創世と再生
次の章でこの話は終わりです。えらくかかってすみません。
話をジークムント側に戻す。
ジークムントとテレサは酒を酌み交わしていた。ジークムントは壁にもたれ、テレサは椅子に座りながら、ホテルの一室で今回のフィッシュとの戦いから近況の報告などをした後に話は二人の出会いの話になっていった。
ジークムントとテレサが出会ったのはジークムントがMSPを襲撃した時から、しばらくしてからである。ジークムントは幸せとは何かを探し出すために多くの魔導師の元を訪れていた。そして、ある紛争地で医者をしているテレサにジークムントは会いに行くことにしたわけだ。
多くの家の建ち並ぶ中で爆音が一日に数回は聞こえてくる、そんな町を何台かの数少ない車が通っていて、道の隅を見ると死体かどうかも分からない人や動物が何の対処もされずに放置されている、そしてその町の隅にテレサの働く病院は存在している。最初にジークムントがその病院を見た時、病院と言うよりも、それはテントのように見えた。いくつも点在するテントに群がるように大量の人間が集まっていた。少し、テントの中に入っていくと簡易なベッドに何人も人が寝かされている。それは先進国の病院を知っているものにとっては衝撃であり、ジークムントも少なからずそう思っていた。
しばらくして、休憩中のテレサにジークムントは会う事が出来た。当然であるがテレサは化粧などしていない。魔導師であるので疲労感も魔力が無効化する、周りの疲弊しきった医師達と比べると一層テレサは異質に見える。患者の中にはテレサを女神と呼ぶものも多くいたがまだ、感覚的ではあるがジークムントはそれを理解した。
「あなたがジークムントさんですね、話は伺っています。どうです、ここは」
「・・いい所ではないな」
「別に気を使わないでも大丈夫ですよ。ここは地獄のような所でしょう。紛争を中心に、感染症、盗みや強盗、想像されるような人にとっての理不尽を詰め込んだような環境です」
「いや、流石に」
「それでも、彼らは前に進もうとしている」
「ふふ、あんたも何かを持っているな」
「意味深ですね」
「本題を話そう。テレサ、あんたはなんでここで医者をしている。人を救う事が目的であれば、あんたほどの能力の持ち主なら、研究をしていた方が多くの人間を救えるだろう」
「あなたは世界が好きですか」
「は、どういう事だ」
「私は好きなんです、世界が。だからこそ、世界の姿をきちんと見ていたいのです。それが私の理由です」
「ふーん、もうひとつ疑問がある。魔導師であるあんたなら、こんな紛争力づくで終わらせ・・」
「終わらせられると本気で思ってますか」
「ふ、ふふ。どういう事だ」
「私は戦争とはコミュニケーションの一つであると考えています。国と国が互いに自分たちの許容できるラインを見極めるために必要なものであると」
「ほう、つまりは戦争はあるべきだと」
「あるべきであると言うよりは必然であると思っているだけです。戦争はある種の愚かさによって生じることは確かです。しかし、戦争と言わなくても互いにそういった事を繰り返していくうちに国に他国との関わり方、他文化、他宗教への関わり方のノウハウが多くの国民に集まっていきます」
「そんなことになんの意味がある」
「私は彼らと多種多様な議論を、笑いを、愛を、共に肩を並べて作っていきたいんです」
「んっふふ。流石だ、やはりすごいな魔導師は」
そう言いながら、ジークムントは辺りに目をやる。こうしている間にも多くの患者が運び込まれていて、それに多くの医者と看護士が対応している。どう考えてもきつい環境、平穏に生きていればこんな世界に触れる必要などない者たちの多くがここで医者や看護士をやっている。恐らくは何らかの目標、欲求、もしかしたらなんとなくなのかもしれない。しかし、恐らく誰一人としてテレサと同じ考えのものはいない。
人を救うと言う行為は尊い。
誰もが知っているようなことだがそれを行う事は簡単ではない。多くの人間にとって自分の人生こそが全てであり、他人の人生などは関係ないものである。他人のために犠牲になれるのは自分を持っていない者か。人を救う事に人生の意味を見出した者だけである。
彼女はそのどちらでもない。
彼女が魔導師だから、そうなった事は事実だろう。彼女は投資をしているに過ぎない。残りの人生が長いからこそ、国の行く末を観察できるからだ。
しかし、しかしだ。魔導師であったからと言ってテレサになれる人間は何人いるだろうか。
「ここで私が戦争を終わらせるようなことになれば、多くのこの国の人間は何も学ばないだろう。そこには怒りや、貧しさだけが残る。世界と関わっていく、世界と戦っていく力が何も持たないままに形だけの平和が残る」
彼女は言ったのだ、彼らも同じ人間であると、彼らは救われるだけの存在ではないと、共に生き、笑い、語りあえる存在であると、それをジークムントは理解した。
