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この話は99パーセントが会話文のみで出来ています

勇者である少女と奴隷である青年が自らの家に向かって手を繋ぎ歩いているころ。


ところ変わって王都の住宅地区にある見た目は普通の一軒家。もちろん、見た目は普通のなどと言った手前、中身は少しばかり普通じゃなかった。普通の住居のように家具も整理され部屋も整頓されているがこの家には隠された地下室があり、そこはある組織の隠れ蓑の一つとなっていた。


そんな家の玄関をくぐったのは一人の男。真っ黒なキャップを深く被り、これまた真っ黒なワイシャツを着て、ズボンはジーンズ。よれよれのワイシャツに履きつぶしたジーンズ、これだけでもどことなくその男がだらしないという印象を与えた。事実それは間違っていない。男の私生活はだらしなく、適当だった。寝たいときに寝て、食べたいときに食べる。そして吸いたいときにタバコを吸う生活を何年も続けてきたし、これから先もやめるつもりはなかった。


そんな男は一階の書籍のような部屋に入ると辺りを見渡す。


えーっと、これだっけな、いや、これだったかな。


そう独り言をいいながら本棚にあった本を抜いたり押したりすることしばらく、ある本を押すとカチといった何かがハマるような音とともに壁側の本棚が人知れず動いた。本棚がずれた先には階段が一つ。暗闇に覆われたその階段を男は軽い足取りで降りていった。男が階段を降り始めると本棚はまた人知れず動き、階段への道を閉ざした。










