俺……お、おれをああああああああ………』と言ってその後、何故か言葉の途中で錯乱した先輩をお嫁さんに引き取ってもらった。

 要するに先輩が言いたかった事は、見た目は子犬でもでも中身はフェンリルと言いたかったのだろう。


 記憶を回想していると何時の間にかその綺麗な手で僕のズボンを握り閉めているあたり、お姉さんの逃がさないと言う意思は本気だと分かり……背筋に冷や汗が流れる。


 助けてって何を助ければ良いの?もしかして、何かに追われてるとか?

 なんか助けて貰う人とは思えない雰囲気なんだけど、むしろ空腹の所に大好物の獲物がきたドラゴンみたいな雰囲気を漂わせてるよお姉さん……。


 これに関わると、僕に危機が訪れそうと勘がそう告げている……。


 お父さんも「綺麗な女の人には、気をつけろ」と言っていたし。

 ある日お酒を飲んで浮かれているお父さんがお母さんに襲われてそのまま結婚したとか言っていたが、お父さんはお酒で酔ってたので冗談だと思っていたけれど……今の状況を見るとあれは真実だったんじゃないかな?と思える。


 僕のお断りしたい雰囲気を察したのか、お姉さんは男にしては細い腰に抱き付いてきた。

 僕の腰にぎゅ~っとお姉さんの身体が押し付けられ、白くて細い腕が腰にガッチリホールドしている。

 その拘束力にお姉さんの柔らかい感触に感動する暇もなく、恐怖が上回り。喉の奥からひぃっと声を出すのを寸前で我慢して、腰に抱き付いてるお姉さんの方にゆっくりと視線を移すと……。


 手負いの獣のような碧い瞳が、僕を上目遣いでじっと見つめていた。

 その碧い瞳に自分の存在を吸い込まれそうになり、慌てて視線を外す。

 そしてだんだん腰に密着してくるお姉さんの頬の感触にぞくぞくするような恐怖を感じて、僕はゴクリと口の中の唾を呑み込む。

 先輩!父さん!助けて!僕襲われる!


 悲痛な心の叫びはもちろん届くわけもなく。

 目下からなんか腰から腹に腹から胸にと、這い上がってきそうな雰囲気がする。

 身体が緊張で硬直して、動けない!

 その時僕の耳にお姉さんの声が届いた。


「に……が……さ……な……」

「これも何かの縁。僕がお姉さんを助けて上げる」


 僕はお姉さんの声を遮り、引きつった笑みを浮かべてお姉さんを助ける事にした。

 さっきのお姉さんは今まで倒してきた死霊型モンスターより、何十倍も怖かった……。

 あのままお姉さんを助けないと、僕の方が助けが必要になりそうな事態になった予感がする。


 実はお姉さんに擬態してる魔物じゃないのかと、密かに鑑定魔法をしたのは秘密だ。

 それで鑑定した結果は人間でした……。


「あ……り……が……と」


 お姉さんはそう言うと安心したのか辛そうな表情が少し和らいでスッと意識を失った。


「どういたしましてって言えば良いのかな?」


 意識を失っても未だに腰に抱き付いてるお姉さんを引き剥がし、お姉さんより低い僕の背に背負うと自分が泊まっている宿に脚を進める。このまま、お姉さんを適当な所に置いてっても目覚めが悪いので言った通りに助ける事にした。


「はぁ……このお姉さんはどこの誰なんだろうな」


 首元に感じるお姉さんの吐く息の感触をくすぐったいと思いながら、このお姉さんは何者なのかと考えてすぐにどうでも良いかと思った。

 何から助けて欲しいお姉さんの事だ、事情なんて聞いても辛いだけだし……僕もお姉さんの事情を知っても助けられる事は少なそうだしね。

 ……事情聞いたら、逃げられなくなりそうで怖いとかじゃないからね?