そして、彼らの言う女神がジークムントの前に現れたのだ。
そんな思い出話をしながら、ジークムントとテレサは酒を酌み返し、朝方に別れた。ジークムントがテレサの泊っていたホテルを出るとその様子を一人の売人が見ていた。
その日の夜、テレサは何人かの生徒達を連れて一台の車に乗って街の中を移動していた。
「この街はどうですか、テレサ先生」
「いい所ですね」
「いやいや、先生。この街、何もないんですよ。もっと、刺激的な街がいいなあ」
生徒達とテレサが何気ない会話をしていると、突然。
一人の男が車の前に現れた。
車は突然現れた男を避けようとしたが、あまりに突然のことで避けきれず、そのまま男を跳ね飛ばしたように生徒達は思った。しかし、テレサはそうは思わなかった。
跳ね飛ばし、車のボンネットを転がり、屋根を転がり、男は車が通り過ぎた道に回転しながら落ちた。
その様子をしっかりとテレサは見守った。そして、轢かれた男がこちらを見た瞬間、テレサは確信した。
「そのまま、全速力で逃げなさい」
「えっ、えっ」
ブレーキをかけて、車は止まっていた。突然の出来事とは言え、人を轢いてしまったのだ。当然の対応のはずだった。相手があの男でなかったなら。
何かが起きた。そう、生徒達が認識する暇も無く、自分が背中を許していた空間が彼らを貫いた。その衝撃になんの抗いも無く、弾き飛ばされる彼らにその衝撃を受け止めようとエアバックが作動し、シートベルトが作動するが彼らの視界を真っ白な何かが覆い尽くした。彼らは瞬間的にそれを理解することもなく死んだ。
テレサがいなければ。
彼らが意識を取り戻した時、そこには屈強な大男を従え車に体当たりをした男、フィッシュから彼らを守ろうと立ちはだかるテレサの姿であった。
すぐに生徒達の頭に複数の疑問が生まれる。『なぜ、私は生きている』『なんだ、この人外の様な大男は』
『なんで、私たちは立ったまま意識を取り戻したんだ』
「逃げなさい、急いで」
色々な疑問が頭を駆けながら、その言葉を受け取って生徒達は一目散に逃げ出した。
爆発した車を背景にゆっくりとフィッシュがテレサに向かって歩いてくる。
「テレサあああああああああああああああ」
「まさか、私が狙われるとはな。それほど邪魔されたのが嫌だったのか」
「それは違うなあああ。俺にとってお前は何よりも殺すべき相手なんだよオおおおお」
「生憎、職業柄、人には感謝されたことしか無くてな。なんで憎まれているのか、分からないのだが教えてもらえないか、その理由を」
「人生は短く、太くあるべきだあああああ。そういう人生を歩む人間の方が面白いだろおお。だがあ、お前は逆を信条としているうう。ジークムントのように利益で動く奴は対処できるがお前はそうじゃないだろおお」
「よく分かっているな。私は人生は長く、太くあるべきだと考える」
「気に入らねえええええな。長く、太くだああ。誰がそんな人生を歩める」
フィッシュはその腕をテレサの考えを振り払うように振り回した。
「勘違いをしている。何かを成すにはリスクを背負うべきだの、何かを捨てるべきだの、聞いていると、さも、何かを成すことは人生を投げうつ何かのように聞こえ、それを行っている者は賛美されるべきだと」
「とおおおおオオ然だろお。彼らがあああ世界を作ってんだあ」
「成功するのにリスクを負うのは唯の愚か者だ。更に言えば成功するのに何かを捨てることはそれ以上に愚かだ」
「あああああああああん。・・・・そうか。お前には才能があるからなああ。だから、そんな事が言えるんだろおおお」
「分からないか」
「分からないなああああ。爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
弾ける音と共に爆風がテレサを襲う。ヘラクレスが爆風からテレサを守るとともに爆風発生とともに姿を消したフィッシュを探す。
「人生においてリスクを負うと言う行為は例えるなら薬を使用する事に似ているんだ。多くの情報溢れる現代において薬を必要とするほどの状態に陥るのは老化や先天性の病が無ければ、本来は必要のないものだ。健康に気をつければいいだけだからだ。少なくとも現在は薬の効能が健康的な日常以上に人を健康にすると言う話は聞いたことが無い」
「長いんだよオオ」
フィッシュはいつの間にか強化された足でテレサを蹴ろうとしたがそれをヘラクレスが止め、足をそのまま掴んで近くの建物に投げ込んだ。
「いってえええええええなああああああああ」
すぐにフィッシュは立ち上がり、建物から顔を出した。
「すまんな。話が長くなるのは癖なんだよ。簡潔に言うとする。つまりはリスクを冒す行為は反則みたいなものなんだ」
「ズルをしているとおお、そう言いたいのかあああ」
