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事後処理を終えてクーリロワが家路に向かう頃には、暗かった空がオフィスビルの隙間、濃い青に変わり始めていた。
空が朝焼けを迎える準備をしているのだと父から教わったことを覚えている。あの頃は週末の度、朝焼けを見るためだけに早起きをして、父と二人、手を繋いで散歩したものだ。そうだった、と思い出す。幼い頃は写真家になりたかったのだ。ただ純粋に、綺麗な風景を撮りたかった。人が息絶えたような、朝の匂いがする、静謐な世界を切り取りたかった。それが環境問題、社会問題と徐々に移り変わっていき、ジャーナリストを志すようになった。
歩きながら見上げると、水色の鳥たちが、中空に貼り付けた霜のように、きれいな編隊を組んで飛んでいた。
汚染地帯の実体を探ると称して、さまざまな場所に行った。さまざまな不条理を見た。だけど最初の気持ちはずっと同じだった。いつもこんな空を思い描いていた。
足が止まる。
くしゃりと顔が歪み、彼女はビルによりかかって顔を押さえた。
しばらく、彼女は動かなかった。