「お帰りなさいませイオリ様」


 高級そうな宿の門を通り警備兵の人に扉を開けて貰うと、執事服を着た宿屋の支配人のバリスさんが迎えてくれた。


「だだいまバリスさん。今日は二人だから、二人部屋をお願い」

「分かりました」


 バリスさんは近くで控えていたバリスさんと同じ執事服を着ている従業員を呼ぶと、僕を二人部屋に案内させた。

 この宿……シリウスはこの街に着てから、2ヶ月も泊まっている。

 料理もサービスもとても良いので、この宿の支配人のバリスさんにまとまったお金を預かって貰い。今のように別のサービスを頼む時は、預けたお金から引いて貰っている。



 宿の従業員の人が部屋の扉から出て行くのを確認してから、ベッドに向かう。

 二つあるベッドの内のお姉さんが使う予定のベッドに腰を下ろして、お姉さんに声を掛ける。

 実はさっきから、お姉さんの身体がゴソゴソ動いていたので起きてはいるのだろうと思っていた。


「起きてるよねお姉さん?宿のベッドに付いたから、背中から降りてくれないかな」

「………」

「……今からお風呂入りたいから、降りてくれる?」

「……い…や…ですわ」

「え……いやなの?」


 僕の言葉にお姉さんは、僕の肩にしがみついて絶対離れないと言う強固な意思を感じさせる。

 さらにお姉さんは僕の腰に、細くて雪のように白く美しい脚を巻き付けてきた。

 なんてこった……僕にどうしろと言うんだ?この街のダンジョンで、依頼の品を手に入れるのに結構無茶したので汗を掻いてる。服の匂いを嗅ぐと汗の匂いがするのでお姉さんをベッドに降ろしたら、この部屋に備え付けのお風呂に入りたいのに……。


「でも、汗臭いので……」

「あなたの匂いは……不愉快じゃ……ありませんわ。むしろ……好き……ですの」

「ええ……」


 この部屋に着くまで、何故かお姉さんは何度も首元の匂いを嗅いでるような感じはしてたけど……まさか本当に僕の匂いを嗅いでいたなんて!?

 今もお姉さんの芸術のような綺麗な顔が、僕の首元ですぅはぁすぅはぁしてるんだけど……!

 僕は今……難解なダンジョンの奥に潜んでいたレッドドラゴンと寝る間も惜しんで戦った時よりも、今この時、この場所が、人生で一番の命の危機を感じさせた。


 僕はお姉さん()に食われてしまうのだろうか?冒険者仲間から時々聞く、肉食系の女に食われると言う噂は本当だったのだ……。食われれば最後、その次の日には婚姻届を役職に届けているという。そしてその食われた男は妻となった女性に新婚旅行に出かけると言われて、楽園へと連れていかれる。そして、楽園から帰ってくる頃には妻のお腹の中には子供を授かっていると言われている。


 楽園ってどこだよ……。僕達男をどこに連れていこうとするの!


「初めて……なんですの。こんなにも、男の人の汗が……良い匂いと感じたのは。もっとあなたの匂いを嗅いでいたいですわ。すぅはぁ♡」


 お姉さんは、匂いを嗅ぎ続ける。


「んふふ……なんだか今日の朝から辛い事だらけでしたけど、今日の最後にこんなにも素敵な出来事が待っていたのですね」


 お姉さんはそう言うと僕の背後から伸ばした白くて瑞々しい手が、僕の顎を摩る。

 お姉さんのその行為に背筋に電気が走ったかのような痺れを感じて、未知の刺激にガタガタと剥き出しの膝に載せていた手が恐怖で震える。


「えーと、僕はお風呂に入ってベッドで眠りたいと思っているのですけど……そろそろ、離れてくれて欲しいなぁ……なんて?」

「今日は婚約者や王子様、学園の生徒会長に学校の先生……そしてわたくしの弟。そんな方々からとある庶民の女子生徒をいじめているなんて言うありもしない罪で断罪されて、わたくしはすべてを失ったのに……ぐすっ……それなのに……!女神様はやはりわたくしを見捨てては、いなかったのですわぁ!」


 お姉さん……さっきまでのたどたどしい言葉遣いは、どうしたの?今は普通に喋れるんだね。

 あと、僕の話聞いてないよね?