「うーん、少し違うな。君はどうしてエリートと言われる人の多くが成功しやすいのはなぜか分かるか」
「あああ、突然何言ってんだあ。まあいいやああ、死ねえええ。生態的変貌」
フィッシュの体がまるで揺れ動く陰のように変形していく、そしてゆっくりとフィッシュはフィッシュの形を取り戻した。
「奇妙な術だな」
「死ねえええええ」
その言葉をテレサが聞く前にフィッシュはヘラクレスに衝突した。フィッシュはその勢いのまま近くの建物にヘラクレスごとぶつかった。
「エリートが優れているのは彼らがしているのはその時代でその国が認める最も成功する可能性の高い方法を取っているからだ。それはその能力を全く持っていない人間からすればとんでもない能力のように見えるものだ。まるでストイックに自分を追い込んで、いやそれこそ太く短いような生き方をしたようにな」
「そうだろおおおおお。燃えるような生、燃え尽きるような死。それがあってこその人生だろおお」
そういって、フィッシュはヘラクレスの体を食い破った。きちんと描写するならばフィッシュの体が触手のようにヘラクレスの目や鼻や耳の穴から内部に入っていき食い破った。
「違うんだよ、フィッシュ。もっとしっかりと見ろ、世界を。エリートと言う人間がしている努力は本当に小さなものを繰り返しているだけなんだ」
「あああああああああああああああああああああああああああああ、何が言いてええええええええ」
フィッシュの体は伸びて行き、テレサに向かって行く。
「再構成」
テレサの体が空気の中に溶けて行くように、消えていき、フィッシュの攻撃は的を失った。
「何か、君は勘違いしているようだ。人生は一回の成功で終わりではないんだ。人は成功し続けなければならない」
フィッシュの体に衝撃が走る、精神にも、肉体にも。テレサの体は近くのビルの屋上で再構成された。まるで、その空間にテレサという情報が上書きでもされたかのようにテレサは現れ、そしてテレサは話し始める。
「幸せを手に入れるために成功は一度では足りない。何度も、何度も成功しなければならない」
「ああ、何言ってんだあああ」
フィッシュの触手がテレサに向かって行く。
「再構成」
テレサの前にヘラクレスが現れる。ヘラクレスはフィッシュの触手を掴むと再び近くのビルに向かって投げつける。
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
突然の、爆発がフィッシュを包み込む。
「成功はし続けなければならない。そのために人は努力をし続けなければならない」
爆発で起きた煙の中、フィッシュはその勢いのままビルを突き破り、路地まで吹き飛ばされる。それをヘラクレスが追いかける。飛ばされた勢いに追い付くほどに早いヘラクレスはそのまま、追撃を行う。テレサもそれを見守ると。
そこにいたのは先ほど、テレサがフィッシュから救った生徒の一人だった。
「たすけてえええええ」
生徒は駆け寄るヘラクレスを見て、怯えたように悲鳴を上げる。その様子をテレサは見ている。
「たすけてええええええ」
しかし、テレサはヘラクレスの攻撃を止めようとしない。
そのまま、ヘラクレスは生徒を何の躊躇いもなく本気で殴りきった。
「ぞんがあああああああああああ」
生徒は路地の壁にぶつかり、そのまま壁を破り、その建物の中を垂直に飛び、次の壁もぶち破った。更に次の壁を破ろうとしたところで。
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
生徒だったそれはフィッシュになり、再び爆炎に巻き込まれた。
「生憎だが、生徒のデータは取ってあるんだよ」
すぐにヘラクレスがフィッシュを追いかける。爆炎の中、何度か壁にぶつかったであろうフィッシュを見つけ殴ろうとした瞬間。
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
再び、辺りに爆音が響き渡る。ヘラクレスは爆炎に呑まれながら、辺りをメチャクチャに殴り続ける。
「そこまでしなければ手に入らない幸せなどはいらねええええ。必要なのは一瞬、刹那の幸せだろお。俺は幸せになりてええんだよ。そのために・・・・死ね。爆発的再生」
テレサはヘラクレスがやられたことを感じ取った。それと同時に大量の何かが辺りにいる事を察知した。
「人を作り上げるのは一瞬の快楽、渇望、成功、失望、挫折、そうだろおああああああ、テレサあああああああ」
大量の人の形をした何かが辺りから湧いてくるように現れる。それらはフィッシュの生き写しのような姿をしていて、形をまるで影のように変えて体を触手のように伸ばしてテレサを襲う。
「果たしてそうか。人を作り上げるのは自信、誇り、継続、希望、成長だよ。再構成」