「いやぁ、わりぃな。少し遅れた」


「遅いぞ怠惰。お前が集合をかけたくせに一時間も遅刻とは何を考えている」


「わりぃわりぃ強欲、そう怒るなよ。少し面白いやつを見つけてさ……。しっかし。嫌だよな、歳をとるってな。本棚の仕掛けを思い出すのに時間くってしまったぜ」


「タバコの吸い過ぎじゃないのかい? なんか脳細胞が破壊されるって聞くから……」


「脳細胞が破壊される前にコイツの脳細胞はないから大丈夫よ」


「ひでぇな、嫉妬。かわいい顔してくるくせに物言いだけは厳しいよな。そんなんじゃオジサンみたいに行き遅れるぜ。カッカッカッカ」


「うるさいわよ! 串刺しにされたいの」


「串刺しにする前に強欲であるこの俺が真っ二つに切り裂いてやる」


「全く上司の扱いがひどいやつらだ……」


「基本的に何もしないくせになにが上司よ!」


「おうおう、怖いぁ……あれか今日はあの日か?」


「殺す!」


「っておい、やめろ暴れるなって悪かったら能力使うなって地下室全壊させる気か」


「……ふんっ!」


「黙っていればお前は大和撫子のようで可愛いっていうのによ……。あぁ、部屋ん中が植物だらけじゃねぇか……」


「何なのよ、そのヤマトナデシコって?」


「まぁ褒め言葉だよ。この俺様が褒めることなんて滅多にないんだから大人しく受け取っておけ、カッカッカッカ!」


「なんか馬鹿にされている感じがするんだけど……今度は本当に刺して内臓引きずりだすわよ……」


「まぁまぁ、嫉妬落ち着いて。とりあえず怠惰も早く座りなよ、話があるんだろ?」


「あぁ、そうだったそうだった。まぁ、見てくれは多少悪くても話は出来るからな――にしても、今日は良く集まったな。強欲に嫉妬に暴食。三人も来てるなんていい誤算だぜ」


「いや、でも裏を返せば半分は来てないことになるけど……」


「そんな細かいこと気にすんなよ暴食。お前は普段細かすぎるのが玉に瑕だ。戦闘の時みたいに大雑把にいけばいいのによぉ」


「あんたが大雑把すぎるだけよ。もっと暴食を見習いなさい」


「いやなぁ、人間もっと怠惰に生きないといけないと俺はおもうぜぇ」


「それよりもだ、怠惰。傲慢は来てないのか?」


「傲慢か? 来てないだろ空見てみろよ。雨どころかバリバリの快晴だぜぇ」


「むむ、そうか傲慢を待つために三日前からここにいるというに……」


「ねぇねぇ、暴食。相変わらず強欲は馬鹿ね」


「嫉妬、流石に馬鹿は言い過ぎだとおもうけど……」


「いや、あれは怠惰に次ぐ馬鹿よ」


「失礼だな嫉妬。いくらオジサンが頭良くなくても流石に強欲よりかは頭さえる自信があるぜぇ――しっかし、強欲も諦め悪いよな。傲慢に何回負けたと思ってるんだよ」


「うるさいぞ怠惰。次こそは勝ってあの包丁を我がものにするんだ!」


「……傲慢、いい加減諦めたらどうなのよ?」


「うん、僕もそう思うな。いくら強欲が強くても相性があるし……」


「うるさいぞ嫉妬、男にはやらねばいけない時があるのだ!」


「カッカッカッカ、そういって何回負ければ気が済むんだぁ。やめとけやめとけ、あいつは本物だ。強欲には相性が悪すぎる。下手に機嫌損ねるとその鎧ごと切り抜かれるぞ。嫉妬みたく綺麗なバラには棘があるっていうからな……。いや傲慢のあれは棘とかそんなちゃっちなもんじゃねぇな刃……いや、包丁か」


「上手い事言っていると思ったら大間違いよ。だから馬鹿なのなんなのって言われるのよ、アンタは……。それに傲慢ほど私は美人ではないことくらい自分でも自覚しているわよ」


「え……、僕は嫉妬も傲慢も同じように美人だと思うけど……」


「暴食もお世辞くらいは言えるのね。照れておいてあげるわ」


「いや、僕は本当に……」


「まぁこの俺様からしても嫉妬は傲慢と同じくらいに美人だから気にするなって」


「中年のオッサンに言われても何も感じないわ。むしろ死んでほしい、いや死ね」


「ひでぇな、オッサン泣いちゃうぜ?」


「とりあえず、この気持ち悪いオッサンは置いておいて……そういえば思ったんだけど、暴食ならどうなの? 相性いいみたいだし。能力的に」


「うーん、どうだろう? 傲慢が剣技だけなら僕にも分があるのかも……」


「ひでぇな、おい。暴食と傲慢なら相性は間違いなく暴食がいいが、おそらく千日手になるんじゃねぇか?」


「うん、僕もなんとなくそう思うよ。飲み込んでも中から切られそうだし、押しつぶそうにも当たりようがないと思うし……」


「へぇーそんなもんなの?」


「相性ってもんは確かにあるかもしれない。だけどなぁ、それを覆す力が傲慢にはあるからなぁ。それに俺でもアイツの底は知らない。何か奥義とかいう漫画的なものを持っていたら暴食でも下手すると一瞬かもな。なんて言っても奴は本物だしなぁ――――っておっといけないいけない。今日は傲慢の話をするために来たんでもなんでもなかった」


「そのマンガってやつがそもそも何か分からないけど……そうだったね、今日は話し合いに来たんだ。それで話ってなに?」


「漫画っていうのは本だよ絵がいっぱいある。まぁ漫画の話は置いておくぜ――――これから先はちっとまじめな話になるぜ。――第一の封印のおおよその在処が分かった……」


「おぉ、本当か! 怠惰!」


「それは本当なの? 怠惰」


「そう慌てるなよ、強欲に嫉妬――――場所はこの国の西にある村のどこかだ。村自体は十くらいの村があるからそれのどれかになる。現地にいって色々と調べてもいいんだが、めんどくせぇ」


「あんた、たまには働きなさいよ」


「まぁまぁ嫉妬。怠惰はめんどくさがりなんだから怠惰なんだし……」


「カッカッカッカ、暴食は俺のことをよく分かってるなぁ――――それでだ、もう面倒だしいっそあの周辺の村をすべて滅ぼすことにする。ナイスアイデアだろ? だれか行きたい奴いるか?」


