第一話喜平長屋の三姉妹
お江戸の町の片隅にある長屋、喜平長屋には三匹の猫姉妹が暮らしていました。
一番上はアオ、真ん中がことは、末っ子がヒメ。親はばくちでこさえた借金で父親は居なくなり、母親は遊郭に売り飛ばされてしまい三匹でつましく暮らしていました。
そこへ、朗報が飛び込んで来ました。
「おーい、喜平さんの口利きで寺子屋行けるってさ。よかったなことは」
そう知らせてくれたのは、長屋で一番仲のいい隣の寺子屋に通っている信きっぁんでした。
「ホントー?嬉しいなぁ、いつも周りから寺子屋に行けばいいのにもったえねぇって言われてたんでぇ」
嬉しさに顔がにやけることは。
「よかったね、ことちゃん!」
我が事のように一緒に喜んでくれたのは、姉のアオ。
「ねえねえ、寺子屋って何する所?」
と馬鹿な質問をしてきたのは末っ子のヒメ。
明日から新しい日々の始まりです。
「2×2=?」
「4です。先生」
「はいことはちゃん、よくできました」
午前中いっぱいが寺子屋の時間。
新しいことだらけでウキウキしながら笑顔で授業を受けることは。
「それでは算額が全問解けた人は名前を書いて先生に出してから帰りましょう」
そう言って紙を配り出す松五郎先生。
覚えたての掛け算を使いながらスラスラ問題を解いていくことは。
「先生出来ました。」
一番に提出したのはことはだった。
「あいつスゲー!ここに通いだしてまだ2~3日だぜ」
寺子屋に通う他の皆にびっくりされ、ヒソヒソと話される注目の的になるまでにそうは時間はかからなかった。
「ただいまー」
「あっ、お帰りことちゃん。お昼ごはん今出来るからね」
台所に立つのはアオ。
アオは、家の家事一切をゆっくりとこなすのが精一杯で寺子屋には通っていない。
「あれ、ヒメは?」
「友達とお出かけに行ったよ。なんでも今流行りの南蛮の着物を取り扱っているお店に行くんだってさ」
ご飯をつぎながら説明してくれたアオ。
「まーた遊び歩いてるな、あいつ」
蓄えがあまりないというのにつけでいろいろ買ってきてしまうどうしようもないヒメ。
「おっ、今日の飯は煮干しが二匹もついてらぁ」
「今日は煮干しがいつもより安かったから多めに買えたんだー」
そういって今度は自分の分のご飯をつぐアオ。
「しかもいい具合に焼けてるなぁ。よし昼飯食ったらヒメを探しに行こう。あいつ今日こそは何も買わせずに連れ帰ってやる」
「さー、寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!今流行りの着物のお披露目会だよ」
何かをやっている会場前で呼び込みをする若い男が一人。
「あら、何かなぁ」
その声に気付いたのは買い物中のヒメとその友達おすみ。
「行ってみましょう」
そう提案したのはおすみちゃんの方。
「おっと、君たち可愛いね。どうだい、着物のお披露目会に出てみる気はないかい?」
なにこの人、出る人も集めてるの?と二匹は顔を見合わせた。
「今可愛子ちゃんが足りなくてお披露目会が中止になりそうなんだ。良かったら今日にでも出てみて今後も出るか決めてくれて構わないよ」
どうしようかなぁ・・・
悩み顔の二匹。
「今日出てくれたら特別にお給金もはずむよ」
「お給金!やるやるやる、あたしお披露目会出るからおすみちゃんも出よ。ほら早くー」
「う、うん」
こうしてお披露目会に引き入れられたヒメとおすみだった。
「ヒメのやつどこに行ったんだ、南蛮の着物屋には居なかったしなぁ」
ヒメを探してことはは町を回っていた。
「さー、寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!今流行りの着物のお披露目会だよ」
その時、ことはの耳に客引きの男の声が聞こえてきた。
ん?もしかして・・・
「あの、すみませんが。このお披露目会南蛮の着物も出てきやすか?」
「出てくるよー。南蛮のすかあととかいうやつなんかとか他にも・・・」
そうと聞いてことははピンときた。
この会場にヒメは客としている。
そう思ったことはは、客引きの制止を振り切り中へと入りこんだのだった。