テレサの周りに壁が突然現れ、触手の攻撃を弾き飛ばした。
「ああ、くそ、死ね、死ね」
そう言って、フィッシュは壁に中指を立てると大量の分身たちは壁に張り付いていく。
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
大量の分身たちの内、壁に張り付いた者達が爆発した。その威力で壁は壊れ、残った分身たちがまるで津波のようにテレサに触手を伸ばしていく。
「人が幸せになるためには連続的な成功は必要になってくる、それは最低条件として継続的な努力を必要とする。だからこそ、だからこそ、苦痛を伴う努力をしてはいけない。無理な努力をしてはいけない」
「じゃあ何が必要だあ、テレサ。どちらにせよ、お前は死ぬがな」
「再構成」
テレサの立っていた場所からミサイルが撃ちあがるかのような速さでビルが生えてきた。それはそのままテレサをビルの屋上に乗せたままフィッシュの触手をかき消したが、そのビルに大量のフィッシュがとんでもない速度で登っていく。
「継続的な努力に必要なのは楽しむことだ。必要に迫られる努力は苦痛だ。人生は長いんだよ、一度の努力で手に入るのは一つだ。居場所、人間関係、お金、自己実現、それらを一つ一つ努力で手に入れ続ける事、守り続ける事、そうして幸せは作られる」
テレサは屋上から、登ってくるフィッシュに語りかける。
「はあ、そんなの無理に決まってんだろオおおおおおおおおがああああ、テレサあああ」
大量のフィッシュが声を上げながら、ビルを登ってくる。
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
ビルの下で大量のフィッシュが爆発を作り出す。その爆発はすぐにビルの最下層を吹き飛ばし、ビルは倒壊を始めた。
「爆発的再生」
再び、フィッシュは数を増やす。増やす、増やす、増やす、増やす、増やす、増やす、増やす、増やす、増やす、増やす、増やす、増やす、増やす、増やす、増やす、増やす。辺り一面はフィッシュで埋め尽くされる。
「成功し続けることが無理ならば守り続ければいい。手に入れた物を決して手放さないように、すると気がつく、足りない事にな。それでは幸せになれない事にそうしたら、また戦えばいい」
「お前は言っているんだあ、そうだろお、成功者は幸せになどなれないとそう言っているんだろお。世界は彼らの犠牲の上に成り立っているんだろお」
「断じて違う。彼らは戦っているではないか、自分が幸せになるために。幸せは手に入れようとしなければ絶対に手に入れられないものだ。それを手に入れようとする者が幸せから遠い場所にいるはずがない」
ビルの倒壊と同時に落ちてくるテレサをしっかりと眼前に置きながら、タイミングを合わせフィッシュは言い放つ。
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
地面を埋め尽くす大量のフィッシュ達が爆炎に飲まれ、その爆炎によって倒壊したビルの残骸が巻き戻しでもされているかのように再び空に向かって弾けて行く、その爆炎の中、テレサはしっかりとフィッシュ達を確認し、唱える。
「再構成」
今度は空中にフィッシュ達の爆炎とテレサとの間に大量の壁が現れた。爆炎は何枚もの壁を粉砕していったがテレサまでは届かず、テレサは悠然と地面に着地した。
「爆発的再生」
辺りにある肉片から、フィッシュが生まれてきた。
爆発によって辺りに飛び散ったフィッシュの肉片、一つ一つが再びフィッシュになる光景をテレサは目撃した。この光景を元にテレサは思考を始めた。そして、気がつく。フィッシュの爆撃は全て自分を爆発させていた事、フィッシュはそうして辺りに散らばった自分の肉片を自分の分身として再生させていた事、フィッシュが爆発後に再生していたことからフィッシュの爆発は爆発後に自分を再生させていたか、爆発は副作用で本来は再生を行っていただけではないかと。
それらは正しい。フィッシュの戦略は再生である。爆発に見えたそれは人智を凌駕した細胞の創造により、限られた空間に大量の物質が出現することで摩擦熱や燃焼、爆発を作りだした。爆発は限られた空間に瞬間的にその空間に収まりきれないような体積が現れる現象でまさにフィッシュの細胞の創造はそれである。
これはまさしく『創生』と『再生』の戦いである。
これらの理解の後、現状が非常にまずいことをテレサは理解する。このまま、フィッシュが分身を隠れ蓑に増殖を続ければ、この戦いは負ける。更に言えばフィッシュ本人を見つけても、あの再生呪文を使われれば倒すことは簡単ではない。
しかし、テレサにはそれが不可能ではない。
