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短いです

「なんだ……これ……?」


村にたどり着いての俺の第一声はこれだった。


森の中で謎の青年と出会って、時間にして数時間後、俺達は目的地の村にたどり着いた。道なき道を地図だけを頼りに進んでいったため、開けた場所に出た時の達成感は本来なら一入だっただろう。


そう――本来なら……。


「これは……一体!?」


続くシャルも同じように驚愕の色を顔に隠せない。


「魔獣の仕業か……?」


ティナのつぶやきに一番下の妹であるシャイロが応えた。


「どうだろうね。大きな魔獣だと聞いていたけど流石にここまでの力があるのかどうか……」


やはりティナもシャイロもその動揺が表情と声に出ている。


まぁ当たり前か。いくらなんでも流石の勇者様御一行だって……。


―――――村一つなくなっていれば狼狽えもするだろう。


そう、俺たちが訪れた先には村なんてなかった。


あったのは更地といっていい場所だ。


そこはまるで隕石でも降ったかのように所々地面は陥没しており、そこにはただデコボコのへこみと所々に家の柱らしき木の棒だけがあっただけで他には何もなかった。


地面に大きく空いていたそのへこみは完全な円ではなくギザギザと歪な形をしている。何といえばいいのか、まるで何か大きな生物に“齧られた”ような跡。


「ねぇ、お兄ちゃん。本当にここで間違いないの?」


「あぁ、間違いないと思う」


手にもつ地図と方位磁針の動きはここが目的地であると示していた。そうであってほしくなかったがほぼ100パーセントここが俺たちが向かっていた村だろう。俺自身も信じたくはない。


「どういうことだ……? 村一つがまるで跡形もなくなるなんて……」


「分からない……ティナちゃん、私は魔力反応感じないけど、ティナちゃんはどう?」


「あぁ、俺も魔力反応を感じない……。間違いなく魔術以外で破壊されたんだと思う……」


魔力反応がない。このことが示すことは単純明快に、ここで魔術が使われていないということをさす。


魔術や法術はその強さに応じてその場に残り香を残す。それが魔術反応と呼ばれるものだ。


レベル0やレベル1の残り香なんてすぐになくなるが、村一つを魔術か法術でこのように滅ぼそうと思えば、レベル4か最高レベルの5程度の魔術や法術がいるはず、そうなればその残り香の濃さは段違いに濃く、たとえ一か月後でも残っているはずだ。それがないということは、端的に言ってこの村の消滅には魔術はかかわっていないことになる。


俺のような半端な才能の奴じゃなく魔術のエキスパートのティナが魔術反応を感じないというのだ。ということはこの村の消滅についてはほぼ100パーセント魔法関係はかかわっていないということで間違いないだろう。


「と、なれば魔獣の線が濃厚か……。村一つ滅ぼす魔獣なんて冗談だろ……」


俺が昔戦った魔獣も強かったがアイツは村人を皆殺しには出来ても、このように村を更地に変えることはおそらく無理だっただろう。


魔力を感じさせずに魔法を使うなんて人間には不可能だ。そして普通の人間には力技だけでここまで出来る人間なんておそらくいない。となれば魔獣の仕業ということになる。


「なぁ、姉貴? 魔獣の気配はないのか?」


「……うん、さっきから探っては見ているんだけど、魔獣どころか生きている生物の気配すら近くには……」


シャルが悔しそうにティナの言葉に返した。


まさか、ここまでだとは……。軽い気持ちに考えていた俺を殴りたくなる。


俺たちが急いでいればこの村への到着を一日半は縮められたに違いない。この惨事がいつ起きたのかは魔力反応がない時点で予想もつかないが、もしかすれば昨日だったのかもしれないのだ。


早くついていればどうにかできたのかもしれないというのに……。


どうしようもなく遅い自責の念が俺を突き抜ける。


俺たちは……いや俺はきっと心のどこかでこの任務を軽く見ていたのかもしれない。そもそもAランクの冒険者チームが音信不通の時点でこの事態は頭に入れておかないといけなかったのだ。最悪の可能性を考慮しないで何が凡人だ……。


主人公ヒーローではない俺が最善の未来をつかみ取れる可能性なんて、いつだってないに等しかったというのに、俺はシャルたちと再会出来たせいかすっかりそのことを忘れていたみたいだ。


昔から、俺の後悔はいつだって遅すぎた……。


昔から主人公ヒーローのように未然に何かを防ぐことなんて無理だった。


それだけそれ嘆こうとも俺にはそのための才能が欠けていたのだ。


悔しい……。この状況を見るにこの村の生き残りは既に絶望的だろう。


不甲斐なさのあまり俺がグッと握り拳を握り締めた時だった。



一陣の風が吹き抜けた。


「ん……。この匂いって」


その風が運んできたのは、特徴的な香り。決していい匂いとは口が裂けても言えない。その匂いはまるで何かが腐ったような刺激臭。村人の死体か、それとも別の生き物の死体か、とにかく何かしらの物はあるだろう。


「うん、お兄ちゃん行ってみようよ。何か分かるかもしれない……」


シャルも気付いたのか俺と同じく風上の方向を見る。村の入り口から西へ向かったところ、そこはまるで何か“大きなもの”が通ったかのように生い茂った木々がなぎ倒されていた。


そのシャルに続くようにティナもシャイロも黙ってその方角を見つめる。


「行ってみるか……」


ここで地面にあいたクレーターを見ていてもしょうがない。


そこに何が待ち構えているかそれは分からないが、何も情報が得られないここにいるよりかはましだ。藪を突いた先にあるのは棒なのか、それとも蛇なのか……。何があろうと俺たちはそれを知らなければいけない。


俺たち四人は顔を見合わせると風上へと足を進めた……。



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