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すみません。この話の後半部分を差し替えましたので再投稿させていただきます。

鯨とは哺乳類のクジラ目の鯨凹歯類に属する水生動物の総称であり、その形態からハクジラとヒゲクジラに大別される。そのクジラ目の一種である、シロナガスクジラは地球上で最大の哺乳類でもある。


日本では古来より捕鯨などをおこなっており、鯨を祭った神社もある。それに小学校の給食などにも戦後出たこともあって、日本人にとっては馴染みの深い生物の一つでもあるだろう。


かくゆう俺もスーパーで極たまにではあるが、クジラの肉を買ったり、国内のクジラウォッチングなどのツアーに参加したりもしていた。


俺の変な分かりづらい説明を長々聞くよりも、クジラについてならこれを見ている人たちの方が詳しいと思うので、長話になる前にここらでこの話は終わっておこうと思う。長話しても誰の得にもならないしな。


その生物を一言で言い表すならクジラだった。


先ほどの滅んだ村で発見した亀の魔獣が可愛く見えるほどの巨体。小中学校によくある25mプールよりもさらに大きいかと言うくらいの大きさ。


体は白。真っ白ではないが全体的に白かった。肌はゴツゴツとしていて、なんとも皮膚は厚そうだ。目は何故か三つあるが、この世界は俺が元いた世界とは違うのだ。ちょっとくらい個性があったところで今更驚かない。この第七世界には平気で首が二つある犬の魔物がフラフラしているんだ。クジラもどきの目が三つあったとこで誰も驚かないだろう。これくらいで驚いていては身が持たない。


まぁ、目が三つあるクジラは別にいいんだ。俺が驚いたのはそこではない。


俺は知らない。


――――空を飛ぶクジラなんて……。


結界を破った先に見えたのは空に浮かぶ大きな白い塊。そうクジラだ。


奴は優雅に空中をまるで遊泳するかのように泳いでいた。


結界を破り、数秒で駆け付けた俺たちを見ると奴は笑う。嘲るように、見下すように、そして何よりも見せつけるように笑う。


ギラギラとした歯を見せ、口の中には恐らく家だったであろう木々と大量の土が見える。


間違いない。アイツだ、あの村を滅ぼしたのも、あの亀の魔獣を殺したのも間違いなくこのクジラだ。奴は笑った後、まるで見せつけるように口の中の物を一気に飲み込む。



「これは……。遅かった……」


シャルが小さく自責の念を漏らす。


――――俺たちは間に合わなかった。


そこにあったのは村でもなんでもない。ただの更地だ。家は木造の家は一軒も跡形もなく、地面にはあの村と同じく大きなギザギザの穴がいくつも空いていた。


周囲の木々のほとんどはなぎ倒され、空に浮かぶそいつの下には何もなかった。草の一本たりとも、そして村人の一人もいなかった。


全てはもう、遅かった。小説のように間一髪村の危機に間に合うなんてことはなかった。


全てが終わってしまった後のどうしようもない空間だけがそこにあった。


「お兄ちゃん……」


シャルは目の前の化け物を睨み付ける。


きっとシャルたちはこういう場面で間に合ってきたんだろう。村が滅びてしまう前に颯爽とかけつけて来たに違いない。


俺とシャルたちは違う。


常に間に合わなかった俺と違い、彼女たちは常に正しい道を選び続け、そして救ってきたに違いなかった。今回はたまたま間に合わなかったに過ぎない。


しかし、彼女はその一回が許せないんだろう。


剣を持つ右手が強く握られているのが隣で見ている分にはよく見えた。


「シャル、悔しがるのも、反省するのも後だ。まずはアイツをどうにかしないと」


上を見ればクジラは悠々と空を漂い、逃げ出す気配も特にない。しかし、ここでコイツを取り逃がせば後々の脅威になるのは目に見えている。そして、そいつが俺たちの姿を視界に入れてから俺の第六感はビンビンに反応していた。


俺のたしかな感覚が警鐘を鳴らす。


こいつはやばい。


「姉貴、どうするよ?」


上から降りてきたティナとシャイロ。二人の目にも哀愁の影はさしていた。それでも、この化け物をどうにかしなければならないということは分かっているのか、ティナもシャイロもただ黙ってシャルの指示を仰ぐ。


「うん、とりあえず。あの化け物を倒すよ」


シャルは剣を握りしめ、睨み付けるように空中に浮かぶ化け物を見たまま、俺やティナ達の方を見ずに短く応えた。


「来るっ!」


シャルがそう言ったあとすぐだった。


「ガアアアアアアァァァァァァァ!」


そいつまるで俺たちが集まるのを待ってたかのように重低音で唸るように叫ぶと、大きな口を開け急降下してくる。どこぞのアトラクションよりも命が懸かっているせいもあり断然迫力的である。


――――速い。


その動きは巨体に見合わず、とても速い。


確かに巨体に似合わずその動きは速いがまだ俺が目で追える範囲だ。シャルの幼いころの方がまだ速かった。そんなシャルの訓練を見ていた俺にとっては避けることくらい無理のない話だ。


だからこそ、俺シャルに向かって心配するな、という意味もこめ「シャル、俺のことは放っておいて大丈夫だから攻撃に専念しろ!」と、言おうと思ったのだが、


「シャ――――」


俺の言葉は最初の二文字しか発することができなかった。


「お兄ちゃんっ!」


理由はこのセリフを聞けば十分分ってもらえるだろう。我が愛しの妹様が俺がしゃべる前に俺の体を横から抱きさらうかのように危機を脱したからだ。予想だにしていなかった体の動きに思わず舌を噛んでしまった俺は目尻に涙を浮かべながらシャルに問い詰めようとした。


しかし、当のシャル本人は何食わぬ顔で、まるで俺のことを羽根をもつかのように軽く抱きかかえるとクジラの尾が目の前を通るのに合わせてその剣を持つ右腕を振るう。


物凄い速さだが、ただ何気なく振っただけのように見えた剣。


だが、その剣先からはその軌道に沿うように半月型の斬撃が飛んでいた。


「グラァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


俺が知っている五年前から木刀で斬撃を飛ばし、岩をも切り裂いていたシャルである。そんな彼女がそれから五年修業を積み、そして何やら凄そうな剣で放った斬撃。たとえ空飛ぶクジラでもその斬撃には為す術がないようで、大きな尾が図体から切り離された――――かに見えた。


「え?」


そんな間抜けな声を出したのは俺なのか、それとも両方なのか。


確かにシャルの斬撃はクジラの尾の付け根を切り裂いた。俺の目にもはっきりと見えたし、切ったシャルも見ているだろう。


しかし、再び宙に浮かび上がったクジラには長い尾がしっかりとついており、その体には傷一つない。奴は空中を漂いながら再び笑う。


どうやらピクニックの時に出会った魔獣と違い、空飛ぶクジラさんは一瞬で終わってはくれなさそうだ。


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