「テレサああああああああああ。お前はここで死ぬ。やはり、お前の考えが俺にとって最も有害だったようだ。お前の言うような理想論で幸せになれるものなんてなああああ、少数なんだよオオおおおお。そして、そんな理想を抱いて・・・・死ね」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的再生」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的再生」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的再生」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的再生」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的再生」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的再生」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的再生」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的再生」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的再生」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的再生」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的再生」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的再生」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
「爆発的再生」
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」
辺りに爆発が何度も生じ、大量のフィッシュが生まれる。その様子をじっくりと観察しながら、テレサはほほ笑んだ。
「理想か。その通りだ。確かに誰にもは出来ない、成功し続けることは。だが、だがな。幸せになれないのはな・・」
「うるせええええええええええええ。ここで貴様は死ぬんだよオおおおおおお」
「幸せになれないのは、苦悩、境遇、失敗、挫折、それらを経験し心を折られてしまった人間だ。幸せになるために必要なのは楽しむ事と自分を信じることだけなんだよ」
テレサはそう言うとまるで槍を空間から受け取るように片手を突きだし、何かを掴んだ、英知ある戦いを、進歩ある戦いを、未来を守る戦いを、そして、愛すべき平穏を、文化ある平穏を愛する女神となるために槍を手にするため。
「守護女神」
テレサの体にギリシャの鎧と槍が装備された。
テレサとフィッシュの戦いから、多くの人間が離れて行く。自分たちの町を誰かに壊されていると言う怒りよりも恐怖が彼らを逃がしていた。そこでなぜか、彼らの体にギリシャの鎧と盾と剣が装備されていた。そして、湧きあがってくる。この町を守りたいと思う気持ち。気がつくと彼らはテレサとジークムントの前にいた。
町を守るために彼らは構え、テレサと共にフィッシュに向かって行く。
そこにはなぜか、恐怖はない。先陣をきるテレサの影響か。いや、そうではない。フィッシュの分身に勝てる力が手に入った事が最大の理由であることは間違いではない。
しかし、何よりもむかついたのだ、いらついたのだ、自分の町を汚す人間に。
彼らの剣は跡かたも無くフィッシュの分身を消し飛ばした。
彼らの盾はフィッシュのどんな爆発からも彼らを守った。
彼らの鎧は彼らに町を救う勇気を与えた。
そして、テレサはフィッシュを倒しきる雄姿を以って、それに答えた。
「再構成」_解析履歴(ストーリア・ナレ―ジ)によって記録された物質、生物を完全に同じものを出現させる。その物質、生物が魔法使用者の半径1キロメートル内にいる場合はその物質、生物を魔力に還元してから出現させる。
「解析履歴(ストーリア・ナレ―ジ)」_魔法使用者の半径100メートル内の物質、生物を記録する。
「爆発的分裂(エクスオ―シブ・セル・ディビジョン)」_使用者の認識できる体の一部の細胞の増殖を爆発的に加速させる。
「生態的変貌」_魔法使用者の体を自由な形に変形できる。また、魔力量によっては自分の体積の範囲を遥かに超えて体を伸ばすことなどが出来る。
「爆発的再生」_魔法使用者の体を元の状態に戻す。魔力量によってはある特定の体積以上ある肉片などから自分の分身を作り出す。
「守護女神」_守護女神を召喚する。守護女神が居る間、半径10キロメートル内の敵対者以外の全ての生命の身体能力を強化する。そして、負の感情を打ち消す。