 はぁ、自分の世界に入りこんでるよお姉さん……。


「あぁ……なんて素晴らしい出会いなの♡ずっと……ずーっとあなたのような方を探していましたのよ?でも……探しても探しても見つからず。諦めてお父様が決めた男性と婚約したのに、今朝お城に呼び出されて……婚約者の男性から一方的に婚約解消され、さらに冤罪で断罪されて……お父様からは家族の縁を切ると家を追い出さる不幸の連続でしたのに、最後にはわたくしの求めていたあたなが現れてくれた!」


 そうなんですか……今日は不幸の連続で大変でしたね?だから、そろそろ背中から離れてくれないかな。

 お姉さんはわが世の春を得たと言わんばかりに、嬉しそうだった。

 僕はこの後の出来事が不安でしょうがない。

 あまりに嬉しかったのか、僕の顎を摩っていた手を離して……お姉さんは僕の肩に顎を乗せて、僕の頬に自分の頬をくっつけて頬ずりを始める。

 お姉さんの頬は、柔らかくて少しべたついていた。

 お姉さんは涙ながしてたから、しょうがないね……。


「んんっ……」

「すごく柔らかいですわぁ♪はぁ、なんて触り心地なの。もっとあなたと早くに出会っていたなら、わたくしの屋敷に連れ帰って……お部屋でむふふ♡」


 僕の背中に感じる大きくて張りのある存在を、グニュグニュ押し付けながらお姉さんは何かを妄想してるのか悶えている。

 頬に摩擦を感じながらこの時ばかりは、お姉さんを断罪してれてありがとうと断罪した関係者に感謝した。もちろん無実の罪で断罪するのは、いけないと思うけどね。

 異常なテンションのお姉さんに、良い加減疲れてきたし眠いし……。


「そろそろ、離れてくれないと僕もそろそろおこ……」

「うっ……」

「う?」

「うぇえええん!」

「!?」


 怒ろうとしたら、お姉さんに先手を打たれて泣かれました。

 これじゃ……泣いてる人を無理やり引き剥がせないじゃないか。

 お姉さんは今日いろいろありすぎて、情緒不安定になっているみたいだ……。


「うっ…ひっく…ぐすっ。ごめんなさい、あなたの都合があるのは分かっているのです。でも……でも、今日は今まで信じていたものを否定されて、寂しくて、苦しくて、あなたに甘えてないと自分が自分でいられなくなってしまうのですわ……。だから……今この時だけは、わたくしの我侭に付き合って貰えないかしら……?ぐすっ……もちろん、このお礼は後日させていただきますわ。今のわたくしの精一杯のお礼ですから、期待はしないでお待ちくださいませ」

「まあ、そんな出来事があったなら……しょうがないよね?僕も本当は……いやだけど……お姉さんが元気になるなら我侭に付き合っても良いかな?」


 話を聞いてると、無一文で家を追い出されてるわけだししょうがないよね。

 このまま好意を抱いてる僕に、拒絶されたらお姉さんがどうなるか分からないし……今夜くらいはお姉さんの我侭に付き合っても大丈夫かな?

 僕の言葉を聞いて嬉しいのか碧い目からまた大粒の涙を流しながら、お姉さんは突如真面目な顔でこう言った。

 その真面目な顔にさらなる不安を抱きながら、静かにその声をまった。


「じゃあ……ちょっと、ベッドの上に仰向けになって今から何が起きても気にしないで欲しいのですわ」


 お姉さんが僕の身体から降りたので、お姉さんの言う通りにベッドの上に仰向けになった。

 ふぅ……少し疲れてたから、ベッドの柔らかさが心地いいなぁ。

 それにしてもお姉さんは僕を仰向けにして、何をするのかな?