「俺は断るぞ。そんな辺境の村に俺を満足させるほどの武者はいないだろうし、何せ大規模に滅ぼすなら俺の力はちと不向きだ」


「私もそんな辺鄙な場所にいくのは嫌よ」


「じゃあ僕という訳だね……。確かに僕の力なら向いているだろうし……。分かったよ……」


「おっ暴食が行ってくれるか……それは助かるな。俺も楽出来てうれしいぜ。憤怒がいれば憤怒に頼んでもよかったんだけどアイツいないしな」


「いないものはしょうがないよ。特に滅ぼす期間なんてないんだろ……?」


「そうだなぁ。どうせまだ時間はあるし、そこまで焦ることはねぇ。マイペースにやってくれ」


「そうか……うん、僕の弟も久し振りにお腹一杯食べられるって喜んでいるよ……」


「じゃあこれで今日の会議は終わりか?」


「そうだな、終わりだ。後は各自勝手にしてくれ。俺は寝る」


「それじゃあ私は行くわね、暴食頑張りなさいよ。この国には勇者とかいうのもいるらしいし。まぁ、貴方の敵にはならないと思うけど」


「ありがとう嫉妬。それじゃあ僕ものんびりといくよ――強欲はどうするの? ってあれもういない……」


「相変わらず、すぐどっかいくのね。強欲は……」


「あ、そういえば怠惰……」


「あぁ、なんだ?」


「一つ聞きたいことがあるんだけど、さっきこの部屋に入った時に面白い奴と出会ったとか言ってたけど何かあったのかい? 怠惰が人に興味を持つなんて、よっぽどの美人かい……?」


「あ、それ私も気になっていたわ。どうなの怠惰? まさか、いま巷で有名の勇者様ってやつ? なんでも傲慢並みに美人だって話じゃない……」


「いや、だからお前も傲慢並みに美人なんだけどな……。まぁいいや、会ったのは美人でもなんでもねぇ、男だ」


「男!? まさか、アナタってあっちだったの? ねぇ暴食今すぐ逃げたほうがいいわよ」


「おいおい、そんなわけあるかよ。俺はちゃんとした性的嗜好の持ち主だって……」


「珍しいね、怠惰が男の人に興味を持つなんて……。よっぽど才能でもあった……?」


「カッカッカッカ。いや、魔力は確かに膨大だが、才能なんて欠片もねぇ。魔力があってもそれを使いこなせる才能がなければ宝の持ち腐れ。はっきり言って弱すぎて話にならねぇよ」


「へぇ、じゃあどうしてそんな奴が気になったのかしら?」


「それは―――俺に似て黒髪黒目だったからだよ」


「へぇ、それは珍しいね。嫉妬は黒髪だけど目は赤みかかってるし。傲慢は紫だしね。僕は髪は黒っぽいけど目は茶色い。色々な場所に行ってきたけど、完全に黒髪黒目って怠惰だけだよ。そもそも、黒髪自体少ないっていうのはあるけど……」


「まぁ。黒髪黒目は確かに珍しいけど第七世界でも探せばいるでしょ。ほら似たようなやつらは多いんだし――でも、可哀想よね。こんな冴えないオッサンとたとえ特徴だけとはいえ似るなんて……」


「カッカッカッカ。この俺のかっこよさが分かんねぇなんて、まだまだお前もお子ちゃまだなぁ」


「何ですって! 誰がお子ちゃまよ、誰が!」


「嫉妬とりあえず落ち着こうよ。暴れても拉致があかないし……。力の無駄使いだよ……」


「確かにそうね。こんな馬鹿に使うなんて私の能力が穢れてしまうわ。それとは別にタバコの吸い過ぎよ、怠惰。一日に何本吸えばいいのよ」


「仕方ねぇだろ、お前たちも知ってのとおり俺はこまごまとした火力調整できやしないんだ。タバコの火をつけようとして王都がすべて焼けこげたらシャレにならんだろ。だからこうしてタバコからタバコに火をつけてんだよ。どうだお前らも吸うか?」


「そう言ってただ吸いたいだけの癖に……」


「僕は遠慮しておくよ……」


「カッカッカッカ、そうか、それは残念だ」


「暴食、こんな馬鹿おいておいてさっさと行きましょ」


「あぁ、うんそうだね。僕もその村に向かうよ……」


「じゃあ、俺もいきますかね」


こうして誰も地下室にはいなくなった。それから一週間後、この国の一番端にある村が地図から消えた。

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