螺-親-硯
受け止める石の穿つ"おと"がキリキリと金切鋏のようにいつている。
秋雨。今は秋雨である。
彼は恰幅が特長である。Shape-yである。
喩えるならばスイルエツトであろうか。君もそう思つて居た筈だ。
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彼の家は溜池の傍にあつて、繁く紅葉の名所とも湛え、某が目にも美しく映つたと云ふ。
いをの焼くる迄まちゐて、勧学す。それこそ彼が道楽であつた。
只、彼の少し計りヘンな處はいをこそ焼けど、けして酒菜と作す事も莫く、其れ耳を喰らうのである。
之計りは、かの柔和たる登第後の師も顰め面を極め込むのであつた。
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或日、京極の辺に遊学を決めたので、書を市に求めた。
巽の刻に永楽通宝を二貫、小脇に早々と出通ってしまつたので、歸途も早々と至つて、復たあはせて市に求めしいをを焼くのであつた。(終)