 なんか眠くなってきたし、早くやってくれないと寝ちゃうよ僕は……。


「いいですね?今からわたくしがする事は、気にしてはいけませんよ?ちょっと痛いかもしれないですけど、今夜だけですし……男の子なら耐えられますよね?」

「ふぁ~あ……あくびがでちゃった。ごめんね。それと痛みなら、魔物との戦いに慣れてるから大丈夫だ……よ。僕は女神アリスの力で異世界から召還された勇者なんだから、そのくらい楽勝さ……。女神さ……まから、この世界をす…く…しめい…くー」

「あなたは勇者様でしたの……ならあなたが平和にした世界で、わたくしとあなたの子供はきっと勇者の力を受け継いで元気な子になるでしょうね?んふふ♡」


 僕の上にのしかかってきたお姉さんが、何かの薬を飲んでいた。

 もうお姉さんが何を言っているのか、分からない……。

 お姉さんの柔らかく暖かい身体が、僕を包みこんで行く。


「明日にはあなたの子が、わたくしのお腹に授かっているでしょうから。明日の朝その事実を知ったあなたは、責任間の強い勇者様はわたくしを傍に居させてくれる筈……そうなったらわたくしとあなたはずっと一緒にいられますわね」


 あの薬は、ぼやけて上手く思いだせないけど……あ、そうだ。

 あれは先輩のお嫁さんが結婚を踏み切れない先輩に、結婚をさせるために使われた薬だ!

 え……となんだっけ?うーん。あ、思い出した!


「絶対妊娠の魔法薬なんて……こんな物に頼る事になるとは、学園に居た頃のわたくしなら思いませんですの。今朝お母様が念のためにと手渡してくれたこれが、今必要になるとは人生何が起こるか分かりませんわね」


 絶対妊娠の魔法薬だ。あれを飲んだ先輩のお嫁さんが先輩と夜を一緒に過ごしたら、次の日にはお腹に子供が出来たって喜んでいたのを思い出したよ。でも、先輩は青い顔してたけどね

 妊娠はなんで分かったかと言うと、魔法の虫メガネで妊娠しているか判別できるんだ。この世界にも便利な道具があるんだね……。


 後先輩のお嫁さんが満面の笑みで先輩に責任とってくださいねと、紙を渡してたのが記憶に残っていた。

 あの後、先輩は役所へ行く用事が出来たので悪いが急遽パーティーを組む事が出来なくなったと言っていたのを覚えている。


「んっ…ちゅっ…」

「んんっ」


 目蓋を開けていられないので、外の様子がわからないけど……。

 僕の唇になんか、ぷるるんとした柔らかいのが触れてるんだけど……なんだろう?

 何度も何度もその柔らかくて、触れていると気持ち良いその感触に僕は段々と夢中になる。


「ちゅっ…。ちゅぷ…はぁ…はぁ、そろそろいいかしら……」


 気持ち良い感触が離れていくのが少し残念に思っていると、急に下半身が冷え込んだと思ったら。少しチクっとした痛みの後に暖かさに包まれた。

 でもそのくらいの痛みは、ぼくに……は……きかないよ。

 だって……ぼくは……ゆうしゃだから……ね。


 朝、僕の目の前に魔法の虫メガネの結果を嬉しそうに僕に見せる元貴族の令嬢のシャルに『妊娠したので、責任とってくださいですわ♡』と言われた。

 この後、役所に出来れば向かって欲しいと変な圧力のある笑顔で言われた。


「あなた♪今日は天気が良いので、ちょっとそこの役所に向かいませんか?」

「いや、散歩気分で気軽に役所行くとか言わないで欲しいな……」


 今朝から何故か、シャルが先輩のお嫁さんみたいな感じになっている。


 昨夜、身に覚えがないけれど……どうやら僕はこの歳で大人の階段を登ったみたいだ。そして、現実感が無いけどシャルのお腹に僕とシャルの子供が出来たとみたい。先輩の注意でいろいろ注意してたつもりが、油断をしていた……先輩ごめん僕先輩の教訓をいかせなかったよ……。

 僕の腕をシャルが抱き締めて、昨日の辛そうな表情では無くて……とても幸せそうな表情をしていた。


「じゃあ、今日はあなたを一日中抱き締める事にしましたわ。それなら、わたくしもお腹の子も安全であなたと一緒に居られて幸せですわね♪」


 シャルはそう言って、僕の背後から僕全体を包みこむように抱き締めた。

 僕は背中に感じる、シャルの暖かく安心する感触に身を任せて……シャルの手を撫でながらこう思った。


 世界を平和にして、シャルとお腹の子供と一緒に生きていくのも悪くないかなと。


                                            おわり


思いつきで、そのまま書いてたらこうなりました。

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