クソニート勇者
息抜きに書いてみました。
笑いが雑かも・・・
「そなたメルを我が王国の六代目勇者として任命する」
「はっ」
「勇者として見事と魔の王、魔王を討ち取ってみせよ!」
何人もの大臣に囲まれながら王は膝まづいている青年にそう言った。この青年、メルは六代目勇者として任命された。
勇者は魔王を倒すべく明日から出発することになっていた。
★★★
一ヶ月後。
「勇者ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
バタンッ!
城の一室を乱暴に開ける女がいた。女の名はサシャと言った。サシャは魔法使いであり、本当ならば勇者と一緒に魔王を倒す旅に出るはずであったのだが、一ヶ月経っても出発しようとしない勇者に突入してきたのだ。
「うぉっ、ビックリしたなぁ・・・なんだ、サシャか」
「なんだ・・・じゃ、ないでしょぅ!このニート勇者!!」
そう、この男。勇者に任命されたのはいいが、一歩もこの部屋から出ようとせず、引きこもりのニート勇者になってしまっていた。
「いつになったら旅に出るんですか!」
「無論、世界が平和になってからだ」
「全て手遅れじゃん!」
サシャはメルの襟を強引に掴み上げ、鬼の形相で睨みつける。
「いい?今もこうしている間にもあの魔王は力をつけて私たちに対抗する準備を始めているの。私たちも旅をして力をつけないと意味がないの!」
「と、言われてもな・・・俺は強いし」
「強いって・・・うう、確かに強いけど」
そう、この男。何故だか強いのだ。過去にかなりの経験を積んでいたらしく、勇者としての実力はかなりのものであった。
「それじゃぁ!どうして行かないの!」
「・・・そうか・・この話をするときがきたのか」
突然、メルの表情が暗くなる。
メルは確かに悪ふざけがあったりして周りを困らせる。今のように。だが、こうした悲しげな表情はサシャにとってはかなり驚いてしまうものだったりした。だからこそ、メルのその言葉にサシャも真剣な表情になる。
メルは言った。
「実はな・・俺・・・・・最近目が痛くて」
「うぉぉぉぉぉぉい!!!」
サシャは思いっきりメルの顔をぶん殴った。
きっと彼女ではなくても同じように彼の顔面を殴ったのは至極当然のようにも感じた。
「ああーーー!もうっ、心配した私が損した!」
★★★
「ふむ・・・これが六代目勇者か」
魔王城の玉座にて魔王、ベルヘルトは水晶を見ながらそう言った。彼女は女でありながらも魔王になり、歴代最大の力を持った魔王であった。
魔物たちは皆、その圧倒的な力にひれ伏していた。
そんな彼女も暇をしていたところ、部下から勇者が現れたという報告を受けたのだ。自分と同じくらい、それよりも強いかもしれない存在に彼女は喜んだ。
「だが勇者よ。私がここへ来る最短のルートには様々な罠や部下を配置させている。そう簡単にはこの魔王城にはたどり着けんぞ?」
「流石は魔王様。これで、勇者も苦戦はしましょう。策士ですね」
「はっはっはっはっ、褒めるな♪褒めるな♪」
魔王の高笑いは魔王城中に響いていた。
「さて、第一の難所はこのブルテリック山脈だな」
ベルヘルトの覗き込む水晶の中には魔王城へたどり着くために必ず通るルートの一つである巨大な山脈があった。
「はい、ここにはゴーレムが百体潜んでいます。最短ルートで来るなら、一週間。最低でも十日でたどり着くことになるでしょう」
「ふっふっ・・・楽しみにしているぞ?」
★★★
一ヶ月後。
「なぁ・・・最低でも十日でたどり着くんだよな?」
「は、はい・・・どんなに遅くても」
「・・・・じゃぁ・・なんで・・・なんで引きこもってるんだクソニート!」
サシャと同じことを魔王も感じていた。
★★★
バーーーーンッ!
というあまり耳によろしくない爆発音が城中を満たしたと思うと勇者メルのいる一室にいきなり魔王ヘルベルトが現れた。
そう、何を隠そうヘルベルトはド短期でも有名な魔王でもあった。
いきなり現れたベルヘルトに驚くメルだがあからさまなその角やマント、服装から敵だと認識すると、直ぐに臨戦態勢になる。
「メル!何かあった・・・って、何この状況?」
音を聞いて急いで出てきたサシャも魔族と対峙しているメルとの様子がなんとも言えず、その場の状況を遅れながらも分析する他なかった。
「お前が六代目勇者だな?」
「ああ、そういうことになっているらしい」
「ふむ・・・ならば我も名乗ろう。我が名は魔王ヘルベ「契約に誓いし魔道の魔人、呼びいる声は一閃の雫」あれ?ん?何その魔法?我知らないなよ?ん?そういう流れ?「聖なる伊吹はその永久に刻まん!ホーリーランス!」
次の瞬間、ヘルベルトを取り囲むように十本もの光の槍が出現した。メルの合図によってその槍は同時にヘルベルトに向かって放たれる。
「はっ!」
それでも魔王のヘルベルトは周囲に闇魔法によって球状の盾を作り出すと、その全てを弾き返した。
「・・・・ふぅ、流石は勇者か。だが、これで我の力は知ったであろう?ならば魔王城まで我の困難を超えた後に来るがいい。決着がそこでつかせよう。くはははははははっ!」
ヘルベルトは少しばかり勝ち誇ったようにニヤリとすると高笑いしながら窓から外に消えていってしまった。
後に残るのは呆然と立っているメルとサシャだけであった。
「メル・・・これはもう」
「サシャ・・・分かっている。悪いな、今まで待たせてしまって」
「いいの。あんたがやる気になってくれたなら。それじゃぁ、行きましょう。直ぐにでも行ける準備はしてあるわ」
サシャの声に反応するようにメルは振り返ると部屋の隅に置いてある自分の剣を手にとった。
「行こう・・・グルメ巡りに」
「・・・・・・」